観測史上1位となる異例の速さで梅雨明けが発表された今年。気象庁は6月27日、九州南部・東海・関東甲信で梅雨明けしたと発表し、東京都心ではそこから7月4日まで史上最長となる9日連続の35度超えの猛暑日を記録。
そんな状況を受け、政府は「電力需給ひっ迫注意報」を東京電力管内に発令していたが、気になるのは一般家庭90軒分にもなる大容量の電力を使うという90kWの最新急速充電器の使い方。自身も電気自動車を所有する国沢光宏氏が10日(日)の参院選投開票を前に、「エネルギー問題を真剣に考えてほしい」と警鐘を鳴らす!
文/国沢光宏、写真/国沢光宏、AdobeStock、ベストカーWeb編集部、ベストカー編集部
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■電力需給ひっ迫のなか、大容量急速充電器を使うEVオーナーが!?
東京は梅雨明けから9日間連続35度超えを記録するほどの酷暑のなか、大手メディアはこぞって電力不足を伝えていた。熱中症防止効果の高いエアコンすら設定温度を上げましょうという国家的危機である!
そんな状況のある日の夕方(最も電力需給が切迫する時間帯です)、近所の日産ディーラーを通りかかったら、90kWという最新の大容量急速充電器で2台のリーフが充電中だった。90kWの急速充電器、標準的な家庭なら90軒分の電力を消費する。
驚くべきことに経済産業省は多くの人に節電を訴えるなか、急速充電器についちゃ何の利用制限もかけておらず。電気自動車ユーザーの大半は環境問題を真剣に考えており(だからこそ電気自動車に乗っている)、電力が余っている夜間に充電をする。されど、需給逼迫状況のなかでも充電する自分勝手な輩は一定数出てしまう。
こういった連中がいると、「電力不足なのにどうして急速充電させるんだ?」とか「なんで電気自動車に補助金を出すのか?」みたいな声も出てくる。そのとおりだと思う。デタラメな行政、国が明確なエネルギー戦略や環境対策を持っていないからにほかならない。
■経産省は現在4基稼働中の原発を27基へ増やすというが……
以下、数字を挙げて説明するけれど、我が国は先進国野中で最も電気自動車の普及率少ない。そのいっぽうでエネルギー戦略なし! そもそも今回の電力不足はとっくにわかっていた。我が国の場合、2030年までに2013年比で二酸化炭素の排出量を46%減らすという国際公約をしている。
本来なら実現可能なエネルギー戦略を構築しなければならない。なのに、担当の経産省が出した電源構成は、20~22%を原発でカバーするというもの。ちなみに、7月4日時点で稼働してるのは4基。これを27基にする計画だ。
考えていただきたい。我が国は世界の国土面積の0.25%に過ぎないが、マグニチュード6以上の地震回数は全世界の21%に達する。欧州ですら原発を稼働させているのは地震のない地域。ピレネー山脈から西側やアルプス山脈から南側に原発は1基もない。アメリカも日本の原発にダメ出しした。経産省はいまだに原発を考えているため、抜本的なエネルギー戦略を打ち出せないまま今日に至っている。
参考までに書いておくと、原発は1度稼働させたら発電量を変えられない。昼間、太陽光などで電気が余ると、ブラックアウトの危険性出てくる(だから原発を2基稼働させている九州電力は新規の太陽光発電を受け付けない)。地熱発電は原子力発電と同じベース電源という位置づけのため、これまたバッティングする。国立公園だからダメだと理由で認可しない状況が続いている。
今夏に加え、計画停電も考えないとならない今冬の電力不足は(もしかすると今後しばらく)、原発の利権構造のためだと思う。中途半端な現在のエネルギー戦略のままだと10年以上使っていない古い原発を再稼働させることにもなりかねず、福島県のように人が住めない地域をさらに作り出すことになってしまう。このあたりで真剣にSDGsを考えたカーボンニュートラルを考えるべきだと思う。
■カーボンニュートラルは必須、エネルギー問題を考えて「参院選に清き一票を!」
日本のような地勢の国であれば、世界3位のポテンシャルを持つ地熱発電を原発に替わるベースロード電源とし、必要な電力の3倍程度を再生可能エネルギー(水力と太陽光、風力)で作る。余った電力は水素にするか、揚水発電用に使うなど貯めておく。電力需要が多ければ水素を燃やす火力を使うことで柔軟に供給できるだろう。これを2050年までの28年間で作り上げればよい。
この週末は参議院選挙。日本の将来のためにも、ぜひ投票をお願いしたく思う。とはいえ正直なところ、エネルギー問題についてしっかりした方針を打ち出している候補者や政党代表が見当たらない。選挙運動が始まった先週からさまざまなメディアで発信される各党のコメントを見るのだけれど、国民にお金を配る話ばっかり。我が国の産業にとって最もエネルギー戦略を真正面から語らないのだった。
ここまで読んで「エネルギーは国内問題でしょう」と思うかもしれないが、今や先進国の大半で「二酸化炭素を排出して作った物品は輸入制限の対象とする」という法案を準備している。弱者を過酷な状況で働かせて安く輸出していることと同列。豊田章男自工会会長なども、日本の得意分野である製品の輸出ができなくなると憂う。カーボンニュートラルは必須目標と考えるべきだ。
前述の電気自動車に対する補助金だけれど、先進国の標準からすれば日本の電気自動車普及率は圧倒的に低い。2021年で言えば日本0.76%に対してアメリカ2.9%。イギリスやドイツ、フランスは10%超え。補助金を出して普及させないと完全に遅れを取ってしまう。その代わり、電力需給に余裕ができるまで間は、充電制限などもかけなければならない。
ということを考えつつ、清き一票を!
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投稿 参院選投開票を前に考えたい! EV補助金はいいけれど……電力需給ひっ迫時のEV急速充電器使用マナーにモノ申す!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。