技術の進化とともに、複雑かつ小型のヘッドライトが作れるようになったことから、近年、自動車デザインのトレンドとなっているが「ツリ目」こと、細くシャープなヘッドライトだ。しかし一方で、かつて主流だった「丸目」ライトは、ミニやジープに代表される古典的でファニーなモデルの象徴となっている。
「ツリ目」が主流となった現代では、個性派となった感もあるが、ジムニーのヒットを見るにつけ、老若男女さまざまな人に愛される象徴でもあることはたしか。そこで本稿では、丸目の魅力について深堀りしつつ、現行型モデルの丸目カーや丸目カーの歴史について解説していく。
文/フォッケウルフ
写真/BMWジャパン、日産、トヨタ、三菱、ホンダ、スズキ、ダイハツ、ステランティスジャパン、メルセデス・ベンツ日本、マツダ、ジャガー、スバル
■丸目ヘッドライトが人に与える印象とは?
クルマのヘッドライト(前照灯)は、夜間でも走行できるよう路面状況を把握したり、歩行者や障害物、道路標識などをスムーズに認識するなど、ドライバーが視界を確保するための装置だ。クルマに取り付けられたのは1890年頃と言われ、ろうそくや石油ランプ、アセチレンランプなどから始まり、1900年代に入ると白熱灯、そしてハロゲンランプが主流となり、現在ではHIDやLEDが光源に用いられるようになった。
こうした光源の進化や形状成形技術の進化に伴って、ヘッドライト本体の構造はコンパクトかつスタイリッシュなものへと変貌を遂げた。その結果、現代ではシャープで薄型のツリ目型ヘッドライトがトレンドとなっている。
ヘッドライトがクルマの顔(フロントフェイス)を構成する重要部品であることは言わずもがな。スポーティな印象を強調したければ「鋭い眼光」が表現できる造形にしたり、フロントグリルのデザインと組み合わせることで「微笑んでいる」ように見せたりするなど、ヘッドライトとその周辺部品のデザインは、クルマが持つ世界観を表現する役割を担っている。
斬新さやオリジナリティを主張するライトの採用車種が増えているなか、あえて往年の「丸目」を採用したクルマは少なからず存在し、丸目によって表現した個性は、その狙い通りユーザーの心をしっかりと捉えている。
事実、筆者も駐車場から出庫する時、その場にいた女子から「あのクルマかわい~」と言われるなど、丸目ヘッドライトがいかに愛されるものであるかを実感した。女子ウケがいいだけでなく、その「つぶらな瞳」は、切れ長でシャープな顔つきのクルマにはない癒しを与えてくれる。もちろん「他とは違う」ことの表現に大きく貢献し、丸目を採用した車種はおおむね「オシャレ」なクルマとして認識されがちだ。
■現在新車で買うことができる主な丸目カー
数は決して多くないが、丸目ヘッドライトによって独特の個性を主張するクルマを、現行モデルのなかからクローズアップしてみよう。近年、丸目ヘッドライトを採用する車種の傾向としては、歴史や伝統を頑なに守るという狙いがある。クラシカルな雰囲気を演出する効果があることから、「往年の名車」感を出すにはうってつけであることも丸目ヘッドライトの特徴と言っていい。
●ホンダ N-ONE
●スズキ ジムニー
●ダイハツ コペン
●スズキ ハスラー
●MINI
■過去に輝き世界を魅了してきた丸目カー
複数のLEDを幾何学的に配置し、それぞれの点灯を制御する方式が増えたことがクルマのデザインを劇的に変えた。たとえば新型ヴォクシーとか、bZ4X&ソルテラ、アリアといった最新モデルはひと昔前なら考えられないほど個性的で、一見するとどこが光るのかわからないくらい斬新だ。
しかし、丸目ヘッドライトに比べてみると無機質でクールすぎる感は否めない。そこで、丸目ヘッドライトがクルマに有機的な印象を与えるという点でいかに有効であったかを、「かつて輝きを放った丸目たち」をクローズアップしながら一挙に見ていこう。
●リトラクタブルライトの丸目たち
●いまでは不要になった4灯式の丸目たち
●カワイイという概念を覆した丸目たち
●形状やデザインが個性的な丸目たち
自動車に採用される技術の進化は、カーデザインのトレンドに大きな影響を及ぼしてきた。クルマの顔であるフロントまわりのデザインにおいて、ヘッドライトが重要なパーツであることは昔も今も変わらない。
将来的には光学技術や生産技術の向上によって、さらに高性能、高機能化され、もっと斬新なヘッドライトが登場することになるだろう。それでも、クルマに個性をプラスし、独自の世界観を主張できる丸目ヘッドライトが廃れることはない。
【画像ギャラリー】魅力的な丸目のクルマをさらに写真で見る!(13枚)画像ギャラリー投稿 少数派となった現代も輝き続ける! オラオラ顔なんて目じゃない「丸目カー」の魅力を探る は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。