昨年までの無観客や入場規制から転じて盛況となったル・マン24時間は、終わってみればトヨタGRの5連覇で幕を閉じた。トヨタのハイブリッド技術の優位は本物なのか? ワークス争いがいよいよ幕を開ける今後こそ、その試金石であり、WEC観戦の注視すべきポイントになる。
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ル・マンを皮切りにWECが熱くなる
スタンドの盛況とゴール直後のコース上に観客がなだれ込むというお馴染みの光景は、伝統の大一番としてル・マンが輝きを取り戻した証左といえた。今年90回目を、そして2023年に100周年を迎えるル・マン24時間は、WECの一部ではあるが、あらゆるコンペティターが最注力する大舞台だからこそ、歴史の証人たる伝統の一戦でもある。しかも、ハイパーカー2年目の今回も、トヨタGRの#8と#7が1-2体制で制した。1985年以来、ル・マンに参戦し、長らく2位に甘んじてきたトヨタ・ワークスが、直近でついに5連覇を果たしたのだ。
チームとしてトヨタGR010ハイブリッドの戦いぶりは、ほぼ完璧だった。ミスらしいミスやトラブルは、24時間を通じて2度だけ。スタートから7時間して暗くなり始めた頃、セバスチャン・ブエミが#8をミュルサンヌ・コーナーでスピンさせたことがひとつ。ふたつ目は翌朝8時頃、ホセ・マリア・ロペスが駆る#7がインディアナポリスの先で、システム系の不調によりスローダウンし、再起動を余儀なくされたことだ。いずれも無事にピットに戻って大事には至らず、レースを再開。昨年より安定感を増したグリッケンハウスや、厳しいBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)を課せられスティントあたりの周回数を伸ばせず、トラブルにも見舞われたアルピーヌにつけ入られる隙はなかった。
ワークス多数参戦でハイブリッド競争の幕が再び開く
LMP2クラスは、来年復帰するワークスのオペレーションを担う有力チームの代理戦争というかデータ取りの場だった側面もある。来季、ポルシェ963を預かるペンスキーや、オレカ・シャシーの特性を探りつつ予選をクラス首位で通過したAFコルセの#83にも注目が集まった。だが後者はゴール6時間前、GTLMEプロの#64コルベットC8・Rをユノディエールの直線上で弾き出すように衝突。#64はポルシェ911RSRやフェラーリ488GTEらとクラス首位を争っていただけに、後味の悪い幕切れとなった。
ちなみに、トヨタGRのハイブリッド領域を190km/h以上に限ることで評判の悪いBoPだが、技術的な耐久性を証明する場だった黎明期の耐久レースではなく、チーム力の勝負として争われる現代の耐久レースでは、スポーツ性を保つため「以前からある調整」とACOのディレクターは述べる。往年の燃料供給リストリクターと考え方は同じというのだ。
ル・マン翌戦のモンツァでは、プジョー9X8がデビュー。来季はLMDカテゴリーでワークス参戦が多数見込まれる。そこにハイブリッド元年の2012年にル・マンを制したアウディの不在は皮肉だが、R18e-tronも当初モーター領域は120km/h以上に抑えられ、シーズン後半には低中速のサーキットでトヨタTS030ハイブリッドが優位になっていった。いわばBoPの縛りが小さくなる来年こそ、実質的なハイブリッド競争の第2幕というワケだ。
モンツァでプジョーが復帰、新ワークスマシンの9X8を投入
ル・マンから1カ月後、WEC第4戦イタリア・モンツァ6時間でプジョー・スポールは予定通りLMHクラスに9X8をデビューさせ、WEC復帰を果たした。2台の9X8はウイングレスの特異なシルエットで実戦投入前から注目を集めていたが、最初のセッションで3番手の好タイムを記録。早々に速さを証明したが、信頼性はまだ発展途上で、決勝ではリタイアと33位という結果。いずれポテンシャルは確かで、9月の富士でも注目株となる。
ちなみにモンツァではル・マンで不調に終わったアルピーヌがセブリングに続く2勝目を挙げている。アルピーヌも2024年に投入するための、LMDhカテゴリーのワークスマシン新開発を公言している。
投稿 【現地レポート】ル・マン24時間は5連覇を達成したGRトヨタの時代か!? ライバル続々参戦でふたたび針がまわりはじめたWEC王者を賭けた闘いとは―― は CARSMEET WEB に最初に表示されました。