クルマには「前・後進する」「曲がる」「止まる」のための基本的な装備以外にもさまざまな機能や装備がある。ヘッドライトやウインカー、ワイパーなどの装備も乗用車には必須だが、なかには「こんなモノいらない」と言われてしまった機能や装備もある。
今回は、時代の流れなどによって不要判定されてしまった、あるいはされてしまいそうな装備をピックアップして見ていこう。果たして「いらない子」の復権はあるのか?
文/長谷川 敦、写真/マツダ、トヨタ、日産、ポルシェ、ホンダ、スバル、写真AC
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そこまで気を使わないで! 「リバース連動ミラー」
駐車場やガレージ入れる時をはじめ、クルマをバックさせる機会は頻繁にある。そんなバック走行では、自分が振り返ると同時にサイド&室内ミラーも活用する。だが、リバースギヤに入ると、自動的にサイドミラーの角度が変化する機能があるのをご存じだろうか?
一般的にリバース連動ミラーと呼ばれるこの機能は、ミラーが下を向くことによって、駐車場の枠線などを見やすくするというもの。これは便利な機能だと思うかもしれないが、実はこのリバース連動ミラー、必ずしもメリットばかりではない。
そもそもミラーでどこを確認するのかはその時の運転シチュエーションによって違ってくるし、常に下を見たいわけではない。もちろん、コインパーキングでタイヤロックの位置を確認したい時にサイドミラーが下を向いていれば便利だが、それは自身で電動ミラーの角度を調整すれば済むこと。
また、これは意外に多いトラブルだが、リバースギヤからドライブにギヤを戻しても、ミラーの角度が戻らなかったり、あるいはあらぬ方向に向いてしまったりして一般道での走行に支障をきたすこともある。つまり、リバース連動ミラーは少々過保護気味の機能とも言える。
実際には、リバース連動ミラーを便利に思っている人もいるとは思うが、リバース連動ミラーの誤動作よってヒヤッとしてしまった経験もある筆者からすれば、やはりなくてもよい機能だとは感じる。もちろん、不要なら機能をオフにしておけばいいだけの話ではあるが。
喫煙習慣の変化とともに消えてしまうか? 「灰皿&シガーライター」
終日禁煙の飲食店も増え、公共交通機関もほぼすべて禁煙になったことですっかり肩身が狭くなってしまった喫煙。20歳以上であればタバコを吸うこと自体に問題はなく、ましてや自分のクルマの中ではいつでも自由に吸いたい。そう考えている人も多いだろうが、今やそれも簡単な話ではなくなっている?
日本人の喫煙率が最も高かったのは1955~1973年頃の高度経済成長時代と言われていて、ピークだった昭和41年(1966年)が男性で83.7%と、今考えると信じられないほど喫煙者の数が多かった。ほとんどのクルマに灰皿とタバコに火をつけるライターが装備されていたのも、この喫煙者数を考えると納得だ。
しかし、時代が進むにつれて喫煙習慣のある人は減り、さらに喫煙できるエリアも年々減っている。そうなるとクルマに装備されている灰皿は多くの人にとって不要なものになってしまう。
こうして現在は灰皿を標準装備するクルマはほとんどなくなり、車内でタバコを吸いたい人は、オプション設定の灰皿を装着するか、カップホルダーを利用する“後付け”の灰皿を購入しなくてはならない。
シガーライターの場合は少々事情が異なっている。シガーライターソケットは、もちろんライターの保持と発熱させるための装備だったが、同時に電源の供給口としても利用できる。本来の需要が減少していても、スマホやドライブレコーダーの電源に使われるケースは多い。
だが、どうせ電源として使うなら専用のプラグにしてしまったほうが便利なのも事実。実際に最初からUSB端子やAC100V端子を装備したクルマもどんどん増えていて、シガーライター、そしてシガーライターソケットもいずれはなくなってしまう可能性が高いだろう。
視認性は良くても外圧に負けた? 「フェンダーミラー」
現在、乗用車の車外ミラーはドアの先端に装着されるドアミラーが主流となっているが、以前の我が国ではフェンダー上に取り付けられたフェンダーミラーのみが認可されていた。
フェンダーミラーには、目線の移動が少ないため後方の確認がしやすい、ミラーがボディ幅に収まるので狭い道を走る際に有利になる、ドアミラーよりも空気抵抗が少なくなるなどのメリットがある。
デメリットとしては、ミラーが遠くなってしまい視界内の面積が狭くなる。もし歩行者と接触してしまった場合にダメージが大きくなるなどが挙げられる。そして、デザイン上の制約が増え、ドアミラー車に比べるとクルマ全体が野暮ったく見えてしまうという難点もあった。
そもそもフェンダーミラーが義務付けられていたのは日本のみで、海外では以前よりドアミラーがポピュラーだった。これが輸入車に対する障壁になってしまうことが指摘され、1970年代には輸入車においてドアミラーが解禁となり、国産車も1983年にドアミラー装着がOKとなった。
