オランダで、先月下旬から主に農業従事者による大規模なデモが続いている。原因は「脱炭素」政策への反発だ。
地球温暖化を促すとされる、家畜から排出される窒素に対して、先月初めにオランダ政府が2030年までに排出量を半減させるという目標を発表。オランダ政府の計画によると、オランダ国内で廃業に追い込まれる畜産場は全体の30%に及ぶとの推計もある。
また、現地の複数メディアの報道によると、一部の畜産場が政府によって一方的に閉鎖される可能性もあるという。こうした政府の方針に反発した農業従事者などが、大規模なデモを続けている。
スーパーも高速道路も封鎖
6月27日には、一部のデモ参加者が警察の封鎖を破り、パトカーを破壊するなど抗議活動が激化し、10人が逮捕される事態となった。28日には、数百人に及ぶ農業従事者が、議会の建物のすぐそばで牛を連れたデモを敢行。政府の窒素削減目標に抗議して、「この場で牛を屠殺する」と脅した。官公庁に重機で肥料をまくデモ参加者も現れた。オランダの国内各地では農家や市民らがトラクターやトラックを動員して高速道路をジャックする事態も相次いだ。
デモの規模は次第に大規模になり、7月4日には、オランダの主要都市の一部でデモ参加者が、スーパーマーケットの食品流通センターを封鎖。空港に至る道路も封鎖されており、ロイターによると、KLMオランダ航空はオランダ・アムステルダムのスキポール空港の利用者に対して、空港に到着するために、車ではなく公共交通機関を利用することを呼びかけている。
スーパーの商品棚は“ほぼ空”
このデモのあおりを受けて、オランダ国内の商店は深刻な品不足に陥っている。現地にいると見られる「RadioGenova」というツイッターアカウントは、「今日のオランダ。農民も食べ物もありません。」と、商品棚が空になったスーパーマーケットの動画とともにツイート。
Holland today. No farmers, no food. pic.twitter.com/fBlnxcb8GW
— RadioGenova (@RadioGenova) July 5, 2022
ジャーナリストのKeean Bexte氏も野菜の棚がほぼ空になった状態のスーパーマーケットの画像をツイッターに投稿していた。
Second photo: pic.twitter.com/xjkfRgCnwQ
— Keean Bexte 🇳🇱 (@TheRealKeean) July 4, 2022
とはいえ、この状態に「デモなんか早く止めろ」と怒っている国民が大多数かと言えば、違うようだ。ツイッターを確認する限りでは、農業従事者に連帯の意向を示すユーザーが少なくないのだ。
流通センターとスーパーマーケットチェーンはどこもブロックされています。棚はほとんど空です。食べ物もありませんが、オランダの農民が勝ちます。
世界が食糧危機になろうとしている時に、政府が農場を停止することはできません。
「気候変動」のため、食糧生産を停止。まるで多くの人を死なせたいと思っているようです。
誰もが農民と一緒に抗議するべきです
明日のために農民たちはたくさんの新しい抗議を計画しました。彼らは多くの支持を得ています
世界的な食糧危機の懸念
オランダは面積こそ小さい国だが、2019年の国連の統計によれば、農業大国アメリカに次ぐ、世界第2位の農産物や食品の輸出大国だ。主要農産物は、チューリップやジャガイモ、玉ねぎ、きゅうり、生乳、豚肉などで、日本への輸出も多い。
2019年のオランダからの日本の輸入品では、豚肉、ナチュラルチーズ、ペットフード、球根が多く、輸入総額は3000万ドルを超えている。今回のデモにより、オランダからEUへの牛乳や牛肉などの出荷も止まったという。漁業従事者らもこのデモに賛同の意向を示しており、多くの港が封鎖されている。
このまま、オランダのデモが収束しなければ、周辺各国はもちろん、回り回って、日本を含む世界全体のさらなる物価高、食糧危機も引き起こしかねない。オランダ政府はこの無茶な計画をこのまま押し通すのだろうか。