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 日本でもホビーの文化的価値が認知されてきています。その立役者の一人が「ケンクラフト」の店主である高石賢一さん(通称ケンさん)です。

 東京・秋葉原駅にほど近い神田須田町にある「ケンクラフト」は、建機専門のミニカーショップとしてよく知られた存在ですが、ケンさんは国内外の建機やトラックに精通しており、その見識は実物と見まごうスケールモデルに見事に反映されています。

 実車を見ながら精巧なミニチュアに親しむ……、オランダのノーテブーム社製トレーラを題材にケンさんにホビーの醍醐味を語ってもらいました。

文/高石賢一(ケンさん) 写真/高石賢一(ケンさん)・フルロード編集部
2021年12月発行トラックマガジン「フルロード」第43号より


オランダの老舗トレーラメーカー「ノーテブーム」の人となり

 ノーテブーム社はウィリアム・ノーテブーム氏が1881年に起業。明治14年というから140年の歴史がある。最初は鍛冶屋で馬車のホイールや蹄鉄の制作が始まりだ。第二次世界大戦もくぐりぬけ、独自のアイデアでさまざまなタイプのトレーラを生み出しシェアを伸ばしていった。

 陸続きの欧州という立地とオランダ人の営業力、商品力でマーケットを広げていったのであろう。重量物用の多軸車や長物用、アンテナのように伸縮するテレトレーラを得意とする。

 かなり前になるが同社を取材したときに、モノつくりの哲学をお聞きしたところ、小冊子を引き出しから取り出し、全社員この本を持っている、社長室のドアはいつでも開いているから何でも相談できるんだよ、と……。

 オランダの工業製品のモノつくりはイメージがなかったので、今でも鮮明に記憶に残っている。独創的なアイデアや顧客のニーズに合わせた製品作りの秘密はそのへんにありそうだ。

ノーテブーム「ユーロPXシリーズ」の特徴は?

 このユーロPXシリーズは2軸から6軸までのバリエーションが用意される。今回は荷主さんに合わせた仕様で世新建設運輸特注仕様の2軸。

 もちろんただの2軸ではない。狭い納品場所にも入っていける取り回し、わかりやすくいうと4トン車が入っていけるところなら入れるというのが最大の売り。落とし込んだ荷台の長さは4mとかなり短く、荷台部分が低いので高さがあるものも運べるのだ。

 この時の最大積載量は35t。トラクタはボルボFH16 6×4 530馬力を用意。全長1万4213mmとトレーラとしては短い。フレームは伸縮式で取り外し式の床を乗せれば荷台長6450mm、全長1万6663mmとなる。長く伸ばした時には最大積載量が増え35.4tとなる。

ノーテブームの「ユーロPX」。真ん中の荷台の長さ4000mmの一番短い状態

 荷台幅は2540mm、拡幅板を使用した場合は2990mmまで広げられる。荷台は地面に完全に接地するまで下げられる。タイヤはグッドイヤー製の285/70R19.5 150・148Jを履いている。

 ダブルタイヤでは油圧で上下させることができ、荷台を一番上げると後ろ部分で約979mm、荷台の前側で1177mmとなる。これらの操作はトレーラ左側の操作パネルで行なう。

 ステアリング切れ角は60度とかなり切れるので狭い所へも入りやすいという。バックで駐車してもらったが、普通なら切り返すところを難なく駐車スペースに収まった。通常の走行ではトレーラのタイヤはカプラーと連動してステアする。ステアリグはリモコンでも可能なので現場でヘルプしてもらうこともできる。

 リモコン操作をやらせてもらったが簡単なボタン操作で、しかも思ったより早い速度でステアする。現場で扱いやすいことだろう。欧州仕様ではグーズネックは脱着式が標準装備だが世新仕様は軽量化ということ固定されている。

ミニチュアモデルはオランダWSI製 

 ミニチュアモデルのほうはオランダWSIから最近発売されたばかりで黄色が用意できなかった。赤はノーテブーム社の標準カラーだ。またトラクタも適当なボルボがなく、現在進行中のスカニアの試作品を連結している。ご容赦願いたい。

 欧州標準仕様をモデル化しているので荷台の長さは世新建設運輸仕様より長い。タイヤ上下のギミックは省略されているのが残念だ。とはいえWSIらしく手慣れた感じで細かいプリント等精密感のあるモデルだ。

 世新建設運輸といえば渋谷駅前の緑の電車、通称アオガエルを大館まで運搬したのが記憶に新しい。スカニアR650 6×4+ノーテブーム6軸でスマートに運搬していった。それを再現したモデルが近日発売になる。

渋谷のアオガエルを運搬したスカニアと6軸ノーテブームを再現したミニカー

 写真は試作品だが、ブルーシートに覆われた電車まで再現して乗っている。企画はケンクラフト、製造はオランダIMC社だ。

 IMCのスカニアは新規金型でドア開閉など大いに期待できる内容だ。さらに世新仕様に近づけるべくキャブ後ろの工具箱やトレーラのスペアタイヤ位置、最後部の泥除け等細かなところまで近づけている。

【取材協力】ジャパン ロジスティックス イノベーション/世新建設運輸株式会社

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