ライバルのノア/ヴォクが先行する中、2022年5月に満を持して登場したホンダ ステップワゴン。超すっきりフェイスのスタイリッシュミニバンだ。
AIRとSPADA、ふたつの個性でアピールするステップワゴンを徹底解剖する!
●NEWステップワゴン ここがポイント!
・AIRとSPADA、明確に分けた2つの個性。どっちもスッキリしたフロントマスクでステップワゴンらしさをアピールする。
・わくわくゲートを廃止。そのぶん3列目シートの座り心地が格段によくなった!!
・パワートレーンは1.5Lターボと2L e:HEVの2本立て。
・全幅1750mmで全車3ナンバーサイズ。
※本稿は2022年5月のものです
文/鈴木直也、ベストカー編集部、写真/HONDA、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2022年6月26日号
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■原点回帰のNEWステップワゴン スッキリデザインで勝負をかける
5月26日に発表された6代目となる新型ステップワゴン。パッと見にもわかるほどの、“スッキリフェイス”のスタイリッシュミニバンだ。
「AIR」と「SPADA」の2つの個性でアピール。
両モデルは前後バンパーの形状やサイドスカートの形状が大きく異なっており、よりシンプルに、初代ステップワゴンのようなプレーンなエクステリアを目指した「AIR」に対し、「SPADA」はフロントグリル〜バンパーをより立体的な造形とすることで、力強さを感じさせる。
ちなみにAIRの全長は4800mm。SPADAはフロントオーバーハングで+20mm、リアオーバーハングで+10mmとなり全長4830mm。全幅は両モデル1750mmで共通。ステップワゴンとしては初めて全モデル全幅1700mm超となった。
パワートレーンは2Lエンジン+モーターのe:HEVと1.5Lターボの2タイプだ。
■室内空間の広さ、快適性を追求
ステップワゴンの歴史を振り返ると、デビュー5年で累計50万台を達成した初代の大ブレークが鮮烈だった。
初代から2代目あたりまで、ステップワゴンといえばシンプルで機能的な“箱”というイメージ。ある種の「道具感」ともいうべきテイストが受けてバカ売れした。
しかし、ステップワゴンの独走状態を前にライバルも黙っちゃいない。2001年にノア&ヴォクシーがデビューすると、セレナを加えたミニバン三つ巴の戦いが勃発。以後“5ナンバーミニバン”市場は国産有数の激戦区となって現在に至っている。
そんななか3代目以降のステップワゴンはライバルに対して苦戦を強いられてきた。
シンプルが持ち味だった初代、2代目に対し、3代目以降はノア/ヴォクの影響を受けてベタなファミリー路線に舵を切る。
もちろん、市場がそれを要求していたのは間違いないし、ノア/ヴォクがそれで大ヒットしていたのだから当然の路線変更だが、残念ながらそれ以降のステップワゴンはライバルに勝てていない。
■ホンダの決意を感じる新型ステップワゴン
それゆえ、6代目となる新型ステップワゴンは、ボクの見るところ「原点回帰」がひとつの大きなテーマになっているように思う。
2016年をピークにミニバン市場全体が縮小するなか、これまでと同じことをやっていてもダメ。開発チームにはそんな危機感があったはず。
ノア/ヴォクと同じ土俵でマスユーザー層を狙うのではなく、ミニバンネイティブで育ったミレニアル世代や、「オラオラ顔はどうも……」という価値観のユーザーを積極的に狙っていく。
ある種の「逆張り」ではあるんだけど、ステップワゴンのセグメントシェアは現状17%ほどなんだから、2割取れたら成功。そんな割り切った覚悟を、この新型から感じるのだ。
まずは、エクステリアデザインを見てほしい。端正な箱型プロポーション、ピシッと水平に引いたベルトライン、シンプルなフロントマスク、縦長のテールライト……。まんま、初代・2代目のオマージュと言っていい。
最近のミニバンデザインは、アルファードやエスクァイアに代表される「オラオラ顔」が売れ筋で、つい先日モデルチェンジしたノア/ヴォクもその路線を堅持している。あえてそこを狙わないのは勇気のいる決断だが、そう腹を括ったからこそ、ライバルにはないキャラクターが出せたとも言えるわけだ。
インテリアの雰囲気も、ちょっと初代を彷彿させる。
インパネからぐるっと回ってベルトラインまで、視界の基準点となる水平線がきっちり整っていること。
また、ファミリーカーなんだけれどテイストがベタじゃなく、最近はやりのミニマリズムっぽい感覚があること。このモデルから全幅1750mmと5ナンバー枠縛りをやめたこと。これらの相乗効果で室内の広々感は抜群だ。
一方、パワートレーンに関しては、電動化時代を見据えてe:HEV比率をほぼ倍増の60%程度まで引き上げる目標を設定。ベースの1.5Lターボに対して約38万円のアップとなるが、WLTC燃費は約43%ほど良好。ドライバビリティのよさも考慮すると、e:HEVを選択する価値は大いにある。
チョイ乗りながら試乗の機会があったのだが、市街地レベルの速度域では電動走行比率が高くスムーズかつ静粛。乗り心地の向上も顕著だし、「ハード面では新型ノア/ヴォクといい勝負」という第一印象だった。
新型ステップワゴンのキャッチフレーズは「よゆう・じゆう for You」というもの。また、プレスキットなどには、「安心×自由」というフレーズも多用されている。
それに対して、豪華とか便利とか子供への配慮とか、生活感のあるアピールはあえて抑えているようで、あまり目に入ってこない。
ファミリーカーのど真ん中から、ちょっとズラしたマーケティング戦略。今度のステップワゴンの狙いはそのへんにあるような気がして、なかなか興味深いモデルチェンジ戦略だと思いましたねぇ。
■3列目まで快適空間!
先代型ステップワゴンで特徴的だった「わくわくゲート」は新型では非採用。さまざまな理由があるのだろうが、開発責任者の蟻坂篤史LPLは「左右非対称のリアゲートデザインがユーザーには不評だった」との調査結果を説明。
また「横開きのリアゲートを、ユーザーはそれほど求めていなかった」という調査結果などを総合的に検討し、一般的な跳ね上げ式テールゲートとしたという。
これによってテールゲート開口部地上高を30mm高く設定。その分サードシートの床下収納の高さに余裕ができ、サードシートは座面クッション厚が21mm、背もたれ高さが45mm高くなり、座り心地が格段によくなっている。
わくわくゲートでは後部からの乗り降りを想定していたため、ここを低くする必要があり、サードシートを床下収納するために、サイズの制約が厳しかったのだという。
実際、新型のサードシートに座ってみると、ゆったりとくつろげる。2列目は最大865mmのロングスライドなので、ほどよくゆったり座れるポジションに設定。その際でも3列目はニースペースにコブシひとつ分以上の余裕があるし、頭上スペースに圧迫感はない。
また、ヒップポイントが2列目→3列目と高くなっているため前方視界がよく、開放的で乗り物酔いしにくいのだという。
ステップワゴンは3列目が実用的な居住空間だというのを実感。室内を徹底的に「気持ちいい」空間としたのが新型ステップワゴンなのだ。
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