前日に北欧フィンランドのユバスキュラで開幕した2022年WRC世界ラリー選手権第8戦『ラリー・フィンランド』は8月5日、競技2日目のSS2~10が行われ、ヒョンデ・シェル・モビスWRTのオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が順位をひとつ上げて総合首位に立った。地元在住の日本人WRCドライバー、勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合6番手につけている。
第7戦エストニアと同様に、“超高速”グラベル(未舗装路)イベントとして知られる伝統のラリーにおける本格的な戦いが5日金曜からスタートした。デイ2のオープニングステージとなったSS2を制したタナクは、この段階で前日の首位ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)を逆転し総合トップに浮上した。
その後、SS4とSS7でステージ優勝を果たしたタナクは、SS2終了時点で総合2番手に順位を上げてきたエサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1)に最大8.3秒のリードを築く。
しかし、地元フィンランド出身のラッピも、朝のSS3をはじめ計4つのステージでベストタイムをマーク。1日の終盤に設定されたSS8からSS10にかけては3連続ステージ優勝を飾り、ラリー・フィンランドを過去2回制しているエストニア人にプレッシャーをかけた。
ベストタイム回数こそライバルを下回ったタナクだったが、この日は全ステージでトップ3につける安定感が光った。このため最終的には3.8秒差でトップの座を守り抜き、競技3日目に駒を進めている。
「予想以上の結果だ。このような戦いに加われるとは思っていなかったので、この位置で1日を終えられたことは非常にポジティブだ」と語ったタナク。
「他のドライバーはペースを上げるのが遅かったが、トヨタ勢は徐々にあるべき姿に近づいているように感じる」
接近戦を演じたふたりの後方では、ラッピのチームメイトであるエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が続いた。SS2終了時に総合5番手からふたつポジションを上げた彼は、デイ2の全ステージをトップ5タイムで通過し、最終的に首位と19.3秒差の総合3番手につけている。
そのエバンスから1.7秒遅れの総合4番手に入ったのは、今季すでに5勝をマークしているカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)だ。21歳のフィンランド人は、いつものように“路面の掃除役”を担うことになりトラクションの確保に苦労した。また、何度か危ないシーンも見られたが、出走順が好転するデイ3に向けて好位置を確保してみせた。
■ソルベルグのラリー・フィンランドは早々に終了
クレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1)は、トップと32.5秒差の総合5番手でMスポーツ・フォードWRT陣営の最上位につけた。3.9秒後方にはトヨタGRヤリス・ラリー1を駆る勝田が迫るが、その後方のティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)とは約15秒のギャップがある。
総合8番手はMスポーツのピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)、僚友ガス・グリーンスミス(フォード・プーマ・ラリー1)が続き、総合10番手にはWRC2クラス首位のテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー2)が入った。
母国フィンランドでラリー1デビューを果たしたヤリ・フッツネン(フォード・プーマ・ラリー1)は、SS7まで総合8番手につけていた。しかし、無情にもマシントラブルが発生してしまう。彼は燃圧のトラブルによって一時走行できない状態となり、順位を総合21番手まで下げることとなってしまった。
また、チームメイトのアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)はSS3でのアクシデントでステアリングアームを損傷。幸い走行を続けることはできたが、後にパワーステアリングが効かなくなっため大幅にタイムを失い、最終的に総合36番手となっている。なお、彼にとって幸運だったのは、この日は2度のサービスが設定されていたため終盤には問題が解決されたことと、パワステなしで臨むはずだったデイ2最長21.69kmのSS5が安全性の確保のためにステージキャンセルとなったことだ。
ヒョンデのオリバー・ソルベルグはSS2のスタートから300m地点の左コーナーでクラッシュを喫した。このアクシデントによってヒョンデi20 Nラリー1は横転。チームは再出走に向けて修復を試みたが、ロールケージにダメージを受けていたため再スタートは不可能と判断されている。
ラリー・フィンランドの競技3日目、6日(土)のデイ3はサービスパークの南側に広がる森林地帯が戦いの舞台となり、パイヤラ、ラプスラ、パタヨキ、ヴェックラという4本のステージを日中のサービスを挟んで各2回走行する。計8本のステージの合計距離は150.30kmで、これは4日間で最長となる。リエゾン(移動区間)を含めた1日の総走行距離は626.70kmだ。