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 ベストカーの人気テスト企画である『音羽ニュル乗り心地テスト』が帰ってきた! 最後にベストカー誌面に登場したのは2018年4月26日号だから、実に4年ぶり!! 大変長らくお待たせいたしました。

 で、今回のテスト車はトヨタ ノア、スバル WRX S4、ホンダ シビック、スズキ アルト、日産 アリア。ミニバン、セダン、5ドアハッチバック、軽自動車、BEVのSUVと多種多彩な最新&人気車5台が集結。

 テストを担当するのはレーシングドライバー、プロフェッショナルドライバー(ドライビングインストラクターなど)、モータージャーナリスト、そしてYоu Tuberとして活躍中の大井貴之氏。

 ベストカー乗り心地テストにおける乗り心地マイスターに15年以上も君臨している。

 テストコースはベストカー編集部の近所、東京都文京区音羽周辺の一般路で、ベストカー編集部では『音羽ニュル』と勝手に命名。古くからのベストカー読者諸兄にとってはおなじみのコースのはずだ。

 乗り心地テストのほかにも登場することがあるので、ベストカービギナーや、音羽ニュルの存在を初めて知ったという方々も覚えておいてほしい。

 この音羽ニュルは急こう配の上り坂、直角のカーブ、クランク、路面がうねった波状路、緩やかな下りの中速カーブなどなどが複合された全長約3.2kmのコースで、路面の舗装もいろいろなタイプがあるため、低中速域でのクルマの挙動、こと乗り心地をチェックするのに打って付け。

 各車の乗り心地は大井氏の経験に裏打ちされたインプレッションとともに、よりわかりやすくするため『不快指数』で各車の乗り心地性能を数値化。この不快指数は50%が基準値となり、パーセンテージが上がるほど不快ということになる(MAXは100%)。

 大井氏が音羽ニュルで乗り心地の評価をする際に最も重要視しているという路面がウネウネした波状路では、クルマの上下動の大きさを可視化するためにキッチン用測りの最大振れ幅を計測。

 それから室内騒音は乗り心地の快適性にかかわる重要な要素ということで、走行中はスムーズ路面、荒れた路面、上り坂でのフル加速時の騒音を測定。加えて停車時に、隣に置いたクルマのエンジン音がどのくらい車内に入ってくるか、エアコン風量による騒音(風量MAX時とMIN時)もチェックしている。

 さて、大井氏はテスト車5台の乗り心地をどのように評価したのか? その結果をレポートしていこう!!

文/大井貴之
写真/平野 学
初出:『ベストカー』2022年6月10日号

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■トヨタ ノア(ハイブリッドS-Z・7人乗り)

 これはもう驚きの進化! 遮音性計測も5台のなかで最も低い45dBだった。走り出した瞬間から「オッ、これは!」と感じるほど乗り心地はソフトタッチでスムーズ。

 それに視界がいい。ベストカーのあるビルの狭い駐車場で方向転換したのだが、視界のよさ、取り回しのよさに加えて前後のモニターがいいタイミングで自動的に切り替わってアシストしてくれる。音羽ニュルではEV走行の頻度も高かったこともあり、めっちゃ静かに、しなやかに走ってくれた。

 使い勝手もよさそうでちょっとした高級車じゃん! と思ったら試乗車はオプションを含むと400万円大幅越え。そこそこ高級車でした。

 と考えると、強い加速をするとエンジン音がガッツリ車内に入ってきてステアリングやシートにエンジン振動が伝わって来るとか、ちょっと残念な安っぽさも見えてしまったが、市街地を中心に普通に走らせていたら気になることはないかもしれない。

 というか、そういう一面がネガな印象として残らないほど総合評価は高得点だ。

●不快指数 15%
●ハカリの揺れ幅 55g

しなやかな乗り心地で先代型から大きく進化! 視界がよくて取り回しがいいのもノアの魅力

■日産 アリア(B6・66kWh)

 5台のテスト車で唯一のEVとなるアリア。グレードはB6だからFFでバッテリー容量も小さいモデルなので、アリアとしては軽量モデル。

「EVはエンジンがないんだから静かに決まってる」と言われそうだが、このクルマ、EVとして考えても静か。ドアを閉めた瞬間に感じる外界と遮断される高級感。インバーター音も気にならずにスーっと走り出す。

