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 2022年F1第10戦イギリスGPでは、セルジオ・ペレスが2位、マックス・フェルスタッペンが7位という結果に終わり、レッドブルの連勝は6で止まった。ドライバーズ選手権で首位に立つフェルスタッペンはマシントラブルにより優勝争いから脱落したものの、シルバーストンを訪れていた元ホンダの山本雅史氏は「チャンピオンシップのダメージは最小限にとどめた」と振り返る。一方アルファタウリ勢は、角田裕毅とピエール・ガスリーが接触。角田は14位、ガスリーはリタイアとなり、山本氏は角田のドライビングについて「カナダGP以上に大きいミス」と指摘した。

 またシルバーストンでは、FIA F2に参戦する岩佐歩夢(ダムス)が表彰台を獲得。悪い流れを断ち切っての表彰台獲得を山本氏も喜び、レッドブルのヘルムート・マルコも評価したと明かした。

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──レッドブルの7連勝とはなりませんでした。マックス・フェルスタッペンに関しては、1回目のスタートでカルロス・サインツ(フェラーリ)を抜いたものの赤旗になって、スタートがやり直しとなり、そこからは不運もあり流れがよくありませんでした。ただ、ここはフェラーリが強いと思われていたなか、ドライのフリー走行3回目でトップタイムを記録しましたね。

山本雅史氏(以下、山本氏):マックスはアンラッキーでしたね。不運だったけど、1回目のスタートでトップに立つあたりはさすがでした。またフリー走行3回目で0.4秒の差をつけたトップタイムも立派でした。レッドブルが今回シルバーストンに持ち込んだアップデートのパフォーマンスがすごく上がっていて、昨年と違ってセクター1も速かった。トータルのバランスがすごく向上しているのはフリー走行3回目で見えていました。

 赤旗後の再開されたレースでもトップに立った後、クルマがおかしいって言って、最初はタイヤがパンクしたと思ってピットインしたけど、タイヤじゃなくて、フロアがデブリで破壊されてダウンフォースを失っていたようです。しかし、チェコ(セルジオ・ペレス)が2位まで挽回したので総じて言えば、いい方向には来ていると思います。マックスも7位でゴールして、チャンピオンシップのダメージ的にいうと、最小限にとどめたと思います。

──レース終盤のミック・シューマッハー(ハース)とのバトルは手に汗握りました。

山本氏:昨年のルイス(・ハミルトン/メルセデス)とのチャンピオンシップ争いで1点の重みを知るが故のブロックでした。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第10戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&ミック・シューマッハー(ハース)

──そのフェルスタッペンと今年チャンピオンシップ争いを演じているシャルル・ルクレール(フェラーリ)が今回も戦略面で不運な結果になりました。レース終盤にセーフティカーが出たとき、上位陣でルクレールだけがステイアウトしましたが……。

山本氏:あのときルクレールはトップを走行していたので、フェラーリとしては難しい判断だったと思います。もしルクレールがピットインすれば、後続はステイアウトしたかもしれないし、そうなってレースが再開された場合、コース上で確実に抜ける保証もなかった。だから、あの判断は単純にミスとは言えません。そのなかで4位に踏みとどまったルクレールもよく頑張ったと思います。

──アルファタウリの2台は赤旗再スタートの後、前にいた2台がリタイアして、早々にポイント圏内でレースを進めていましたが、終わってみればポイント獲得はなりませんでした。角田裕毅選手のピエール・ガスリーとの接触については?

山本氏:カナダGP以上に大きいミスだと思います。自分のポイントだけでなく、あの接触によってリヤウイングにダメージを負ってガスリーがリタイア。チームメイトのポイント獲得もぶち壊してしまったわけですから。

──レース後、角田選手は「セッティングは自分がドライ寄りで、ガスリーはウエット寄りで、今日はドライになったので自分のほうが速かったのに」と言っていました。

山本氏:あそこは抜くポイントじゃない。抜くんだったら、DRSを使って抜ける場所がほかにもあるじゃないですか。あそこで行く必要はないです。

2022年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)

──FIA F2では岩佐歩夢(ダムス)選手が土曜日のレース1で表彰台を獲得したものの、今日はピットストップトラブルで残念な結果となってしまいました。まず昨日の表彰台について聞かせてください。

山本氏:レース1の表彰台は非常によく頑張りました。レース終盤、かなり攻めていましたが、ちょっとタイヤを残してしまったようで、本人も「もう少し早めにアタックし始めてもよかった」と悔しがっていましたが、ここまでの悪い流れを断ち切ったという意味で、いい週末だったと思っています。ファステストも獲ったし、(ヘルムート・)マルコさんも褒めていました。

 レース2もマルコさんと一緒に見ていましたが、スタートが抜群によかった。結果的にタイヤ交換でメカニックのミスで順位を落としてしまいました。岩佐君と同時にピットインした(リアム・)ローソンが3位だったので、あのまま行っていれば、悪くても4位。ローソンよりペースがよかったから表彰台も狙えたのではないでしょうか。マルコさんは「ピットに入るのが少し早かったかもしれない」と、チームの戦略に疑問を呈していました。

──スペインのフィーチャーレースからアゼルバイジャンまでの悪い流れを断ち切るために、今回山本さんはレース前に岩佐選手にアドバイスしたとおっしゃっていました。結果的にアドバイスが活きましたね。

山本氏:モータースポーツに限らず、スポーツというのは苦境に陥ったとき、いかにそれを乗り越えるかが重要になるわけですが、そのとき問われるのが精神的な面での強さです。この世界で次のステップに上がっていくには、それが大切になってくるので、私がレッドブルと契約してる立場から、少しでも力になれればと思っていろいろ話をしてます。イギリスで切り返してくれてよかったです。

2022FIA F2第7戦シルバーストン レース1で2位を獲得した岩佐歩夢(ダムス)
2022FIA F2第7戦シルバーストン レース1で2位を獲得した岩佐歩夢(ダムス)

──F1に話が戻りますが、今回はカルロス・サインツ(フェラーリ)が初優勝、ハミルトンが地元で表彰台を獲得、そしてシューマッハーが初入賞するなど、見どころが満載でした。

山本氏:初優勝の人がいたり、メルセデスの復調もあったり、チェコの走りも含めてレッドブルの調子のよさも見れたので、そういう意味でいいレースだったんじゃないかなと思います。残り10ラップは楽しかったですね。

 メルセデスが速くなって3強になりそうですし、この後、夏休み前までの残りの3戦も楽しみです。シルバーストンはフェラーリが速くて厳しいかなと思っていましたが、レッドブルもアップデートがすごくよかったと思うので、いい方向に向かっています。マックスに関しては残念なレース結果となりましたが、今後も戦えるという手応えをつかんだという意味で、今週末はよかったと思います。

【F1インタビュー】
シルバーストン・サーキットを訪れた山本雅史氏