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参院選はラストサンデーを過ぎて終盤戦に向かっている。報道各社の中盤時点での情勢調査も揃ってきた。激戦区の1つが新潟選挙区(改選1)。全国的な注目を集める理由の一つが、あの森ゆうこ氏(立民現職)の再選がなるかどうかという点だ。

自民や報道各社の調査では今春から、自民の新人、小林一大氏と「横一線」とも言える伯仲した戦いを繰り広げ、選挙戦後は小林氏がわずかにリードしているようだったが、JX通信社の中盤調査では森氏が猛追している。逆転勝ちへ勢いをつけたい矢先、森陣営にとっては「悲報」とも言えるニュースが東京から飛び込んできた。

選挙戦終盤の毎日新聞敗訴

「原判決を次の通り取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、220万円及びこれに対する令和元年6月12日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」

4日昼、東京高裁424号法廷に判決主文を読み上げる裁判長の声が響き渡った。被控訴人は毎日新聞社で、控訴人は、政策コンサルタントの原英史氏。政府の規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)座長代理を務める原氏は3年前、毎日新聞に名誉を傷つけられる記事を書かれ、記事掲載からこの日までの1100日余りも壮絶な戦いをしてきた(判決の記事はこちら)。この毎日新聞の報道に乗っかる形でたびたび原氏に対し「特区の議論の公正性を疑わせるような大変な事態」などと“追及”し、国会質問やネットで原氏の名誉を毀損してきたのが森氏だ。

森氏は国会質問の際、「(原氏が)国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける(行為をした)」などと事実と異なる“放言”をした。国会議員の院内での発言内容は、憲法51条により免責特権を保障されており、民間人の原氏は森氏の法的な責任を問えない。

しかし森氏が自身のフェイスブックで原氏と係争中の毎日新聞の記事を掲載。 ツイッターでは、国会質問時の資料として、原氏が代表理事を務めていた一般社団法人の登記簿を公開した際に、法人の代表理事としての原氏の住所を含めた個人情報をそのままネット上にさらしたことについて原氏は森氏を相手どって提訴。一審の東京地裁は森氏の名誉毀損を認め、34万円の支払いを命じた(当時の経緯はこちら)。

それでも森氏は謝罪を拒否するどころか判決を不服として控訴中だ。すでに同じく毎日新聞の記事に基づいて原氏をブログで中傷した立民の篠原孝氏には、一審、二審とも篠原氏の名誉毀損を認定。しかも二審で篠原氏は損害賠償額が増額するという「完敗」を喫している。それでも森氏が全面対決続行の決断を支えてきたのは毎日新聞が原氏との訴訟で一審段階では勝訴したことが大きいのだろう。

画像:y-studio /iStock、参院ネット中継

それでも“しぶとい”森氏

ネットの世界では新聞に対する信頼が地に落ちて久しいが、法曹界では大手の新聞社が持つ信用力はいまだ絶大に近いものを堅持している。原氏と親しい元新聞社のベテランジャーナリストですら以前、「毎日を訴えても勝つのは難しいから訴訟はやめておいた方がいい」と原氏に忠告したほどだ。森氏や森氏の訴訟代理人弁護士も同様の見立てをしていた可能性は考えられる。

だが、この日、二審で、一部とはいえ原氏の主張が認められたことで、森氏の主張の根幹である毎日新聞の記事への疑義が法的にも社会的にも一層強まる形となった。

新潟の選挙情勢を巡っては、5月下旬の知事選で野党系候補が現職相手とはいえ完敗。このとき、NHKの出口調査での政党支持率で立民がわずか5%に低迷していたこともあって、森氏の支持者の間でも「厳しい戦いになる」との見方が広まっていた。県外の“アンチ森”も落選を期待する声が一気に強まった。

しかし、政界で数々の修羅場をくぐってきた森氏だ。やはり簡単には終わらない。知事選直後の自民調査では、自民・小林氏に数ポイントリードされていたが、JX通信社が昨晩発表した最新の情勢では「横一線」の状態が続いているものの、「森氏は無党派層の約半数を取り込み、2週間前の前回調査より小林氏に迫っている」(JX通信社 米重克洋氏記事)と追い上げペースを上げている。

選挙戦終盤に飛び込んできた毎日新聞逆転敗訴のニュース。“アンチ森”の人たちはその影響をつい期待してしまうところだが、マスコミが当事者の毎日新聞を含め、森氏と原氏の法廷バトルを積極的に報道してこなかったこともあり、県内で十分に認知されているとは言い難い。地元では「判決のニュースがどこまで広がるのだろうか」との見立ても出ているようだ。果たして新潟県民はどのような選択をするのだろうか。

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