 日本ならではのおもてなしを形にしたインテリアデザインも心地いい。内側に吸音スポンジを配したタイヤを装着しているからタイヤが発するロードノイズも静か。

 だが、足回りは若干硬めのセッティング。背の高いSUVでグラスルーフを採用しているにもかかわらずセダン並みの低重心を実現しているアリアなら、もっとしなやかなフラッグシップらしい乗り味が実現できたのではないかと欲が出てしまう。

●不快指数 15%
●ハカリの揺れ幅 50g

試乗車のアリアは66kWhバッテリー搭載車のFFモデル「B6」。やや硬めのセッティングだが静かで快適だ

■ホンダ シビック(EX)

 タイプRを含めてNAエンジンを搭載していた「あの頃」に強い未練を持っているオジさん層にはなかなか受け入れる気分になれない現行シビックだが、このクルマはZ世代向けとして生まれてきた新時代のシビック。昔の話を出さずに評価をすれば悪くない。

 足回りは見た目から想像するイメージよりスポーティ。それでいて走り味はなかなか高級。荷物はたくさん積めるし、後席の広さも充分だし、MTも用意されているし……、スポーティに仕上げながらもそこそこをキープしたというのがこのクルマの狙いそのものなのだろう。

 全方位そこそこは実際に使う立場になったらありがたい性能だと思うが、それでお客さんに選んでもらえるかという問題はある。

 3ペダル車としてのドラポジもシフトフィールも加速性能も合格点だが、エンジンの回転落ちの悪さで気持ちよさを半減させてしまっている。

●不快指数23%
●ハカリの揺れ幅60g

スポーティかつ高級感もある乗り味で、すべてそこそこいいが、「とてもいい」がないか?

■スバル WRX S4(STIスポーツR EX)

 今回テストした5台のなかで最もスポーティなWRX S4。かなりマッチョな乗り味なのだが、波状路で計測した測りの揺れ幅はどういうワケか50gとアリアと並んでトップの数字をマーク!

 シートはクッションが硬めのバケットタイプだし、決してソフトな乗り心地ではないのだが、路面からの入力による振動は一発で収まってくれるから不快感は少ない。ただ、ロードノイズは荒れた路面での計測データで68dBと、やや大きめだった。

 新しい2.4Lターボは低回転から高回転まで気持ちよく回ってくれるし、中速域でのスピードコントロールも自在。このクルマはすでにサーキットでの試乗も経験しているが、ワインディングはもちろん、サーキットを走らせてもドライバーをガッカリさせることはない。普段から使えるスポーツセダンとしての完成度はかなり高い。

●不快指数 23%
●ハカリの揺れ幅 50g

2021年12月に発売されたWRX S4は275psの2.4L水平対向4気筒ターボを搭載。硬いのだが不快感は少ない乗り心地だ

■スズキ アルト(ハイブリッドX)

 何もかもがシンプル。車高も近年主流のハイトワゴンと比べたらチョップドトップ? と思ってしまうほど低い。そのぶん車体は軽いからスイスイ走る。乗り心地だってこのクラスとしては悪くない。

 先代型のアルトは、引越し後の家具も絨毯もカーテンもなくなったガランとした部屋のようにいろんな音が頭の周りで反響していた。しかし、現行型は断然静か。騒音計の数値としては表れないかもしれないが、反響音的なものが気にならなくなったのだ。これは長時間走っていたら疲労に大きな差が出るだろう。

 しかもマイルドハイブリッドが快適な走りに大貢献。NAエンジンの軽自動車は発進から30km/hくらいの加速域にかったるさがあるが、この弱点がモーターアシストによって解消されている。これなら交通量の多い交差点の右折でドキドキすることもない。

 そういう走りやすさも含めて、とっても快適性がアップしたアルトでした。

●不快指数 25%
●ハカリの揺れ幅 70g

2021年12月に登場した現行アルト。試乗車のハイブリッドXは最上級グレード。先代モデルから静粛性が大幅アップしている

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