気象台によると、5日早朝に九州に上陸した台風4号は午前中に温帯低気圧に変わった。しかし、台風から温帯低気圧に変わっても太平洋を中心に大雨のおそれがあるという。
高知県に「顕著な大雨に関する気象情報」
すでに大雨の被害が出ている地域も少なくない。高知県四万十町では、大雨の影響で5日午前までに8棟の床下浸水が確認された。高知県では大雨をもたらす「線状降水帯」が発生。気象庁は、5日未明に高知県に対して「顕著な大雨に関する気象情報」を発表。4日午後11時までの1時間で、高知県中土佐町で101ミリ、四万十町で84ミリの記録的な大雨が観測された。危険な場所にいる人は、市町から発令されている避難情報に従い、直ちに適切な避難行動をとることが求められている。
長崎県には、5日午前に「記録的短時間大雨情報」が出された。雲仙市付近では、5日午前5時40分までの1時間に約110ミリの大雨が降った。さらに、福岡県にも「記録的短時間大雨情報」が出され、大牟田市では午前7時10分までの1時間に120ミリ以上の雨を観測し、住宅街や道路など、複数の場所で冠水した。
四国と近畿250ミリ、東海200ミリの大雨予報
温帯低気圧はこの後、6日にかけ東日本へ移動。南から流れ込む暖かく湿った空気の影響で、各地に大雨をもたらす恐れがある。6日午前6時までに予想される24時間雨量は、多い場所で、四国と近畿で250ミリ、東海200ミリ、九州北部150ミリ、九州南部120ミリ。温帯低気圧の進路によっては、大雨や強風の被害がさらに拡大する恐れもある。
そうした中、懸念されるのが最終盤を迎えている、参院選への影響だ。大雨の被害を受けた地域の人々にとっては参院選どころではないだろうし、遊説プランを練り直す必要に迫られる候補者も少なくないだろう。何より、温帯低気圧の進路によっては10日の投開票日を無事に迎えられるかを心配しなければならない地域が出てこないとも限らない。
過去には台風で投票日繰り上げも
「大雨と選挙」と聞くと、2017年10月22日に投開票が行われた衆院選を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。西大西洋のミクロネシアで発生した台風21号が、勢力を落とさずに「超大型」のまま、静岡県に上陸。「超大型」のまま日本に上陸した台風は、1991年以降で初めてだった。
静岡県に上陸した台風21号は、和歌山県新宮市で888.5ミリ、三重県伊勢市で539.0ミリ、最大瞬間風速が東京都三宅村で47.3メートルを記録するなど、各地に甚大な被害を与えている。
投開票が行われた22日は全国的に大荒れになることが事前に予想されていたこともあり、三重県鳥羽市、志摩市、宮城県石巻市など、主に離島を抱える11の自治体で投票日が繰り上げられた。
“ドラマ”はあるのか?
今回は、5年前とは異なり、早々に台風から温帯低気圧に変わった。とはいえ、まだ勢力は強く、各地に甚大な被害をもたらせる可能性もある。今回の温帯低気圧は、動きが遅いという特徴もあり、6日にかけて関東南部から東海、紀伊半島では、200ミリ以上の大雨の可能性もあるという。
選挙戦最終盤を迎え、動きが制限される可能性があることは、少しでも追い込みをかけたい候補者には特に痛いのではないか。反対に、組織票を持っている候補者の中には、本音では、投開票日が大雨になることを期待している人がいないとは限らない。
大雨や強風が参院選で“ドラマ”を生み出すきっかけとなるか。なお、2017年の衆院選は、自民党が単独過半数の議席数を獲得した一方で、野党は立憲民主党が躍進し、野党第一党になったという選挙戦だった。