もっと詳しく

 アルピーヌF1チームは、フェルナンド・アロンソの後任として育成ドライバーで今年リザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリの起用を発表したものの、ピアストリから来季契約を結んだ事実はないとすぐさま否定された。ピアストリはマクラーレンと交渉しているといううわさが持ち上がっているが、アルピーヌはピアストリとの来季契約は疑いなく有効なものであると強く主張している。

 7月28日にアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルが今季末でのF1からの引退を発表。8月1日にアストンマーティンがアロンソの来季加入を明らかにし、2日にはアロンソが所属するアルピーヌがアロンソに代わってピアストリがエステバン・オコンのチームメイトとしてF1で戦うと発表した。

 そのアルピーヌのリリースにはピアストリのコメントが掲載されていなかったため、何らかの問題があるのではないかと推測され、実際、約2時間後に、ピアストリはアルピーヌとの契約を否定するコメントを発表した。

「僕の理解では、アルピーヌF1チームは、今日の午後、僕の同意なしに、僕が彼らのチームで来年走るというプレスリリースを発表した。これは間違っている。僕はアルピーヌと2023年の契約を結んでいない。来年アルピーヌで走ることはない」

オスカー・ピアストリ(アルピーヌ リザーブドライバー)
2022年F1第9戦カナダGP オスカー・ピアストリ(アルピーヌ リザーブドライバー)

 アルピーヌでは走らないと断言していることから、ピアストリは、別のどこかのチームとの間ですでに契約がまとまっている、あるいはまとまっていると考えているということだろう。

 アルピーヌは、2023年ドライバーラインアップを確定する前には、ピアストリをウイリアムズに貸し出す可能性も検討していた。一方で、最近では、ピアストリとマクラーレンが交渉しているといううわさが持ち上がっていた。しかしマクラーレンは2023年に向けて現ドライバーのランド・ノリスとダニエル・リカルドの両方との契約を結んでいる。マクラーレンは、不振が続くリカルドとの契約を解除したがっており、ピアストリを獲得するとすれば、リカルドとの契約問題を解決する道を見つけたということなのかもしれない。

ダニエル・リカルド(マクラーレン)
ダニエル・リカルド(マクラーレン)

 しかしアルピーヌのオットマー・サフナウアー代表は、ピアストリの昇格を正式に発表する日の午前中、メディアに対して、アルピーヌとピアストリは2024年のオプションを含む2023年の契約を結んでいるとして、マクラーレンとのうわさを打ち消していた。

「彼がマクラーレンと事前の取り決めを行っているとすれば、どのような形で行っているのか、私は情報を持っていない。ピットレーンでのうわさは私も耳にしている。だが、彼(ピアストリ)が我々に対して契約上の義務を負っていることを、私は知っている。我々の方も、彼に対して契約上の義務を負っている。我々は一年を通してその義務を遂行してきた。その義務は2023年にも継続し、オプションが行使されれば2024年も継続する可能性がある」

「彼に対する我々の今年の義務は、リザーブドライバーに起用することであり、昨年型マシンに乗る機会を多数与えることだ。来年のレースに向けて、昨年のマシンで5000kmという大きなプログラムの半分以上をこなした。その他にもFP1に出場する機会、シミュレーション作業といった項目がある。我々は双方で義務を果たしている。彼の方も、我々の方もだ」

「我々は彼との間で将来の2023年に向けた法的な契約を結んでいる。オプションを行使すれば、2024年もそれが続く。彼がマクラーレンとの間に何をしているのか、私は知らない」

オスカー・ピアストリ(アルピーヌ)
2021年F1アブダビテスト オスカー・ピアストリ(アルピーヌ)

 BBCは、ピアストリのコメント発表後にアルピーヌへの取材を試みたところ、スポークスパーソンは「私たちは自分たちの声明が法的に正しいと考えています。これ以上何も言うことはありません」とコメントしたと伝えている。マクラーレンとは連絡が取れなかったという。

 長年ルノー育成プログラムのメンバーとして過ごしてきたピアストリは、オーストラリア出身で現在21歳。2019年にはフォーミュラ・ルノー・ユーロカップ、2020年にはF3、2021年にはF2と、3年連続でタイトルを獲得し、これからF1にデビューする若手ドライバーのなかで最も評価が高く、高い期待をかけられているドライバーだ。

 BBCの見解では、この問題の解決法としては、ピアストリとアルピーヌが改めて話し合いを持って来季昇格について合意すること、あるいは他チームがアルピーヌに賠償金を支払ってピアストリを獲得すること、あるいはFIA契約承認委員会の裁定を仰ぐことなどが考えられるということだ。