コペンがこのほど誕生から20周年を迎え、それを記念した限定モデルが発表された。ご存じの通り即日完売となり、人気っぷりは今なお健在。
軽スポーツは不遇の時代を迎えており、S660やアルトワークスといったライバル勢は軒並み市場から姿をけしてしまっている状況だ。にもかかわらずコペンはまだ終わらない! と宣言をし、ファンのみならずクルマ好きから注目されているのだった。今回はS660オーナーがガチで羨むコペンの魅力と新型モデルを徹底予想。ライバル無き今、コペンは今後どうなるのか!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWEB編集部
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■もはや奇跡か!? 軽スポーツ不遇の今、コペンはめでたく20周年
2002年6月19日に発売されたダイハツの軽オープンスポーツカーのコペンは、先日めでたく20周年を迎えた。ちなみに発表と同時に完売となり、今なお根強いファンが多いモデルでもある。
個人的には「えっ、もう20年!?」というのが正直な感想であるが、とにもかくにも軽自動車という日本独自の規格で生まれたニッチなオープンカーが(初代は一部の国に輸出されていたが)、2世代20年にも渡って愛され続けてきたというのは、率直に言ってとても素晴らしいことだと言えるだろう。
そんなコペンに思いをはせている筆者ではあるが、実はコペンと同じく軽のオープンスポーツカーであるホンダ S660を所有しており、コペンは常に気になる存在だったのだ。そこで今回は、S660オーナー目線でコペンについて考えてみたいと思う。
■初代モデルがモチーフ! コペンクーペほどの爆発力はないがさすがのデキ
先日発表されたコペン20周年を記念した特別仕様車「20th Anniversary Edition」は、初代コペンをモチーフとしている。初代を彷彿とさせる丸型ヘッドライトを採用した「セロ」をベースに、2代目コペンとしては初の本革シートを採用した点が最大の特徴。
さすがに2018年に登場した「クーペ」ほどのインパクトはないものの、ダイハツがコペンの歴史を尊重していることが良く分かる特別仕様車と言えるだろう。
一方のS660は、特別仕様車は定期的にリリースされていたものの、周年記念車は当然ながらナシ。そもそも周年記念車が出るほど長い歴史がないのでやむを得ないところだが、そのくらい長く作っていて欲しかったな……というのが正直な感想である。
■永久に不滅!? 新型コペンはパーツの種類で勝負を!
コペンについては20周年記念車を発表するタイミングで継続生産することをしっかりと発表し、継続生産車であっても衝突被害軽減ブレーキの装着が義務付けられる2025年12月に向けて対策を検討中という心強い言葉も聞くことができた。つまり、ダイハツはコペンの生産継続に意欲的に取り組んでいるというワケであり、この言葉だけでもコペンオーナーは喜ばしい気持ちになったに違いない。
もし3代目コペンが登場するとなれば、当然電動オープントップは継続採用となるだろうが、ドレスフォーメーションも継続設定してもらいたいところ。残念ながら現行型のドレスフォーメーションは制約も多くコストも大きいためにそこまで普及していないようだが、もっと小さな部品から変更できるようにして、アフターパーツメーカーも参入できるようにしてくれれば夢も広がりそうだ。
パワートレインについては、コスト的なところも考えるとFFレイアウトは不変となるだろうが、2005年の東京モーターショーに参考出品された「コペンZZ」のように、軽自動車の枠を超えたグラマラスなボディをまとった普通車バージョンが存在しても面白いのではないだろうか。
このように次期型の妄想ができるのも継続生産がなされているからこそ、ということになるが、もちろんS660のように、すっぱりと販売を終了するという判断もビジネス上では必要なものであることは重々承知している。
しかし、せっかく多くのコアなファンを獲得した車種だけに、未来につなげることができたら……と思ってしまうのはオーナーだからだろうか。またダイハツではコペンオーナー同士が交流できる場を提供し続けており、今回の20周年記念車をお披露目した「COPEN LOCAL BASE KAMAKURA」はその最たるもの。
残念ながら6月26日をもって閉店となってしまうが、今後はコペンファクトリーがある大阪府池田市ダイハツ町に場所を移して再開する予定があるということで、これもS660オーナーとしてはうらやましいポイントとなっている。
■“スポーツカー”としてはS660の方が上! 使い勝手はコペンに軍配
続いては軽“スポーツカー”としての資質について考えてみたい。ここだけを考えるのであれば、他の軽自動車と同様に前輪駆動レイアウトを持ち、初代の4気筒エンジンから3気筒エンジンへと変更されてしまったコペンよりも、ミッドシップレイアウトを持ち、軽自動車らしからぬサブフレームなどを採用したS660の方が、単にスポーツカーとしては上と言えるだろう。
64PSとはいえ、リア駆動かつミッドシップレイアウトの恩恵はタウンスピードのハンドリングでも体感でき、そこまで速度を上げなくてもスポーツカーらしい走りの感覚を味わうことができるのはS660の美点である。
しかし、あまりにも“スポーツカー”し過ぎている点がS660の欠点でもあり、例えば全く荷物を載せることを考えていないスペースレイアウトであったり、脱着や格納が手間なロールトップ、そしてオジサンには辛い体勢を強いられる高いサイドシルをまたいでの乗り降りなど、本格的である故にシンドイ部分もあるというのが正直なところなのだ。
その点コペンは着座位置こそ一般的な乗用車に比べると低いものの、乗り降りに苦労するほどのものではなく、トランクスペースもルーフを閉めた状態であれば、ゴルフバッグや旅行カバンも入るほどのスペースを備えている。
またボタン操作でルーフの開閉ができる電動オープントップも、気軽にオープンエアモータリングを楽しむことができる要素のひとつとなっており、S660オーナーからしてみるとうらやましい装備のひとつだ。
そう考えると、S660はどちらかというとストイックに走りを楽しみたい人向けの車両であり、セカンドカー向け。一方のコペンは日常の中でちょっと非日常も味わってみたいという人向けの車両で、ファーストカーとしても使えるという感じで、同じ軽オープンスポーツカーであっても全く対極にいる車両と言えるのかもしれない。
ということで、どちらが優れた車両かというのは人それぞれ感じ方が違うためにジャッジするのは難しいところだが、クルマに対するメーカーの考え方はかなり違いがあるということをまざまざと見せつけられた形となってしまった。
すでにS660は生産が終了してしまっているので、これから新たな動きが起こる可能性は低いと思うが、せめて今のオーナーが末永く楽しむことができる環境づくりはお願いしたいと、一オーナーとして切に願いたい。
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