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モスクワを拠点とする独立系メディア「ザ・モスクワ・タイムズ」は6日、カザフスタン最大の油田で爆発などのトラブルが相次いでいると報じた。

港湾停止に油田爆発

カザフスタン・マンギスタウ地方の油田(2019年8月撮影:ekipaj /iStock)

報道によると4日、カザフスタンのトカエフ大統領は欧州理事会のシャルル・ミシェル議長との会談の際、州諸国が非エネルギー市場の状況を安定させるためにヨーロッパへの石油の供給を増やすと約束したという。昨年のカザフスタンからEUへの石油輸出量は、イタリア、オランダ、フランスの順で多かった。

この会談が行われた直後の5日、ロシアの主要港があるノヴォロシースクの裁判所は、カザフスタンの石油が輸出される港湾のターミナル作業の停止を命令した。カザフスタンの1日あたりの石油生産量は170万バレルだが、その大半がノヴォロシースクにつながるパイプラインを通過する。

さらにその翌日、石油埋蔵量32億トンと推定される、カザフスタン最大の油田「テンギス油田」(下記地図)が爆発。2人の労働者が死亡し、3人が負傷したという。

出所:独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」

カザフ政府高官「ウクライナの領土保全尊重」

旧ソ連の構成国家だけに、カザフスタンは親露派国家と見られがちだが、実態は少し違うようだ。ロシアのウクライナ侵略当初から、カザフスタン高官がウクライナへの侵略を認めない立場を示している。

今年4月、カザフスタンのティムール・スレイメノフ大統領秘書官がベルギーの独立系メディア「ユーラクティブ」のインタビューに、「ロシアは私たちがよりロシア側にいることを望んでいるが、カザフスタンはウクライナの領土保全を尊重する」と述べた。

ウクライナは、ロシアやベラルーシ、カザフスタンなどとともに「ユーラシア経済連合」の加盟国で、ロシアが主導する「集団安全保障条約機構(CSTO)」にも加盟している。しかし、ロシアの非政府系通信社「インテルファクス通信」によると、スレイメノフ大統領秘書官は、「ロシアと経済および軍事同盟にあるが、今回のウクライナ事態など特定の場合には同盟条約が適用されない」と述べたという。

トカエフ大統領、プーチン氏の眼前で…

トカエフ大統領(Kremlin.ru, CC BY 4.0)

カザフスタンのトカエフ大統領は、6月17日にロシア・サンクトペテルブルクで行われた国際経済フォーラムにロシアのプーチン大統領とともに出席。その際に、プーチン大統領の目の前で「ドネツク・ルガンシク人民共和国は似非国家であり、我が国はそれらを承認することはない」と発言。

「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」はともに、もともとはウクライナの領土だ。親露派勢力が自称する「国家」として、ロシアが承認している。トカエフ大統領は、ロシアが行ってきたことを公衆の面前で批判したわけだ。さらに、カザフスタンメディアによると、同フォーラムでトカエフ大統領はロシア側からの国家勲章(アレクサンドル・ネフスキー勲章)の授与申し出を断ったという。

産経新聞によると、この一連のトカエフ大統領の言動に対して、ロシア政権与党「統一ロシア」の幹部であるザトゥリン氏は、ロシアのラジオ局のインタビューで、「ロシアへの挑戦だ。ウクライナのような問題がカザフにも起き得る」と述べたという。

6日にはロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官が「カザフスタンは依然としてロシアにとって友好的な国である」と強調している。これまでのところ、冒頭の油田爆発にロシア政府がどう絡んでいるかは明らかになっていない。ただ、カザフスタンがEUへの石油輸出量を増やすと約束した直後に、油田が爆発したことは確かだ。