みなさん、こんにちは。現役路線バス運転手の運び屋フランクです。自動車レースの世界では、長距離を走る耐久レースも盛り上がっているようですが、バス運転手の仕事もある意味耐久レース。あの巨体で1日200キロを走るのは当たり前ですし、朝から晩まで走りっぱなしの時は相当体にこたえます。
それゆえ、バス運転手は職業病にかかりやすいと思われているようで、先日もある知り合いから「バスの運転手は痔になりやすいんですよね?」と聞かれました。
イメージが先行しているような気がしますが、バス運転手の職業病は確かに存在します。そこで今回はバス運転手の職業病についてレポートしたいと思います。
文/運屋フランク、写真/Adobe Stock(Yakobchuk Olena@Adobe Stock)
■特定の部位に負荷が集中するから痔は……
私の平均運転時間は1日あたり6時間。シフトによっては、それ以上ハンドルを握っていることもあり、毎日が耐久レースのような感覚です。
長時間運転すれば、当然体は疲れますし、運転手はシートに座ってバスを操縦しているので、体の特定の部位に負荷が集中。ベテランともなれば、それが積もり積もって職業病に悩まされることになるのです。
で、冒頭の痔に関する質問について。私が入社してから新人扱いされないぐらいの年数が経ったので、痔になる覚悟はできていました。でも、いまだに痔にはなっていません。まわりの先輩方からも「いやぁ、痔ができちゃってなぁ……」という切ない声は聞こえてきません。
人に言うのが恥ずかしい病気なので(一般的には)、口外していない可能性もありますが、重度ともなれば運転やシフトに影響が出ますしやんわりと話が伝わるでしょう。
ということで、痔になるかという質問に対する答えは個人的にはあまりないと結論付けられます。が、実は私、他の部位の職業病に悩まされています。
■長時間の座り仕事だけに肩と腰にきます……
路線バスの運転は座り仕事。オフィスでデスクワークしている時と同じ姿勢です。つまり、肩にきます。
若輩者の私はよく職場で先輩から肩揉みを頼まれますが、「パッドでも入れているんですか?」と思うほど肩がパッキンパッキンの先輩が多いのは本当の話。肩こりは他の部位にも影響を与えるようで、私の場合は頭痛も併発します。
そして肩こりと同じく悩みの種なのが腰痛。原因はペダル操作にあると考えています。特にMT車では右足と同じくらい左足も動かすので、腰への負担も相当です。
原因のひとつがシートにあります。運転席のシートにはある程度のクッション性がありますが、乗用車のような人間工学的なハイテク設計が取り入れられておらず、ホールド性などの機能は皆無。
そのためカーブを走行するたびに無意識に力が入ります。しかも、原因はシートだけではなく、バス運転手である私自身にもありました。
■上半身を真っ直ぐ、背もたれに密着、これで解決!
実は私、大変な猫背でした。猫背ということは頭が垂れ下がっている状態。それにバスの上下運動などが加わり、知らず知らずのうちに慢性的な肩こりを引き起こしていたのです。これが職業病の原因です。
まわりの運転手も肩こりに悩む人は猫背です。解決方法は、ズバリ胸を張ること。私は普段から胸をピーンと張るようにしました。
最初のうちは大変な負担で、ひどい筋肉痛になります。しかし、1ヶ月もすれば筋肉がつき始め、姿勢が自然に矯正されます。すると肩への負担が減り、肩こりもなくなりました。
腰痛は肩こりよりも簡単。椅子の座面と背面の折れ目にお尻を完全密着させれば良いのです。お尻を密着させれば、力を余すことなくペダルに伝えられます。本当に軽くペダルを踏めるようになるので、ぜひ試してみてください。
このようにバス運転手の職業病である肩こりと腰痛は、身体の使い方ひとつで必ず防げますし、治すこともできます。
ただ、シートはモノなので直すことはできません。バスメーカーのみなさんに、肩こりや腰痛などを防げるシートの開発と導入をお願いしたいですね。バスの価格が数千万円するのに対し、疲れにくいと言われるレカロのセミバケットタイプで20万円ほど。
長距離トラックなどには豪華なエアシートが付いていますし、バス全体から見れば決して高いコストではありませんから……。
投稿 バス運転手が「痔」になりやすいってマジ? 乗務してわかったバス運転手の意外な職業病と対策 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。