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政府の規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で座長代理だった原英史氏が、毎日新聞の記事で名誉を傷つけられたとして毎日新聞社を相手取り、1100万円の賠償を求めた控訴審の判決が4日、東京高裁であった。

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一審判決では、毎日新聞の目的が「専ら公益を図ることにあったものと認められ、名誉毀損による不法行為は成立しない」として原氏の主張を退けたが、高裁の相澤哲裁判長は原氏の主張を一部認め、毎日新聞に対し、損害賠償として220万円の支払いを命じる逆転判決を下した。

毎日新聞は2019年6月11日付の朝刊一面トップで「特区提案者から指導料」との主見出し、「WG委員支援会社 200万円、会食も」との袖見出しをつけた記事を掲載。福岡市の美容系学校法人が、日本の美容師資格を持ちながら国内で就労できない外国人を特区内で働けるようにする規制改革を希望し、原氏と協力関係にあるコンサルタント会社に対し、コンサル料として200万円の支払いをしたと報じた。

原氏はこれに対し、「会社やその顧客から、1円ももらったことがない」などと全面否定し、同年6月に提訴した。昨年9月の一審判決では、毎日新聞が勝訴し、原氏が控訴していた。

原氏は、記事中の200万円についてコンサル会社を通じて自身に支払われたように一般読者に印象を与えると主張したが、控訴審判決では、見出しとリード文を読めば、原氏とコンサル会社が「協力関係にある旨の指摘はあるものの、控訴人が直接または間接に指導料ないしコンサルタント料を受領したとの事実が提示されているものとは認められない」とする一審判決を支持し、原氏の主張を退けた。また、記事中で原氏について「公務員なら『収賄罪』に相当する」などと論評した大学教授のコメントについても名誉毀損の成立は認めなかった。

しかし、学校法人が原氏との会食費用を負担したと書いた点については、「控訴人が実際に当該招待に応じ、学校法人側でその費用を負担したかどうかは不明であると言わざるを得ない」と指摘。毎日新聞記者の取材に対して原氏が食事をするときには基本的に折半していると答えていたことなどから「会食の費用を学校法人において負担したとの事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったとは言えない」と述べ、名誉毀損の成立を認めた。

毎日新聞の原氏に対する報道を巡っては、記事をソースに原氏を批判する国会議員による名誉毀損問題に発展。原氏はブログを書いた立憲民主党の篠原孝衆院議員を訴え、東京地裁は昨年3月に篠原氏の名誉毀損を認めて篠原氏に165万円の支払いを命じる判決を下し、今年1月には二審でも原氏が勝訴し、確定している。また同じく毎日新聞の記事を元に、国会質問やネットで原氏を批判した同党の森ゆうこ参院議員に対しても原氏は提訴し、東京地裁が同月、森氏に対し34万円の支払いを命じた。森氏は控訴中。

【更新:15:40】原氏は判決後、報道各社にコメントを発表した。

「このような事実無根の誹謗中傷記事が許されてはならないと考えていました。訴訟過程では、あまりに杜撰な取材ぶりも明らかになりました。今後同様のことが繰り返されないため、今回の判決の意義は大きいと思います。毎日新聞社には、判決を真摯に受け止め、一連の記事掲載に係るプロセスを第三者も交えて検証し、検証結果と再発防止策を明らかにしてほしいと思います」

【更新:16:30】判決理由を追記しました。

※本記事の初出掲載は7月4日13:25

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