シルバーストン・サーキットはロンドンから直線距離で100km以上離れており、サーキットの周辺には鉄道の駅もないため、訪れるためには車での移動がベストとなる。しかし、気をつけなければならないのは、ナビゲーションシステム。シルバーストンにアクセスするにはさまざまな方法があるだけでなく、グランプリ期間中はさまざまな交通規制がかけられており、ナビが役に立たないことが少なくないからだ。
たとえば、筆者はミルトンキーンズの南にある小さな村から通っているので、『A5』という国道を使用しているのだが、そこからシルバーストンへ向かう曲がり角の手前に立てられた看板には『Silverstone』の文字はない。なぜなら、これから筆者が向かう東門は関係者用の臨時ゲートだからだ。おそらく、ナビは『Towcester(トースター)』まで北上して、そこで『A43』に合流してシルバーストンの正面玄関(西門)がある出口まで南下するよう指示を出すのだろうが、そこは一般客も使用するため渋滞が激しい。
ということで、筆者はこの看板で左折し、片道1車線の農道を通ることにしている。農道を過ぎると『A413』という道路に突き当たり、そこを『Whittlebury(ホワイトルバリー)』方面へ左折する。
左折すると、すぐにホワイトルバリーの村に入る。この村にはホテルが1件しかないのだが、かつてフランク・ウイリアムズが存命だった頃は、このホテルを定宿にしていた。
ホワイトルバリーを通過して、しばらく走ると突然、右側に東門が登場。ここを右折するとゲートがあって、セキュリティのチェックを受ける。あぜ道を通過すると、目の前にサーキットが登場。ここはマゴッツ・ベケッツ・チャペルのアウト側となる。関係者用の駐車場はサーキットの内側にあり、アウト側からイン側へ入るブリッジが西門側にあるため、ここから反時計回りにコプスを通過して西門へ。
シルバーストンはサーキットへ向かう道がいく通りもあるだけでなく、サーキットに入ってからも目的地へ向かうにはさまざまなルートがあるため、ナビを頼ることができず、経験が必要となる。
「1年目は、サーキットまでの道を覚えなさい。
2年目は、コースを覚えなさい。
3年目からが勝負だ」
かつて、ジェラール・ラルースがルーキーだった片山右京に語った言葉だ。ヨーロッパのオールドコースはシルバーストンに限らず、アクセスするための道が複雑なため、こうした教えが存在していた。その教えは、ナビが発達したいまでも生きている。
なお、サーキットからホテルに帰るときは、東門が閉鎖されているため、正面玄関から出て、A43を北上してトースター経由で帰る。A43のトースターの出口にあるファストフード店は、17年の夏に山本雅史(元ホンダのマネージングディレクター)とヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)が秘密の会談を行った例の場所。いつもここを訪れると、あの日のことを思い出す。