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台湾を訪問中のペロシ米下院議長は3日、台湾の蔡英文総統と会談し「台湾と世界の民主主義を守るためのアメリカの決意は揺らぐことはない」などと述べた。国際情勢が混迷を極めるなかでの出来事をどう見るべきか。元産経新聞記者で中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏に、見解を聞いた。

ペロシ議長と会談した蔡英文総統(蔡氏ツイッターより)

中国側が軍事力行使するのか世界中が固唾を呑んだが、3日時点では異変はなかった。福島氏はこう総括する。

今回のペロシの訪台は、習近平の「戦狼外交の敗北」を意味しており、象徴的な出来事だったと言えるでしょう。訪台直前まで、中国は米国に対し「火遊びすると自分も燃えるぞ」という強烈な不満や警告を発していたのですが、結局は軍事的に妨害するという決断にまでは至らなかったわけです。

中国は近年、「戦狼外交」と呼ばれる強気で高圧的な発言を対外的に繰り返していた。

今回の件は、中国の戦狼外交の限界を知らしめたと言えます。今後、戦狼外交の脅し効果は、ますます低下していくでしょう。国際的な安全保障の枠組みにおいて、米国が台湾を重視していることが示された意義は、非常に大きい。

中国にとっては、手痛い失点となったようだ。

中国は戦狼外交路線を改め、諸外国と歩調を合わせていく「協調外交」に転換していくと良いのですが、逆にさらに北朝鮮化して瀬戸際外交に転じていく可能性もあります。戦狼外交の牽制効果を回復させるには、プーチンのように核兵器をちらつかせて脅すような瀬戸際外交の道を進まざるを得なくなっていく。

Gwengoat /iStock

中国の圧力に屈しなかったという意味で、台湾の蔡英文政権にとってもプラスに働くと見ている。

軍事衝突の可能性すら指摘されるなかで、リスクを見極めペロシを歓迎して受け入れた蔡英文政権は、国際的な評価が高まったと言えるでしょう。11月には台湾で統一地方選挙が予定されていますが、民進党には追い風になったと思います。

今後はどうなっていくのか。

英国下院議会は年内にも台湾訪問を予定しており、これに続いて西側諸国の議員団の訪台ラッシュが来るかもしれません。日本では秋に安倍元首相の国葬儀を予定していますが、仮に蔡英文総統が訪問の意志を示した場合、日本の側に受け入れる度胸があるかどうかが問われます。岸田総理に、ペロシや蔡英文のような度胸があるかどうかの問題でしょう。

今年3月、安倍元首相とオンライン会談した蔡英文総統(総統府サイト)

今後の台湾問題に、どう関わっていくべきか。

東アジアにおける日本の存在意義は決して小さくありません。日本の態度次第で、台湾の国際社会での地位承認が早まる可能性は十分あります。

電撃的なペロシ訪台は、今後の国際関係を占う歴史的意義があったようだ。