もっと詳しく

<p>モードなバランスを作る、スタイリスト飯島朋子さんの7つの偏愛アイテム | 【GINZA】東京発信の最新ファッション&カルチャー情報 | FASHION</p><p>【モードなバランスを作る、スタイリスト飯島朋子さんの7つの偏愛アイテム】手首、足首、そして首。これを意識すると、丈やボリュームがおのずと決まってくるんです。</p><p>ファッションにまみれることで、「おしゃれはバランス」であることを学び取ってきた飯島さん。その境地に到達するまでの道の</p><p>りを、インタビュー&偏愛私物コレクションから解き明かします。 interview with TOMOKO IIJIMA 「以前イージー (飯島さんの愛称)が言ってた〝おしゃれはバランス〟っていう話を特集にしたくて。一度打ち合わせしてもらえないかしら?」そう、これは編集長の頭の片隅に残っていた、飯島さんの何気ない一言から生まれた企画なのである。 そのエピソードからもわかるように、編集者はもとより、クリエイターたちからの信頼も絶大な飯島さん。『ギンザ』をはじめ、今やあらゆるモード誌から引っ張りだこの人気者だが、キャリアをスタートさせたばかりの頃はあまり仕事もなく、悩み、試行錯誤を繰り返す日々だったという。 「服の成り立ちが理解できていない、とよく先輩に怒られました。たとえばトラッドとプレッピーの違いは何なのか、言葉で説明できなくて絵に描いて伝えたことも。今は絵にしてしまうと、わたし自身がそのイメージから抜け出せなくなるので、描かなくなりましたが」 とにかくたくさん、昔のものから最新のものまで、モード写真やそれらにまつわる資料をむさぼるように見ることで、歴史や流れを理解(いまも映画や海外ドラマをたくさん観ていて、クリエーションの引き出しを増やし続けている)。やがて少しずつ、同じアイテムでも時代によってバランスが変わっていること、それによってスタイリングのバランスも変わることがわかってきた。仕事の現場においても、キャリアを重ね、いろんな服を見る機会を多く得られるようになって〝心地よく決まるバランス〟が見えてきたのだという。 キャラクターに寄り添って 若い頃は言葉で説明できなかった、と話してくれたが、飯島さんはとてもロジカルなスタイリストである。20代の頃にたくさんやったトラッドが叩き込まれているというから、ルールを重んじる飯島さんの感覚が、そういう印象をもたらしているのかもしれない。 「確かに感覚派ではないかもしれません。実験しながらスタイリングを組んでいくのが好きだし、自分の好きなものや世界観を打ち出すのではなく、モデルのキャラクターを分析して、客観的な視点を常に持つようにしています。雑誌の仕事はまずテーマがあって、それを表現するために、服からではなくどういう絵にするか、というところから逆算してスタイリングを考えますね」 P.60-65(GINZA5月号)は、7人のまったく異なるキャラクターから着想を得て作り上げたスタイリング。それぞれのモデルが持つムード、あとは身体のバランスや顔の造作、髪や肌の色に似合うバランスを導き出して完成させている。その詳細は各ページのキャプションに任せるとして、〝バランス〟に関する飯島さんなりの見解は、他にもたくさんある。 「脚が長い人は、脚を隠した方がバランスがよくなります。ジェーン・バーキンはフルレングスのボトムに首元を開けるスタイリングで、自分自身だけでなく、隣にいる小柄なゲンズブールとのバランスも考えていたような気がしますね。頭のハチが張っている人はボトムは重めにするのがいいし、胸が大きい人は腕を出して抜け感を作った方がいい。とか、いろいろあるけれど、自分にとって欠点だと思うところもマイナスと捉えずに、もともと持っているもの、どうにもならないところもチャームとして楽しんだ方が、人間としてもバランスがとれるんじゃないでしょうか」 着回しができない理由とは 最後に、自身のおしゃれバランスについて聞いてみたら、まず出てきたのは〝首〟についての話。 「手首、足首、そして首。これを意識すると、丈やボリュームがおのずと決まってくるんです。チョーカーなのかネックレスなのか、首元はなしにして手首は重くするのか。首回りがゆるいと間延びするので、手首、足首で調整しますね」 全身のバランスは、ボトムはパンツのみで、基本的にトップは大きめ、シューズは重量感のあるものを持ってくる。朝、着るものを決める時はまず、その日の予定に合わせて靴を決める。それに合わせてパンツが、そしてトップが決まってくる、という流れなのだそう。 「わたしの中で、それぞれのアイテムについて、着たときのベストバランスがあるので着回しはできないんです。だから、シンプルに生きたいのに洋服がこんなにたくさんあって(笑)。だけど着回ししないから、毎朝コーディネートで悩むことはないですね」 かくして出来上がった(というか、いまも増殖中)偏愛ワードローブはご覧の通り。偏ってるからこそ潔い、そのワードローブからは「かっこいい女性でありたい、ということがスタイリングの根底にあります」というスタイリスト飯島朋子の哲学も透けて見えるようだ。 1. BLACK SHOES ここに並べた飯島さんの私物は、持っている靴の3分の1くらいというのだから、スタイリストという職業の性(というより飯島さんの性?)を垣間見たような気持ちに。「黒い靴に目がなくてつい…。しかも、足の形に合わなくて結局はいていないものもあります」。