先に挙げた安全上の理由と、そしてスタイルが良くなることから国産車でもドアミラーが一気に普及し、現在でもフェンダーミラーを標準装備する国産車はトヨタのJPNタクシーのみになっている。これはタクシー運転手が後方確認の際に首まで動かして、お客さんに不要なプレッシャーを与えてしまわないためとも言われている。
メリットも多かったフェンダーミラーだが、現在ではほぼ「いらない子」扱いされている。
日本の夏では過酷さがアップ!? 「サンルーフ」
太陽の光はすべての生物に恵みをもたらす。運転中にそんな陽射しを感じられるのが、ルーフに設けられたウィンドウ、通称サンルーフだ。
開放的な気分に浸ることができ、換気にも役立つサンルーフだが、陽射しの強い真夏には車内温度が上がりすぎてしまうためシールドする必要があり、重さのあるガラスを使用することから、通常ルーフのクルマよりも車重が増えてしまうというデメリットもある。
サンルーフを不要と言いきるには若干問題がありそうだが、喫煙率の低下やデートカーの需要減少によって一時期サンルーフ装着車の数が少なくなっていったのは事実だ。
とはいえ、新型コロナウイルスの流行によって以前よりも換気が重要視されるようになった昨今は、サンルーフに再び注目が集まるようになっているともいう。案外サンルーフの人気再興はあるのかもしれない。
燃費向上効果は微々たるものだった? 「アイドリングストップ」
信号待ちなどで停車した際に自動的にエンジンを停止させ、アクセルを踏み込むと再びエンジンが始動して発進できるのがアイドリングストップ機能。
クルマの燃費アップが期待できるこのアイドリングストップは、市街地走行が主となるユーザーにガソリン代節約という恩恵をもたらした。と言ってもそこまで大きな違いではなく、むしろこれから説明するデメリットによって相殺されてしまう可能性もある。
頻繁にエンジンのオン・オフを繰り返すアイドリングストップでは、セルモーターを回す12Vバッテリーに大きな負担がかかり、結果的にバッテリー寿命を縮める危険性がある。さらにエンジン停止中にはエアコンも停止してしまうので、夏場に長めの信号待ちをしたり、渋滞にハマっていたりすると車内温度が一気に上昇し、エンジン始動後は車内を冷やすために余計にバッテリー&エンジンに負担をかけてしまう。
つまり、アイドリングストップによってガソリン代を節約できても、バッテリーの交換サイクルが上がることなどにより、最終的にはお得にならないケースも多い。
こうした問題を避けることを目的に、アイドリングストップ機能作動中でもエアコン始動時にはエンジンをストップさせない機能が搭載されたモデルもある。だが、これでは本末転倒と言わざるを得ない。
このような理由から、近年になってアイドリングストップのクルマは減りつつある。ハイブリッドモデルでは停車時にエンジンを止めているが、発進は電動モーターで行い、エンジン始動用電源も強力かつ容量の大きい走行用バッテリーを利用するので負担は少ない。
思っていたよりもエコではなかったアイドリングストップ。この先、生き残るにはさらなる改良が必要か?
海外基準に合わせて消滅? 「速度警告音」
高速道路を走っていると、いつの間にかクルマから流れてくる「キンコン」という音。一定以上の年代の読者には聞き覚えのあるこの速度警告音は、運転手に速度超過を知らせる機能としてすべての国産車に装備されていた。
この「すべての国産車」というのがポイントで、実は速度警告音機能が搭載されていたのは日本製のクルマのみで、外国製の乗用車にこうした機能はなかった。
速度超過=道路交通法違反なのは間違いなく、それを教えてくれる機能は親切とも思えるが、速度規定が国によって異なるのも事実であり、日本から海外へ輸出されるクルマにも搭載されていた速度警告音機能は、外国のユーザーにとってありがた迷惑以外の何ものでもなかった。
さらに一定のリズムで鳴り続けるキンコン音は、運転者の眠気を誘発してしまうという危険性も指摘されていた。もちろん、この音を聞きたくなければ速度を下げればいいのだが、実際はなかなかそういうワケにもいかなかった。
このような指摘と自社製品を海外に売りたい自動車メーカーの要望を受けて、速度警告音機能搭載の義務付けは1986年に撤廃された。
撤廃から30年以上が経過した現在、このキンコン音を知っている人は問答無用でオバサン&オジサン判定されてしまいそうだが、少々懐かしさも感じるのは、やっぱり筆者もオジサンだからだろうか?
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投稿 自然淘汰は必然!? こんなのいらないよね~と言われてしまった悲しき装備たち は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。