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 2022年F1第10戦イギリスGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「フロアのたわみを規制するFIAの意図と、抵抗するレッドブル&フェラーリ」に続く今回は、レッドブルとフェラーリが持ち込んだアップグレードを紹介する。

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 カルロス・サインツの初勝利は、運に助けられた部分もあったとはいえ、間違いなく彼自身の実力ゆえだった。一方でシルバーストンの週末での最速マシンが、レッドブルだったことも確かな事実である。

レッドブルRB18のエンジンカウルとフロア
レッドブルRB18のエンジンカウルとフロア

 今回レッドブルは、フロアとエンジンカウルにアップデートを施した(上の写真参照)。初日はそうでもなかったものの、改良マシンのセットアップ方法をエンジニアが理解した土曜日の朝以降、RB18はその真価を発揮し始めた。

 フリー走行最終セッションでは、フェラーリの1分28秒348、メルセデスの1分28秒426に対し、フェルスタッペンには1分27秒901のペースがあった。Q3でのシャルル・ルクレールのスピンに邪魔されていなければ、おそらくポールポジションはフェルスタッペンが奪い取っていたことだろう。

 さらにこの週末、RB18はF1-75よりも早くタイヤを温めることができた(これは少し珍しい現象だった)。そしてストレートと高速コーナーでも速かった(土曜日と日曜日の検出ポイントでは、フェラーリより約5km/h速かった)。

 もしアルファタウリのウイングの一部がディフューザーに刺さっていなかったら、クリスチャン・ホーナー代表が言うように、フェルスタッペンはダウンフォースの20%を失うことなく、レースでも首位をキープしていただろう(もちろん、「もしも」を言い出したら、ニコラス・ラティフィでさえ世界チャンピオンになれるのだが……)。

 一方でフェラーリも、開発面で取り残されているわけではない。イギリスでは、アゼルバイジャンで改良したミラーステイに、さらなるアップデート版を投入した。しかしF1-75は信頼性で問題を抱え、戦術的なミス、ドライバーのミスなどもあって、せっかくの速さが十分に活かされていない。

フェラーリF1-75のミラー
フェラーリF1-75のミラー

 フェラーリは、ボディワークでも、下の写真に見られるように、サイドポンツーンのエアインテークの下、アンダーカットの部分にも手を入れている。青い矢印で示すようにアンダーカットがより顕著になり、車体側面の気流改善が期待される。アウトウォッシュ効果(前輪の回転による乱流を取り除くために外側に空気を逃す)が高まるはずだ。

フェラーリF1-75のアンダーカット
フェラーリF1-75のアンダーカット

 アウトウォッシュを強調すると、エンジン冷却に十分な気流が入り込まない恐れがある。しかしフェラーリはどうやら、V6エンジンがより高い温度でも稼働できるような方法を見つけたようだ。