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<p>新型コロナウイルス感染の後遺症とされる「ブレインフォグ」とは? その謎が解き明かされ始めた</p><p>新型コロナウイルス感染の後遺症とされる「ブレインフォグ」とは? その謎が解き明かされ始めた #最新記事</p><p>新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症の可能性が指摘されている「ブレインフォグ」。“脳の霧”という言葉が示すように、なんとなく頭の働きが鈍くなったり、ぼんやりしたりする症状を指す。このほど米国の研究チームが、新型コロナウイルスが脳細胞集団の正常な活動を阻害して炎症の徴候を残す現象を発見した。</p><p>科学者らは次に、神経細胞の軸索を取り囲むミエリン(髄鞘)の形成を担うオリゴデンドロサイト(ニューロン間の情報伝達を促進する絶縁体を提供するためニューロンの周囲にミエリンの“パッド”を形成する脳細胞)に対する新型コロナウイルスへの軽度の感染の影響を調べることにした。 モンジェの研究室のもうひとりの博士研究者で研究共著者のアナ・ジェラティによる以前の研究では、化学療法がこのプロセスにどのように影響するかに焦点を当てていた。化学療法を受けたマウスのミエリンの消失には、短期記憶や注意に関する障害との直接的な関係が認められている。 「これらのミエリンをわずかでも調整すれば、かなり多様なかたちで実際にニューロン間のコミュニケーションに影響を及ぼすことができます」と、ジェラティは言う。「ニューロンの活動に適応的に反応する能力を失うことで、持続的な認知障害をマウスに引き起こしたのです」 ジェラティは、COVID-19がマウスのニューロン間のパッドにどのように影響したのか分析を終えるために、クリスマス休暇中に深夜まで研究室に残っていたことを覚えている。この分析の結果、感染したマウスは成熟したオリゴデンドロサイトの約3分の1を失ったことが明らかになったのだ。そして対照群のマウスと比較して、ミエリンの形成が統計的に有意に低下していた。 つまり、ミエリンの消失の程度は、マウスで化学療法の影響について研究した際に発見したものと、ほぼ一致していたのである。彼女は興奮して結果をモンジェにメッセージした。「頭の中をこんな言葉が駆け巡るほど忘れがたい瞬間でした。『信じられない、なんて興味深いデータなんだろう!』といった感じです」と、ジェラティは振り返る。 カリフォルニア大学サンフランシスコ校の認知神経学者のジョアンナ・ヘルムスは、「マウスによるデータは非常に説得力があります」と言う(ヘルムスは今回の研究には関与していない)。そしてこれらの結果が、長期の後遺症である「ロングCOVID」に悩まされてきたガイのような人々や認知症状に苦しむ人々など、ヒトの患者の治療にどのようにつながるのか理解するには、より多くの研究が必要であるとも指摘する。 治療用の薬剤候補を見つけられるか どの薬を最初に試すべきなのか解明するには、ブレインフォグの症状の生物学的な原因を理解することが早道かもしれない。「この『ブレインフォグ』は俗称であり、人々に神経障害が起きていることを公には否定するような言葉です」と、ヘルムスは言う。 ヴァンダービルト大学医療センターの肺救急専門医のウェス・エリー(今回の研究には関与していない)は、このような研究を今後の治療法の開発につなげられると考えている。「この研究は、脳の力を再構築するための薬理学的、神経心理学的、認知的なリハビリ構造への道のりを開くものです」 例えば、モンジェは「ケモフォグ」のアニマルモデルですでに効き目を発揮していた薬剤候補の一部が、新型コロナウイルス関連の認知症状の治療に役立つかもしれないと考えている。これらの候補薬を彼女はCOVID-19のマウスモデルで試験し、役立つか確認したいと願っている。 また研究チームは、今回判明した神経学的な結果がより長期の経過後に異なるのか、またはワクチン接種後のブレイクスルー感染後に異なるのかといった、ほかの問いについても調査したいと考えている。さらに、COVID-19のマウスモデルで発見した内容を、別の有名なウイルスであるH1N1(豚インフルエンザを引き起こすウイルス)への神経反応とも比較したい意向だ。 Most Popular</p>