NASAは、月探査機「CAPSTONE」との通信再開を発表した。同機は7月4日に地球の軌道から離れ、月へ向かった直後に通信障害が発生していた。
CAPSTONEという名称は、「Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment」の略。寸法は電子レンジほどで、質量25kgの小型衛星(キューブサット)だ。
6月28日にRocket LabのElectronロケットで打ち上げされた後、月軌道へ向かうのに十分な速度をつけるため、地球の周りを1週間にわたって周回していた。そして地球の重力圏を脱出し、ロケットから分離した直後に、地上管制との通信が取れなくなった。
ただし通信は途絶したものの、NASAはCAPSTONEの軌道を把握しており、広報担当者は「必要なら次の軌道修正を数日遅らせるのに十分な推進剤を搭載している」とコメントしていた。
無事に通信を再開したCAPSTONEは、計画中の有人拠点「月軌道ゲートウェイ」が使用予定の特殊な軌道「Near Rectilinear Halo Orbit(NRHO)」に向かい、11月13日に到達する予定だ。
NRHOは大きく偏心した特殊な軌道で、近いときには月から1,500km以内に接近するものの、反対の位置では7万kmも離れた位置を周っている。特徴は、軌道面が地球のほうに向いていて、地球との通信を常に維持できること。また宇宙船が月軌道ゲートウェイと月面を往復する際に、必要な推進能力が少ない利点もある。
NASAは現在、8月23日から9月6日の間に、オリオン宇宙船の無人での打ち上げを実現すべく取り組んでいる。月周回軌道で6日間を過ごした後に地球へ帰還するこの試験飛行では、月への往復が人体に与える影響を評価する予定だ。