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プジョー309GTiグッドウッドは398台のみ製造された希少なスペシャルモデルだ。そのため、今や多くのスーパースポーツカーよりも希少価値が高い。現在、その中の1台が販売中だ。

「プジョー309」はプジョーのモデルの中でも本当によく売れた、文字通りベストセラーモデルだ。1985年から1993年の間に160万台以上生産された「309」は、今日となっては、少なくとも欧州ではなかなかレアな存在である。1989年夏からは、やや保守的なこのモデルに、今や伝説となった「205GTi」の1.9リッター4気筒エンジンを搭載したスポーティな「309GTi」も用意された。その中でも今回のモデルは限られた数しか作られなかったため、本当にレアな存在だが、現在eBayで売られている。

eBayでは、1992年から1993年にかけて398台しか製造されなかった「プジョー309GTi」が出品されている。英国市場のみで展開された「グッドウッド特別モデル」。「GTiグッドウッド」は、すべてダークグリーン(パインウッドグリーンメタリック)で、アンスラサイトのスピードラインホイール、ブラックレザーインテリアという装備で納車された。

プジョー309GTiグッドウッド398台はすべて「パインウッドグリーンメタリック」という色に塗られている。そして、アンスラサイトのオリジナル、スピードライン(Speedline)製ホイールが完璧にマッチしている。

10万km以下の309GTi

現在フランスのソショーで販売されているのは、1993年に製造された1台で、ほとんどクラシックカーと呼べるものだ。現在の販売者は、2012年に英国からフランスに持ち込み登録された右ハンドル「309」だ。走行距離は57,250マイル、つまり92,150km弱に相当する。

広告によれば、この希少なプジョーは使用感こそあるものの、良好なオリジナルコンディションを保っているとのことだ。例えば、助手席側のリアホイールアーチに小さな凹みが見られる。ヘッドライトはもはやオリジナルではなく、フランス登録のために交換する必要があった(配光が非対称なため)。さらに、「309」は若干のローダウン、リアサイレンサーの変更などが行われている。

ブラックレザーインテリアは、特別仕様車として標準装備された。また、サンルーフ、電動ウインドウも搭載している。

伝説の205GTiのエンジン

生産当時、プジョーは「205GTi」を「309GTi」の生産台数の約5倍売っており、現在の中古車市場では、「205GTi」15台に対して、309GTiは1台しかないと専門家は推測している。そのため、3ドアと5ドアのモデルが用意された「309」は、まさにレアな存在といえるのだ。

「205GTi」をはじめとするプジョーのホットハッチは、今日、コレクターズアイテムとして人気を博しているが、「309GTi」はまだ注目されていない。しかし、「309GTi」の走りの良さは、かつてのオーナーも認めるところだ。「309GTi」の車重はたったの930kgで、「205GTi」よりわずか20kg重いだけだった。1.9リッター4気筒エンジンは130馬力(1992年からは120馬力のみ)を発揮し、全長4.05メートルの「309」を8.0秒で0から100km/hまでスムーズに加速させた。

プジョーの値段は?

充実した装備の「309GTi」だが、価格については若干の混乱がある。eBayの広告では、Buy-it-Now価格が14,280ユーロ(約200万円)となっているが、本文では12,000ユーロ(約168万円)が希望価格と記載されている。そのことは価格交渉の材料になるかもしれない?

【ABJのコメント】
「プジョー309」、懐かしいなぁ。この「309」が発表されたとき、世の中は「205」全盛期で、特に「GTi」は絶対的な人気を博していた。チャーミングで、まとまりの良かった「205」に比べ、「309」はなんだか間延びしているというか、無国籍な感じさえして、「205」もあるのになんでわざわざプジョーは「309」など出しちゃったのだろう、と正直思ったものだった。

当時、「ランチア デルタ(まだインテグラ-レになる前)」と「309」を悩みに悩んだ末、「309」を購入したという松任谷正隆さんの記事を読みながら「どうして不細工なほうをチョイスするの。なんでだろう?」と不思議に思ったものだが、今になっては、すごくよくわかるし、僕も「309」を選びたい気持ちである。なぜならば「309」は、骨の髄までフランス車である、ということを今ならば理解しているからだ。

乗ってみれば「205」よりも落ち着いた乗り心地で、ちょうどよいサイズと相まって、実に毎日使いやすい一台だし、この朴訥な感じはなんともプジョーではないか。そんな「309」が今回売りに出されていて、しかもそれは今までぜんぜん知らなかった「グッドウッド」という名前の付いた限定モデルなのだった。「グッドウッド」といえば、ミニの超高級限定モデルは有名だが(今でも本当に欲しい)、こちらは無名、というか日本では売られていなかったのであろう一台である。たしかに色や内装(でも、やっぱり本革じゃないほうが好み)はなかなかだが、距離を考えるとさすがに高い。今後のトラブルもパーツの確保も心配だ。だからさすがに買う気にはなれないし、人にも薦めない、あまりに上級コニサー向けすぎるから。でもこの車を見ると、あの頃を懐かしく思い出す。それはまだまだBEVやハイブリッドシステムなど一般路上には影も形もなく、各国のテイスト溢れる自動車が街を彩っていた時代である。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Ebay/oxia12