庭で草むしりをしていると、色々な虫に出会う。強烈な日差しが照りつけるなか、人間は1時間も経たないのにヘトヘトだが、虫たちはものともせず動き回っている。自宅は数十年経つが、虫はより住み心地の良い場所に移り住んでいるはず。虫の営みを眺めながら、ここは誰のものかとの疑問が頭をもたげた▼あらゆるステークホルダーの利益を考慮するステークホルダー資本主義が世界で広がっている。これまでの米欧の株主偏重の考え方に違和感を覚えていた多くの日本企業は胸のすく思いかと思いきや、現実はモノ言う株主が存在感を増したり、外部から厳格な企業統治を求められたり、四苦八苦しているように映る▼化学業界では最近、トップが経営の表舞台から引くケースが相次いだ。顔に刻まれた多くの皺に、数々の修羅場をくぐり抜けてきた跡を見いだせる。半世紀ものあいだ「会社を変え成長させてきた」との自負が漲る。しかし、時代は大きく変わり、会社のあり方も大きく変わらざるを得ない局面にある。新たな時代に新しい価値を提供できるか。これまでにない戦いが始まろうとしている▼会社は誰のものか。さまざまな答えがある問いだ。法律に基づく四角四面の答えでは物足りない。人間の営みであり、物と考えるから辿り着けないのかもしれない。(22・7・4)