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 世界中がコロナ禍に入ってすでに2年半が経過。日本も数度の大流行期を乗り越えつつ、withコロナといった新習慣も定着してきている。その新習慣のひとつがリモートワークだろう。

 そんな潮流をホンダがGW休暇明けから廃止したということが話題になった。どちらかというと枠にとらわれないイメージのあるホンダに何が起こったのか?ホンダOBの視点から読み解く。

文/藤原 裕写真/ホンダ、Adobestock、ベストカーweb編集部

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■リモートワークしながらそれを改良してこそホンダである

 このニュースを聞いて、私は愕然とした。ホンダの三部敏宏社長が昨年末、開発の現場に来たところ、出社メンバーが少なかったのでGW明けからリモートワーク主体の仕事を止め、原則的に毎日出社することにしたからだ。

社長の一声でリモートワーク中止!? 事実なら前時代的なイメージだが、例えば社内的なアンケートなどが実施され、従業員の意思として中止となったのであれば、その意思は尊重されるべきだ(Feodora@Adobestock)

 こんな社長のひと言で、働き方を一変するとは、呆れて物が言えないくらいである。そこまで、社長の周りにヒラメ(=上しか見ない)しかいなくなったのか?

 コロナ禍の影響もあり、世の中の働き方が変化してリモートワークが活用され、職場での仕事が変化していった。もちろん、リモートワークそのものに対する是非はあると思うが、それを改良して新しい働き方を進めていってこそ、世界をリードしていくホンダであると思う。

■リモートワークは確実に浸透し、働き方にも変革が進行中!

 私が考えるに、リモートワークのいい面は通勤エネルギーの削減と集中力アップ、自分の時間をコントロールしやすいといったところだろうか。逆に、リモートワークの悪い面は共同作業時におけるお互いのコミュニケーション不足、顔を突き合わせた場での緊張感や刺激不足、後輩や若手メンバーへの指導不足、優秀な人材が入社しなくなる恐れがある、などだ。

 ただ、このような悪い面は運営で改良できるレベルである。

 今や世の中はコロナ禍以降、リモートワークを前提にしての働き方が進んでいる。このような変化のなかで、共働きの夫婦も子供たちの世話との両立が可能となっている。また、東京からの移住組が増加し、首都圏周辺都市に移住してきている。

 私が昨年まで住んでいた神奈川の茅ヶ崎市でも東京からの移住家族が増え、サーフィン人口も増えてきた。今、住んでいる栃木県の那須地域でもリモートワークをして、たまに東京に出社する若手家族がいる。皆さん、仕事と私生活の両立に満足して笑顔が絶えない様子である。

■リモートワークと三現主義はまったく相容れないものなのか?

 もちろん、すべての仕事がリモートワークで成り立つ訳ではないが、リモートワークでも可能な業務は極力、実施していくべきものだと思う。

三現主義というか若干バブリー感もあるが、初代レジェンドの開発の際、技術者は真の高級を知るために各国の高級ホテルに宿泊したとか、本木目にこだわり当時提携先のローバーの技術者を常駐させて本木目の扱いを徹底的に学んだなどの逸話がある

 ホンダでは、昔から「三現主義」と言って、「現場」「現物」「現実」を大切にして物事を進め、判断していくフィロソフィーがある。私も現役時代、新車開発においてこのフィロソフィーを大切に運営してきた。

 当時は、PC普及によって電子メールが一般化してきた頃だったので、この三現主義にプラスして、電子メールや携帯電話を活用する「新三現主義」を唱え、開発チームを運営してきた。

 例えば、新車開発でさまざまな領域にわたって企画検討して議論の末、試作品や試作車での効果確認を現物で実施し、お客様の現場を見て、お客様視点で判断してきた。このような三現主義は、リモートワークを進めても実施すべきと思う。

 コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によって経済が冷え込んでいる現在、物価上昇と円安が進行している。日本の将来はどうなるのか、甚だ不安である。特に、日本の自動車産業の将来が見えない。今や、日本の経済にとって自動車産業は基盤となり、国際収支上での黒字化と多くの従業員を支えている。

■EV一辺倒でない日本のクルマ界。全方位的な開発で世界をリードできるか? 今が正念場だ

 その意味もあって、トヨタの豊田章男社長は自工会会長として自動車産業関係者550万人の将来を危惧し、自動車のEV化だけではなく、水素エンジンの模索も言っているのだと思う。ただし、水素エンジンは従来のエンジン部品を多用できてカーボンニュートラルになっても、排気ガスのNOxに対しては触媒対応しかないのである。豊田章男さんの気持ちはわかる気はするが、ここはハイブリッド車、EV、燃料電池車(FCV)へ移行するしかないと思う。

 ハイブリッド車、燃料電池車に関する技術力は世界的に見ても、トヨタとホンダが群を抜いている。その技術力といい商品をすでに持っているのに、欧米諸国はハイブリッド車や燃料電池車を諦めてEVに行こうとしている。それは、日本の技術力に追いつけないと判断して、技術的に安易なEVに進んでいっているのだと思う。ある意味では、政治力の負けである。

■日本の自動車産業はこれからも基幹産業として生き残れるのか?今は国のサポートも期待したい

自動車業界は100年に一度の転換期。さらにコロナ禍という困難にも直面している。そんななか出てきたこのキャッチフレーズにホンダの変わらぬチャレンジ魂を感じるし、これからに大いに期待!

 日本の将来を考えると、自動車産業が生き延びて、日本経済を引っ張っていくことが重要である。そのためにはまず、内需を増大させるための施策が重要である。内需を増やすためには、国民家族が旅行しやすく、クルマを所有しやすくすることである。欧米諸国に比較して、日本はクルマに関係する費用が高すぎる。

 そのために考えた私からの提言は、次の3つである。

 ●第1に高速道路の無料化、または利用料1000円の均一化

 ●第2に自動車関連税、特にガソリン税の引き下げ

 ●第3にGo to トラベルキャンペーンのさらなる促進

 リモートワークの話から外れてしまったが、日本の自動車産業が生き残るかどうかが、日本経済のカギとなる。そのためにもホンダが率先して、新しい時代の働き方を目指し、将来の日本経済をリードしていって欲しいと願っている。

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