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【編集部より】軍事ライターの蓮見皇志郎さんに事件で使われた可能性が高い「自作銃」について分析、緊急寄稿してもらいました。

新聞各社も安倍元首相の襲撃事件の号外を発行(写真:AP/アフロ)

安倍晋三元首相が8日昼前、奈良県奈良市で演説中に銃撃された事件で、15時現在、心肺停止状態である。男は直ちに現場で取り押さえられ、後に殺人未遂容疑で逮捕。報道では男は海上自衛隊員に勤務経験のあると伝えられている。

ネットでは散弾銃の銃身を切り詰めた暗殺に特化した「ソードオフショットガン」が使われた可能性が取り沙汰されていたが、その後の報道で自作銃による犯行の可能性が浮上した。実は筆者は、一報に接した当初、自作銃の可能性を疑い、SAKISIRU編集部に連絡。急遽執筆することになった。

筆者が自作銃の可能性を疑った理由としては3つ挙げられる。

1つ目は、これに該当する猟銃がないことである。日本は主にミロク製作所、豊和工業の2社が製造しているが、これに該当する散弾銃がない。海外製も同様だ。

2つ目は、ここでは引用しないが支持者が撮影していた銃撃の瞬間から、現在の主流の火薬と性質が違うことが分かった。現在主流の「無煙火薬」と比べて、煙の量がとても大きく、音も大きい。考えられるのが、「黒色火薬」という物で、中世で主に使われていた。火縄銃が想像しやすいだろう。黒色火薬は木炭、硫黄、硝酸カリウムを混ぜたもので、自分でも作れるほか、通販サイトでも簡単に購入することができる。

NHK NEWSから引用

3つ目は、2本の金属パイプがガムテープで束ねられていることだ。ご存じの通り、ホームセンターで購入することができる。

自作銃の構造としては、金属パイプに鉄くずと黒色火薬を入れ、電気で発火したというところだろう。実際に古来の銃でほぼ同じ構造の「タンネンベルクガン」という銃がある。そして確実に暗殺するために2発束ねて、SPに怪しまれないように肩紐をつけてバックに見立てた。

過去の自作銃事件と今後の懸念

3Dプリンターによる銃製造イメージ(mailfor/iStock)

自作銃による有名な事件として2014年の3Dプリンター銃密造事件が挙げられる。大学職員が自作したもので、彼は町工場で勤務していた経歴を持っていたため精密な銃を作る製造ノウハウもあったと言えるだろう。

他にも銃ではないが、中核派が鉄パイプで作った簡易的なロケットで首脳会議を開催している迎賓館に向かって攻撃したということがあった。

今回使用された凶器が自作銃であった場合、このような簡易的な武器が一国の元首相を銃撃したという成果を挙げ広く認知されるため、世界各国で暗殺やテロ活動、ゲリラ活動で使われる可能性が十分にあるだろう。

今後の街頭演説では、要人の防弾チョッキ着用、政治家と市民との距離制限が設けられるなど今までとは違う風景になるかもしれない