歳を取ると、子どもの頃(の記憶)にくらべて、時間の流れが速くなったように感じている人は多いはずだ。しかし、それは現実に起こっていることかもしれない。
科学者が調べたところ、6月29日の午前8時はわれわれが考えていたより、1.59ミリ秒速くやって来たと言う。そしてその日は、人類が1960年代に原子時計で地球の自転速度を測定し始めて以来、もっとも短い1日だったとのことだ。
実は、この現象はここしばらく続いている。2020年には “史上最も短い1日” が20回も更新された。モスクワ国立大学の研究者レオニード・ゾトフ氏はCBSニュースに対して「地球の時点は2016年から加速し始めた」と述べた。そして「今年は昨年、一昨年よりも速くなっている」とも。
地球の自転は遅くなっていっているという話を雑学の本などで読んだことがある人は、おそらく今回の話を疑問に感じているだろう。地球が形成された当時の自転は、いまよりもかなり速かった。The Guardianによれば、約14億年前の地球の自転は19時間にも満たなかったという。そして平均して毎年、約1/74,000秒(約0.0000135秒)ずつ自転速度は遅くなっている。
ただこの自転速度は、実は1日ごとでも変動している。たとえば大きな地震や、エルニーニョ現象による強風、氷河の形成や融解、月の重力、その他様々な気候の変動などが自転速度に影響を及ぼしていると科学者らは考えている。さらには “チャンドラー揺動” と呼ばれる、地軸が微妙にずれる現象なども影響している可能性が指摘されている。
この自転速度のムラを吸収するため、1972年以降、時おり協定世界時(UTC)に1秒を追加する “うるう秒” が設けられている。しかし、最近のように1日が速く(短く)なる傾向が続けば、これまでとは逆に1秒を差し引く “マイナスのうるう秒” がどこかで必要になるかもしれない。
たった1秒だが、うるう秒は時間に精密なシステムに影響を及ぼすことがある。RedditやCloudflare、Twitter、Netflix、Amazonなどのサービスで、うるう秒に起因する障害がこれまでに発生した。もしマイナスのうるう秒が実行された場合、コンピューターシステム上で同じタイムスタンプが2度訪れることになり、さらに深刻な混乱が起こる可能性も考えられる。また空港のチェックインシステムも、うるう秒の影響で混乱をきたしてしまうだろう。
先週、Meta(Facebook)のエンジニアOleg Obleukhov氏らは、ブログ記事で「地球の自転パターンの変化のせいで、いつかあるときにマイナスのうるう秒が発生する可能性が非常に高い」と指摘。そのようが現象はこれまで「大規模にテストされたことがなく、タイマーやスケジューラーに依存するソフトウェアに壊滅的な影響を与える可能性がある」として、うるう秒ではなく違う対応策を考えるべきだとした。
なお、うるう秒の実行を決定する次の会議は、UTC計時の国際電気通信連合(ITU)への委任期間が終わる2023年後半に、ドバイで開催される予定とのことだ。
- Source:CBS News
- Source:Engadget