毎日新聞との訴訟の判決が7月4日に東京高裁で下された。一審は思いもよらぬ敗訴だったが、無事に逆転勝訴できた(関連記事)。
これで私が争ってきた一連の訴訟は、
- 篠原孝衆院議員との訴訟は勝訴確定、
- 森ゆうこ参院議員との訴訟は一審勝訴(引き続き二審係争中)、
- 毎日新聞との訴訟は一審敗訴から二審逆転勝訴、となった。
最初に毎日新聞記事が出てから3年以上を経てようやくここまで辿り着き、少しだけほっとしている。
私を苦戦に陥れた「小細工」
率直なところ、毎日新聞との訴訟でこんなに苦戦するとは思っていなかった。当事者の私からすれば、記事の内容はデタラメで、訴訟過程で明らかになった取材手法もデタラメだ。訴訟で負けるわけがないと思ったが、実際は容易には勝てなかった。
なぜ手こずったのかを振り返って考えると、結局、毎日新聞は最初から「私が不正を働いた事実はない」とわかっていたためだ。わかっていながら、あたかも不正があったかのような記事を掲載し、記事の中には「小細工」が施してあった。具体的には、
- 記事の見出しをみれば明らかに私が「200万円を受け取った」という記事だが、よくよく読むと、私とは別の会社が200万円を受け取ったと書いてあり、そこから私が金銭を受け取ったとの記載は隅から隅まで探しても出てこない
- 私がたびたび「会食接待」を受けたかのような記事になっているが、よくよく読むと、日時を特定した部分では「会食接待」ではなく「懇談」(より正確には「小料理店の総菜を盛った大皿が並ぶカウンター席で懇談」)と書き分けてある
といった仕掛けになっていた。
そして訴訟になると毎日新聞は、
- 記事には「原が金銭受領した」とは書いていない、
- 「会食接待」ではなく「懇談」と書いてあり、これは食事は伴わないという意味だ(「懇談」だけならば別に不正なことではないから名誉毀損にならない)
と主張した。
「そんな言い逃れが通るわけない」と笑ってしまうかもしれないが、日本の訴訟ではかなり通ってしまうのが現実だ。一審では毎日新聞の主張がすべて認められ、私の敗訴になった。二審では「懇談」の言い逃れはさすがに否定されて何とか逆転したが、「200万円」に関しては毎日新聞の言い逃れが引き続き認められた。二審も決して全面勝利ではなかったのだ。
原英史氏 VS 毎日新聞「争点」整理
「無邪気」な篠原氏、「謀略的」な森氏
明暗を分けたのは篠原孝議員だ。篠原議員との訴訟は一審も二審も私の完勝だった。これは、篠原議員が毎日新聞記事を素直に読み、「原は金銭を受け取り、会食接待も受けた。悪辣な奴だ!」と信じて、そのままブログに記載したためだ。毎日新聞記事のように小細工を施すことなく、無邪気にそのとおり書いていたので、訴訟になると言い逃れの余地がなかった。
その意味で、篠原議員は毎日新聞の捏造記事の被害者ともいえる。同じ被害者として少しだけ同情するが、そんな情報リテラシーで国会議員を務めて大丈夫なのかはもちろん別問題だ。
このように、「無邪気な誹謗中傷」は比較的容易に責任を問えるが、事実を捏造して人を貶めようとするような「謀略的な誹謗中傷」の追及はなかなか厄介だ。下手をすれば司法の場でも許容され、大手を振ってまかり通ることにさえなりかねない。謀略にいそしむ人々には好環境かもしれないが、一般の人々にとっては、万一ターゲットにされたときは実に危うい環境になっているのが現実だ。
もう一人「謀略的な誹謗中傷」を疑われるのが森ゆうこ議員だ。森議員は国会質問の中で、さんざん私の名前をあげて誹謗中傷し「(原さんが)国家公務員だったら、あっせん利得収賄で刑罰受けるんですよ」と断定した。つまり、私が金銭をもらっているという意味だ。
ところが、その後ツイッターで直接やりあって私が説明を求めると、この発言だけは決して繰り返さなかった。国会の中ならば「国会議員の免責特権」で守られるが、SNSなど国会外で同じ発言をしたら不法行為責任を問われる、つまりそんな事実はない(少なくとも、ないかもしれない)とわかっていて免責特権を悪用したのでないかと思う。(ほかにも「謀略的な誹謗中傷」を疑う根拠があるが、これは後編で触れる。)
「本丸」の問題は免責対象
毎日新聞や森議員は、事実がないとわかっていながら、なぜそんな記事を出し、国会質問をしたのか。真相はいまだに不明だが、おそらく「同じく国家戦略特区を舞台にしたカケ問題に続く“第二のカケ問題”に仕立て、政権攻撃の材料にしよう」ぐらいの動機だったのでないか。巻き込まれた私にとっては本当に迷惑な話だった。
森議員は国会外でも誹謗中傷やプライバシー侵害(私の自宅住所のネット公開)を行っていたので、この部分を対象に何とか訴訟で争うことができたが、一審で勝っても、認められた賠償額はわずか34万円だ。本丸の最も強烈な誹謗中傷は免責対象で泣き寝入りせざるを得ないため、こんなことになってしまう。
今年2月に衆議院予算委員会公聴会で、私は「免責特権の悪用」につき問題提起した。残念ながらその後、国会で議論の進展はない。今も国会は「謀略的な誹謗中傷」をやりたい放題の状態だ。国権の最高機関がこれではまずく、何とかしないといけない。