プジョーe-リフター ヴァンデラーは、普段使い可能な本格キャンパー。しかし、長時間の移動にはバッテリー容量が足らない。
プジョーは、新しいキャンピングカー、「e-リフター ヴァンデラー(e-Rifter Vanderer)」を発表した。これは「プジョー リフターL2」をベースとしたモデルだ。新型「ヴァンデラー」の特徴は、平日は普段使いのクルマとして、週末は複雑な装備を施したキャンピングカーにわずかな手順で変身させることができることだ。
一石二鳥だ。電動「リフター」はプジョーとヴァンデラーの共同開発であることから、「e-リフター ヴァンデラー」と名づけられた。
装備: キャンプ用品は様々なものが揃っている
ビジュアル面では、E-キャンパーは、「e-リフター L2」のイメージを色濃く残している。もちろん、ポップアップルーフと、助手席側に装着されるオプションのオーニングを除けばだが。「e-リフター ヴァンデラー」の大切な部分は、もちろん装備、つまりキャンピングカーを構成するすべてである。
拡張可能な簡易キッチンをはじめ、車内での調理は、ガスとIH(クッキングヒーター=電気コンロ)」で行うことができる。その隣にはシンクがあり、タンクには真水と汚水がそれぞれ12リットルずつ入る)。また、フロントシートの間には、16リットルの冷凍冷蔵庫を装備している。
「e-リフター ヴァンデラー」は、最大5名まで乗車可能だ。しかし、全員を収容するためには、夜間は室内を多少改造しなければならない。そのために、キッチンを下げると広い就寝スペースができ、ポップアップルーフをたたむことができる。そこには2人分のスペースが生じる。
ポップアップルーフの前面を開放することで、ベッドからの眺めも楽しむことができるようになっている。また、週末にキャンプに行かなくても、家具は少しの工具で、2人で簡単に取り外すことができるようになっている。
技術: 統合3Dナビゲーション
慣れない土地でのキャンプでは特に重要? まさに、ナビ! もちろん、「e-リフター」にも搭載されている。8インチのディスプレイには、ボイスコントロールを含む3Dナビゲーションが表示される。
また、「ミラースクリーン」機能により、携帯電話のディスプレイからインフォテインメントシステムの画面上に一部のアプリを再生することができる。また、電動キャンピングカーにはApple CarplayとAndroid Autoを搭載している。
短い休暇(あるいは長い旅)の快適性を高めるために、「e-リフター ヴァンデラー」は、とりわけ、パーキングアシスタント、フロントとリアのパーキングエイド、180度の視界を持つリバースカメラ、キーレス開閉システム、フロントシートヒーターなども装備している。
技術データ: 改良の余地がある航続距離
「e-リフター ヴァンデラー」には、50kWhの容量を持つリチウムイオン電池が搭載されている。これにより、航続距離は274kmとなる。特にキャンピングカーでは、例えばハンブルクからヴェネチアまで行こうとすると、少なくとも4回はフル充電しなければならないので、この点だけは改善の余地がある。
しかし、電源の選択は非常に多岐にわたる。キャンピングカーの充電は、耐衝撃プラグ、増幅ソケット、ウォールボックス、急速充電ステーションを経由して家庭で行うことができるようになっている。急速充電器では、「e-リフター ヴァンデラー」は30分で80%の充電レベルに到達する。
価格: 費用についてはまだ何もわかっていない
プジョーは、「e-リフター ヴァンデラー」の価格についてまだコメントしていない。ノーマルの「e-リフター」は41,240ユーロ(約580万円)からとなっている。「e-リフター ヴァンデラー」のホームページには、「プジョー リフターL2」の改造車も掲載されているが、ソーラーパネル、ポップアップルーフ、ベッド付きで最低47,990ユーロ(約680万円)となっている。電気駆動の場合は、8,000ユーロ(約115万円)の追加となる。
したがって、「e-リフター ヴァンデラー」のベース価格は6万~6万5千ユーロ(約850~925万円)が現実的だと思われる。また、この電動キャンピングカーの受注開始時期も不明だ。
【ABJのコメント】
「プジョー リフター」、残念ながら「シトロエン ベルランゴ」や「ルノー カングー」に隠れて、日本ではやや目立たない存在ではあるが、端正なスタイリングとセンスの良い内装で魅了的な一台である。今回のキャンピングモデルである「ヴァンデラー」も全体的な造りや装備など、かなり良い感じで、こういう普通に使えながらもキャンパーとして使えるセンスの良いモデル、なかなかありそうでないのが現実である。
たしかに航続距離の短さは残念ではあるが、ハンブルクからヴェネチア、ということは1,000kmほども走ってキャンプに行くような需要が日本にはないから、住んでいる場所の近くのキャンプ場、例えば関東であれば、山梨や群馬、あるいは栃木のキャンプ場までなら、片道、航続距離274kmで、まあギリギリオーケーとも言えなくもない。あとは、行った先のキャンプ場に、ちゃんと充電設備さえ完備されていればだいじょうぶな話かな、とは思う。それでも、電動モデルで、ざっと900万円という価格だけが悩みの種かもしれない・・・。(KO)
Text: Kim-Sarah Biehl
加筆: 大林晃平
Photo: Stellantis N.V.