ボリューム感のある靴で、足元は重くするのがイージー流。 2. DRESS SHIRTS 丈は長く、トップにボリュームを 「白いシャツだけでクリアケース3箱分くらいあって(笑)、今回自分のワードローブを見直してあらためて、本当に自分はシャツが好きなんだなと思いました」。そのコレクションの内訳も偏っていて、ジル サンダー、ロエベ、メゾン マルジェラ、ドリス ヴァン ノッテンなどメゾン系のシャツが多く、色は白かブルー系、チェック柄はなくてストライプのみ。最近はスモックタイプのものにはまっているという。「スモックって、着る人やスタイリングによってほっこりしてしまうアイテムですが、わたしのキャラクターだと程よくさっぱり着られる気がして」。トップにボリュームをもたせるバランスで着たいから、丈の短いシャツは一枚もない。 2. DRESS SHIRTS 丈は長く、トップにボリュームを 「白いシャツだけでクリアケース3箱分くらいあって(笑)、今回自分のワードローブを見直してあらためて、本当に自分はシャツが好きなんだなと思いました」。そのコレクションの内訳も偏っていて、ジル サンダー、ロエベ、メゾン マルジェラ、ドリス ヴァン ノッテンなどメゾン系のシャツが多く、色は白かブルー系、チェック柄はなくてストライプのみ。最近はスモックタイプのものにはまっているという。「スモックって、着る人やスタイリングによってほっこりしてしまうアイテムですが、わたしのキャラクターだと程よくさっぱり着られる気がして」。トップにボリュームをもたせるバランスで着たいから、丈の短いシャツは一枚もない。 2. DRESS SHIRTS 丈は長く、トップにボリュームを 「白いシャツだけでクリアケース3箱分くらいあって(笑)、今回自分のワードローブを見直してあらためて、本当に自分はシャツが好きなんだなと思いました」。そのコレクションの内訳も偏っていて、ジル サンダー、ロエベ、メゾン マルジェラ、ドリス ヴァン ノッテンなどメゾン系のシャツが多く、色は白かブルー系、チェック柄はなくてストライプのみ。最近はスモックタイプのものにはまっているという。「スモックって、着る人やスタイリングによってほっこりしてしまうアイテムですが、わたしのキャラクターだと程よくさっぱり着られる気がして」。トップにボリュームをもたせるバランスで着たいから、丈の短いシャツは一枚もない。 3. TRENCH COAT Pコート、ダッフル、チェスターフィールドと、コートはいろんな種類のものを一通り持っていて、中でもトレンチコートは「中にどんなものを着てもしっくりくる、魔法のアイテム」というほど大好きな存在。だけど、肩が張って見えるのが苦手という理由で、エポーレットが好きになれないというジレンマと闘った結果、取ってしまうという暴挙に。「いやいや、自分なりに改造するのも、自分らしいバランスを作るひとつの方法だと思うんですよね」 4. BOLD GLASSES 顔の造作はメガネ選びの軸となるところ。「西洋人の顔はくっきりしていて、とりわけ目は大きくて丸いですよね。アジア系の顔は凹凸が少なくて、切れ長の目が特徴的。だから顔の中に黒でくっきりラインが入らない方がいいと思っていて。わたしは先日台湾に行ったとき、現地の人に『とても日本人らしい顔だ』と言われたくらい(笑)なので、柔らかい茶系やクリアな色を選ぶようにしています」。行きつけのメガネ屋さんは〈ブリンク〉。 5. SCARF & BANDANA 年齢を重ねて、首回りの見え方が気になってきたところ、スカーフやバンダナがとても役に立つことに気づいた飯島さん。最近はとりわけエルメスのバンダナ柄のスカーフを愛用中とのことで「ニットやカットソーの襟元に45cmのをくるっと巻くだけで、首が隠れるだけじゃなく、なんとなくモダンな雰囲気になる気がするんです」。ぱりっとした素材感は苦手だから、新品のものはシルクであってもガンガン洗濯機で洗って、こなれた風合いを出すようにしている。 6. MODERN ACCESSORIES 貴石のジュエリー、華奢なタイプのものはひとつもないこの潔さ。“首”を重要視するというセオリーを持つためか、ネックレスやブレスレットが8割を占め、ピアスはつけないし、リングもほとんど持っていない。エルメス、ティファニー、セリーヌなどの大振りでインパクトのあるモダンなデザインがお気に入りだ。「特に夏は洋服がシンプルになるし、そろそろTシャツを1枚で着るのはキビシいお年頃なので、ネックレスやブレスレットをがつんと加えます」 7. COTTON SOCKS 素材はコットンじゃないとだめ。持っているものの8割が白か生成りで、メランジやライン入りのスポーツソックスも。素材感は肉厚のものが好みだとか。「以前は〈ファルケ〉の靴下が好きだったのですが、日本で手に入らなくなってしまって。代わりになるものをネットで探しまくって、この〈ラッキーソックス〉(グレー、ブルーのメランジのもの)を見つけました。いまはこれをヘビロテしています」 飯島朋子 神奈川県生まれ。今年でスタイリスト生活20周年を迎える。雑誌『GINZA』『SPUR』『FIGARO』など、数々のファッション誌や広告などで活躍。 Photo: Yasutomo Ebisu(BLACK SHOES), Tomoko Iijima Styling: Tomoko Iijima Text&Edit: Kayori Morita GINZA2020年5月号掲載</p>