国内屈指の名門レーシングチームTOM’Sを運営する株式会社トムスは7月31日、オートパラダイス御殿場で開催された全日本カート選手権の会場にて、自社企画・開発の競技用EVレーシングカート『TOMʼS EVK22』のお披露目会を実施した。鈴木亜久里氏、山本左近衆議院議員、そして現役ドライバーの井出有治というF1経験者3人の豪華メンバーに加え、今季OKクラスに参戦する朝日ターボによるデモ走行が行われた。
トムスは、カーボンニュートラルの時代に向けたモータースポーツの新たな世界観を提案するプロジェクトの第1弾として、全日本カート選手権EV部門の競技用車両向けに『TOMʼS EVK22』を開発した。
独自のパワーユニットを搭載し、動力特性に応じた車両開発を進めたことで、まったく新しい領域の運動性能を実現。最高速度は120km/hと、エンジン駆動のレーシングカートと遜色なく、さらに0-100m加速は4.0秒と、EVの特性を活かした車両となった。
航続距離は最高25km。バッテリーを脱着式にすることで交換をスムーズに行い、長時間の走行を実現できる仕様となる。トムスは競技用車両として『TOMʼS EVK22』を2022年9月に正式発売するのを皮切りに、EVカートをシリーズ化。大人用のレンタルカート、子供用のジュニアカート、2人乗り用のタンデムカートの3種を年内に発売することを予定している。
『TOMʼS EVK22』のステアリングを握った鈴木亜久里氏は「EVカートが未来のさきがけだというのを実感しました。レーシングスーツを着てカートに乗るのは10年ぶりくらいだったのですが、乗ってみて完成度の高さに驚きました」と語った。
「エンジンカートと比べて、重量によりフレームやタイヤが負けてしまうのは感じましたが、システムに違和感がなく、アクセルを踏んだ瞬間のパワーはエンジンカートよりも乗りやすかったです。上手い方も初心者の方も楽しめるのではないかと思います」
「EVはエンジンと違いメンテンナンスフリーということも大きなポイントですし、音がないという特性を活かして大型スーパーでの走行もできるので、モータースポーツを普及していく可能性を感じました。この先EVはもっと進化するでしょうし、これからの時代はモータースポーツもこういう時代になるというのを感じ良い経験ができました」とEVカートへの期待を述べた。
また、全日本カート選手権の名誉大会長を務める山本議員は「今年は全日本カート選手権の名誉大会長として若い人たちのレースを応援している立場でもあり、自分自身が本格的なカートコースでカートに乗るのは1年半ぶりで久しぶりでした。今回EVカートに乗せてもらって『ずっと乗っていたい』と思えるほど面白いと感じました」
「重量による左右のロールやブレーキの仕方の違いだったり、EVカートの限界はどこまであるのかを知りたいという好奇心がくすぐられました。自動車では当たり前になっているEVがカートになるとこういう形になるということを体験でき、改めてEVカートの未来が楽しみです」
「私はモータースポーツがより多くの人に身近なものだということを知ってもらうため、将来的に市街地レースができるように国会議員として活動しており、EVカートの特性は最適だと考えています。小さい頃から自分の夢に向かって走って、育ててもらった恩を返せるように、今の立場でできる私の役割の中で今後もモータースポーツを盛り上げていきたいと思います」と語った。
現役ドライバーであり、以前からキッズカート教室を開催する井出は「今回、TOM’S製のEVカートをドライブさせて頂きすぐに思ったことはシンプルに『これでレースをしたら楽しそう!』でした」
「EVカートと聞くと、どうしても運動性能的にコントロールすることが難しいというイメージでしたが、コースインをしてアクセルを踏み込むとトルクフルで非常にスムーズな加速が印象的でした」
「コーナーを攻めていくとやはりバッテリーの“重量”を感じるけど、フレーム剛性や重量配分等を最適化することでより高いレベルで走れるようになると思います。スロットル操作に関してもトルク感があるのにコントロール性も悪くないからコーナー出口でアクセルを踏み込んで攻めるのが楽しかったです」
「EVカートであればさまざまな場所で広く普及していく可能性もより広がることでしょう。自分は以前から『キッズカート教室』を開催しているのですが、小さな子供たちが初めてカートに乗る時に“音”と“振動”で怖がられてしまい、走ってもらうことができない場合もあるのですが、EVカートであれば安心して乗ってもらえるのが嬉しいですね!」
「これなら多くの方達にモータースポーツに触れてもらえる機会が増えるので、この世界の人間としては嬉しく思います! 新しい時代が始まることを実感する良い機会に立ち会えたことに感謝です。今後のEVカートの普及に大きく期待しています」と、今後のEVカートへの期待を語った。
全日本カート選手権では、2022年シーズンよりEV部門を新設。しかし、現時点では未開催となっている。競技用EVレーシングカート『TOMʼS EVK22』の登場で、EV部門の初開催が近づいたと言えるだろう。