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 日野自動車の認証不正問題を調査していた特別調査委員会が、このほど調査報告書をまとめ、2003年の新短期排ガス規制対応モデル以降、継続的に認証試験で不正が行なわれていたことが発覚した。

 8月2日、特別調査委員会の報告書を受領した日野自動車が公表したもので、認証不正が行なわれたトラック・バスは累計86万2000台に及び、建機用エンジンでも認証不正が明らかになった。併せて現行モデルのリコール対象車、出荷停止車も追加された。

 約20年前から続いていた認証不正行為は、なぜ起きたのだろうか?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/日野自動車、「フルロード」編集部


大中型トラックは全車出荷停止

ポスト新長期規制対応の日野プロフィア

 調査報告書の前に、実際にトラックユーザーとドライバーに関わる影響からお伝えしよう。

 まず、今回の調査から、不正な認証試験が行なわれた現行モデルが、不正発覚時(3月4日)に対して増えており、中型トラック「レンジャー」の出荷停止モデルが一部から全部となった。これにより、8月2日以降の新車の受注を停止している。

 リコールの実施が予定されているのが、現行の平成28年排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)対応の12.9リッター直6「E13C」エンジンを搭載する大型トラック「プロフィア」だ。排ガス後処理装置の経年劣化により規制値オーバーの排気を出す可能性があるためで、サービス拠点への入庫が必要となる。

 トラック現行モデルでまとめると、大型の「プロフィア」と中型の「レンジャー」の全車型が出荷停止となっており、小型の「デュトロ」のみ新車販売を継続している状況である。

 すでに出荷停止は、トラックユーザーはもちろんトラック車体メーカーなど関連する業界にも影響が及んでいるところ。とはいえ現行「プロフィア」「レンジャー」の新車販売の再開は、ひとえに自動車の型式認証制度を施行する国(国交省)の判断しだいだ。日野では「プロフィア」の受注未納分を少しずつ生産再開しているが、型式認証を再取得できない限り、もちろんその出荷も不可能である。

 なお、現行モデル以前でも、認証試験の不正が行なわれたことが判明している。現在、諸元値(公表された性能値)との乖離について検証作業中だが、平成21年排出ガス規制(ポスト新長期規制)対応の「E13C」エンジンと8.9リッター直6「A09C」エンジンは、燃費性能が諸元値を下回ることが判明している(注:重量車燃費基準の超過達成車に対する優遇税制の減税分は日野が追納する)。

不正は約20年前から続いていた

記者会見に出席した特別調査委員会の島本誠委員、榊原一夫委員長、沖田美恵子委員

 さて、8月2日に行なわれた記者会見は、外部有識者で構成された特別調査委員会による認証不正問題の真因調査の結果と、それを受けた日野自動車の小木曽聡社長が、今後の対応について報告する内容だった。

 調査の結果、2003年スタートの平成15年排出ガス規制(新短期規制)対応車から、自動車の型式取得のためのディーゼルエンジンの認証試験データを不正に操作していたことが発覚、建設機械用エンジン(建機メーカー向け)でも、2011年スタートの3.5次規制対応製品から不正な認証試験が行なわれていたことが判明した。

 一連の不正行為は、日野社内の一つの部署だけで行なわれていた。他部署で開発されたエンジンなどのパワートレイン、排ガス後処理装置の性能実験を専門に行なう部署だが、認証試験についても兼務していた。他部署や経営層からすれば結果だけ判ればよいため、その業務の内実と経過は、社内でも知られざるものだったという。

 しかも認証試験は、新型車開発の終盤、発売日が迫るタイトな時間で行なわれる。にも関わらず、新開発エンジンの燃費性能または排ガス性能は目標未達、試験設備も不足しており、いっぽうで目標必達と計画スケジュールは厳守という苦境に、この部署が立たされていたといわれる。

 さらに国内外で逐次強化される排ガス規制への対応や、燃費基準の新設など、試験はより複雑・高度になり、工数(作業の手数)が増えていく。このような状況を、経営層や他部署に相談できるムードは社内になく、追いつめられていった結果、試験方法や取得データを操作して、「望まれる結果」をもたらすことが常態化した。

原因は企業風土と厳しく指摘

 発覚した不正行為は、実は認証試験だけではない。2016年に乗用車メーカーによる排ガス・燃費の認証試験で不正が発覚した際、国交省は、自動車メーカー各社に対して排ガス・燃費試験の実態報告を求め、それに対して日野は「不適切な事案はない」と回答していた。

 これは、日野が社内の業務実態を十分に把握していないまま、回答したことになり、結果的に「虚偽報告」という重大事につながった。日野は、調査報告書を国交省へ提出しているが、翌3日、国交省の立ち入り検査を受けている。

 今回の問題は、直接的にはパワートレインの試験を行なう部署での不正行為にあるが、他部署や経営層が「エンジン性能未達」という現実を知らなかったほど、部署間での連携不足や無関心があり、また実情を伝えにくい上意下達の文化、過去の成功体験に由来する「失敗の否定」、業務全体をマネジメントする視点のなさ…といった企業風土に重大な原因がある、と報告書では指摘している。

 なお、会見では、役員など経営層による不正への関与、組織性を問う質疑もあったが、調査委はこれを否定している。

 小木曽社長は、トラック・バスユーザーや仕入れ先サプライヤなどに向けて陳謝した上で、調査報告書の内容を重く受け止め、企業体質を改めていくと述べた。また、3ヵ月後をめどに、今回の調査で発覚した不正への対応を発表するとしている。

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