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 2022年F1第10戦イギリスGPの決勝が行われ、フェラーリのカルロス・サインツがF1初優勝を挙げた。2位はセルジオ・ペレス(レッドブル)、3位はルイス・ハミルトン(メルセデス)となっている。アルファタウリの角田裕毅は14位だった。

 イギリスGP決勝当日、シルバーストン上空は青空と黒雲が混在している空模様。公式の降水確率は20%だが、いつ雨が降ってもおかしくない。現地時間午後3時のスタート時点で、気温19度、路面温度29度。旧メインストレートからコプスにかけては向かい風、ハンガーストレートでは左からの横風となる、かなり強い東の風が吹いている。

 各車のスタートタイヤは、大きく分かれた。フロントロウのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、10番グリッドのニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)、そして16〜18番グリッドのアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、ケビン・マグヌッセン(ハース)、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)がソフトを選択。8番グリッドのジョージ・ラッセル(メルセデス)が唯一ハードを履き、残り14台がミディアムという布陣だ。ピレリはミディアム─ハード─ミディアムの2ストップを予想していたが、少なからぬマシンが違う戦略を選んだ。

 フェルスタッペンがソフトのグリップを活かした蹴り出しで、ポールシッターのサインツから首位を奪う。背後ではターン1で多重クラッシュが発生。セッションは、ただちに赤旗中断となった。周冠宇(アルファロメオ)がひっくり返った状態のままグラベルに飛び出し、アルボンはその場で、ラッセルもターン2付近でリタイアとなった。角田、エステバン・オコンも(アルピーヌ)マシン前部に大きなダメージを受けたが、何とか自力でピットに戻った。

 事故のリプレイ映像がしばらく流されず、一時は最悪の事態も心配された。しかしアルファロメオの公式ツイッターによれば、周は担架に乗せられて救急車で搬送されたが、骨折などはなく、意識はある。事故の直前、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)が周とラッセルに挟まれ、ラッセルに接触。スピンしたラッセルが周にぶつかった。コクピットを下にした状態のままグラベルを滑っていった周のマシンは、タイヤバリアの直前でグラベルに引っかかった形でバリアを飛び越え、その先のフェンスで止まった。この事故のあおりで、後続マシンも次々に接触した。

 赤旗から53分後に、全17台によるレースが3周目から再開された。事故直前にフェルスタッペン、ハミルトン、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)らが順位を挙げていたが、リスタートでは本来のグリッド順に戻された。注目のタイヤ選択は、フェルスタッペンがミディアムに戻した一方で、ラティフィ、ガスリー、角田、オコン、ベッテルはソフトを選択した。ランド・ノリス(マクラーレン)、ダニエル・リカルド(マクラーレン)、マグヌッセン、ランス・ストロール(アストンマーティン)以外は、新品のミディアムだ。

 今度はサインツがポールを死守。その後ろではルクレールとペレスがわずかに接触し、ペレスはフロントウイングの右翼端板を失ったが、そのまま走り続けている。ソフトのガスリー、角田は7、9番手まで順位を上げた。

 6周目、ペレスがピットイン。ノーズを交換し、最下位17番手に後退した。その間にハミルトンがノリスをかわして、サインツ、フェルスタッペン、ルクレールに次ぐ4番手につけた。

 序盤はフェルスタッペンが1秒以内でサインツを追う展開。「彼の方が速い」と警戒していたサインツは、超高速のチャペルでコースオフ。フェルスタッペンが首位を奪った。直後には7、8番手まで順位を上げていたガスリーと角田が同士打ちを喫し、13、15番手まで後退した。

 そして12周目には、フェルスタッペンがペースを落としサインツに抜き返されてしまう。コース上のデブリを踏んだことによるスローパンクチャーだ。再びミディアムに履き替え、6番手でコースに復帰した。しかしその後も、「リヤがおかしい」「100%壊れている」と違和感を訴え、ペースが伸びない。チームからは、「フロアのダメージだ。致命的ではないが、パフォーマンスは低下する」と伝えられた。その間に3番手ハミルトンは最速タイムを連発し、サインツ、ルクレールのフェラーリ勢に迫る。ペースに優るルクレールはサインツの0.6秒差につけ、チームに順位交替を促している。

 17周目、ハミルトンはルクレールの3秒差まで迫った。ルクレールは「もっと速く走りたい」とあきらかに苛立っているが、初優勝のかかるサインツも簡単に首位は譲れない。しかしサインツにピットインの指示が出て、21周目にハードに履き替え、3番手に後退した。

 首位に立ったルクレールだが、ペースが伸びない。22周目には、ハミルトンとの差は2秒まで縮まった。一方6番手のフェルスタッペンはハミルトンより2秒遅く、24周目にハードに交換。コース復帰直後にベッテルに抜かれ、8番手まで順位を下げた。

 26周目、首位ルクレールがピットイン。サインツの背後、3番手でコースに復帰した。今季初めて首位を走るハミルトンは、「まだタイヤは全然大丈夫だ」と、ハイペースを維持している。フレッシュタイヤのルクレールも最速タイムを連発し、31周目にはペースの伸びないサインツが2番手を譲った。

 34周目。ハミルトンがピットイン。滞留時間4秒3とやや長く、フェラーリ2台の背後の3番手でコースに復帰した。とはいえサインツより13周、ルクレールより8周フレッシュのタイヤを履いている。4番手まで順位を上げたペレスは、ルクレールの20秒落ち。これで優勝争いは、上位3台に完全に絞られたかに思われた。

 ところが38周目、フェルスタッペンを抜いて8番手に上がっていたオコンが、コプス手前でストップ。これでセーフティカー(SC)が導入される。ルクレールがステイアウトする間に、サインツ、ハミルトン、ペレスはピットに向かい、新品ソフトに履き替えた。これでペレスも僅差の4番手に。5番手以下のドライバーも、マグヌッセン以外は全員ピットインした。

 43周目、レース再開。ペレスがハミルトンを抜き去り、直後にサインツがルクレールをかわした。ハードを履き続けたルクレールが、ペレスとハミルトンに追われる。その間にサインツは、みるみる差を広げていく。

 46周目、ルクレールとペレスがバトルを繰り広げる間に、ハミルトンが2台をごぼう抜きして一気に2番手に。しかしペレスがすぐに抜き返し、ハミルトンはルクレールにもかわされる。そこにアロンソ、ノリスも加わり、5台による2位争いとなった。ハミルトンは何度もルクレールの前に出るが、そのたびにルクレールが抜き返す。しかし48周目のルフィールドで力尽きた。

 この攻防でタイヤを使い果たしたか、ルクレールはアロンソに激しく追われる。しかし何とか耐えしのいだ。首位を快走したサインツが、デビュー151戦目にしてついに初優勝。2位ペレス、そして3位に入ったハミルトンは、最終周に最速ラップを叩き出し、メルセデス本格復活を印象づけた。

 4位ルクレール、5位アロンソ、6位ノリス、7位フェルスタッペン。ミック・シューマッハーが8位に入り、F1初入賞を果たした。9位ベッテル、10位マグヌッセン。角田は最下位14位完走。ガスリーはリヤウイングトラブルで、27周目にリタイアだった。

カルロス・サインツ(フェラーリ)、セルジオ・ペレス(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2022年F1第10戦イギリスGP表彰式 優勝カルロス・サインツ(フェラーリ)、2位セルジオ・ペレス(レッドブル)、3位ルイス・ハミルトン(メルセデス)