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「トヨタで売れば売れる」…って…こと? 本家より爆売れトヨタがOEMで売るクルマ

 自動車に限らず、衣服や家電、食料業界などで、開発したメーカーとは別会社のブランドで販売する、通称「OEM」(Original Equipment Manufacturingの頭文字)。OEMは、販売する自動車メーカーにとって、幅広い車種を自社ブランドで販売することによって多くの顧客を得られ、また、車両販売での利益がわずかでも、その後のメンテナンス等での利益を得ることができる等のメリットがあり、商用車等まで含めれば、国内ほとんどのメーカーがOEM車を販売している。

 OEM車が本家本元の販売台数を上回ることはあまりないが、まれに、「本家越え」をするOEM車もある。その多くがトヨタだ。本家よりも爆売れしたトヨタにOEMされているクルマを中心に、「他方が爆売れした」例をいくつかご紹介しよう。

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、DAIHATSU、SUBARU、NISSAN、SUZUKI

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実に本家の4倍!! トヨタ「ライズ」

 小型クロスオーバーSUVとして、2019年に登場した「ライズ」。ご存じのとおり、ダイハツ版は「ロッキー」だ。ロッキー/ライズは、トヨタも一部開発に携わっているが、主としてダイハツが開発したモデルであり、生産もダイハツ。フロントフェイスがロッキーとは若干異なるが、基本的にはロッキーと同一モデルだ。

 そんなロッキー/ライズの販売台数は、登場翌年となる2020年年間において、ロッキーが31,153台であるのに対し、ライズはなんと、126,038台。約4倍も、ライズのほうが売れていることになる。2021年も、ロッキーが21,392台で、ライズが81,880台と、その比率(約3.8倍)はさほど変わっていない(いずれも自販連より)。顔が多少違えど、中身は全く同じクルマであるのに、顧客を多く持ち、ブランド力と販売力のあるトヨタの強さが光る結果となっている。

兄弟車とは77倍の差!! トヨタ「ルーミー」

 いまトヨタ車において、(単一モデルとしては)もっとも売れているモデルである「ルーミー」。このルーミーもまた、ダイハツが供給するOEM車だ。ダイハツ版は「トール」。スバルからも「ジャスティ」として販売されている。2016年に登場した際は、トヨタ店とカローラ店向けの「ルーミー」に対し、ネッツ店とトヨペット店向けには「タンク」として販売されていたが、2020年のマイナーチェンジでルーミーへ一本化された。

 マイチェン以降となる2021年年間の販売台数は、自販連によると、本家であるトールが14,780台であるのに対し、ルーミーは134,801台と、実に約9倍。ちなみにジャスティは1,759台で、ルーミーとは約77倍もの差となる。

 ライズと違って、ルーミーは完全なるOEM車。エンブレムが違うだけで顔も中身もまったく同じ(ボディカラーの設定は異なるものもある)なのに、ここまで差が出るとは、供給元のダイハツとしても、驚きであろう。

トヨタ「ルーミー」。単一モデルでは、いま日本でもっとも売れている乗用車だ

「共同開発」で相手の約4倍!! トヨタ「GR86」

 2021年に「GR」ブランドとなって登場した「GR86」。先代の「86」同様、スバルとの共同開発で誕生したモデルで、スバル版は「BRZ」だ。共同開発ではあるが、基本的にはスバルが開発したモデルで、生産もスバル。2021年の日本カーオブザイヤーでは、日産のノートシリーズにつづいて2位の評価を得たモデルでもある。

 そんなGR86の2022年1月~5月までの販売台数は、7,585台。BRZの同期間が2,050台であるので、BRZの3.7倍にもなる。BRZ/GR86のようなスポーツカーを購入する顧客層であれば、もうちょっとBRZの比率が多くてもいいような気がしたが、このような結果だった。

 「GR」ブランドとなったことが功を奏したのかと思い、先代でも比較してみたが、フルモデルチェンジ前の2020年年間の販売台数で、BRZが997台であるのに対し、86は3,938台と、86がBRZのおよそ3.9倍。先代BRZは2020年の11月末をもって生産終了となっているので(86は2021年10月まで販売された)、2020年年間の比較では、1か月ほど86よりも販売期間が少なくなってはいるが、やはり現行同様の比率だといえるだろう(販売台数データはいずれも自販連より)。

日産にもあった!! 本家の3倍以上売れたこともあった「モコ」

 現行モデルではないが、日産にも、本家よりも爆売れしたOEM車があった。2002年~2016年までの14年間に3世代が販売された、軽トールワゴンの「モコ」だ。本家はスズキの「MRワゴン」。実質的には日産初の軽自動車となったモコは、1999年、日産の経営危機に際し発表された「日産リバイバルプラン」のひとつとして、導入された。

 そんなモコの販売台数は、販売終了前年の2015年年間で、21,566台。一方、同期間のMRワゴンは6,516台と、モコがMRワゴンの約3.3倍(販売台数はいずれも自販連より)。2015年以前では、(3.3倍よりも)差が少ない年もあるが、それでも2倍程度の差で、モコのほうが売れていた。

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 OEMは、供給する側もメリットが大きい。今回取り上げたように、OEM車は、軽自動車やコンパクトカー、商用車に多いが、一般的な乗用車よりも薄利多売となりやすいこれらのクルマは、OEM供給をすることで工場の稼働率を高めることができる。BRZ/86のような共同開発も、開発費を折半できるため、両者にメリットがある。効率を求め、今後OEMや共同開発、共通化はさらに加速していくと思われるが、そのなかで各メーカーがどうやって独自色を出してくか、が問われることになるだろう。

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