今回の参院選にNHK党から出馬している、暴露系ユーチューバー「ガーシー」こと東谷義和氏。東谷氏のツイッターアカウントは、先月末に突然閉鎖されたが、ツイッター上には「ガーシー」のキーワードが躍っている。
「#ガーシーに1票」「#ガーシーに投票したよ」「#ガーシーに投票してきたよ」などのハッシュタグとともに、「ガーシー」と記載した投票用紙の画像をアップしているユーザーが少なくないのだ。
#ガーシーに投票してきたよ
#ガーシーに1票
微力だけど応援します。政治圧力に負けるな!
#ガーシーに投票してきたよ
行ってきた
#ガーシーに投票してきたよ
立花さん!ガーシーに投票したよ〜」
「人生で初めて投票に行った」という20代とみられるユーザーや、今回初めて選挙権を得た10代のユーザーなど若い世代が多いのが特徴だ。若い世代の投票率がアップすることはもちろん良いことなのだが、こうした行為が蔓延すると、秘密投票が形骸化しまうと危惧する人も少なくない。
「秘密投票という選挙の根幹が崩れる」指摘も
秘密選挙とは、投票がどの選挙人によってされたかを秘密にするという選挙の原則で、公職選挙法には「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない」と規定されている。
以前、東京都内の市議選に出馬・落選した男性は自身のブログに、「投票用紙に名前を書いた写真をアップするのは止めるべきだと思っています」と綴る。その理由として「秘密投票という選挙の根幹が崩れてしまうからです」というのだ。
こうした危惧を抱くに至るには、この男性の過去の経験がある。
ブログによると、男性が20歳の頃の勤務先の上司がある政党の支持者で、選挙のたびにある政党に投票することをお願いされていたという。この上司に普段から世話になっていた男性は、お願いされるたびに断らずに「〇〇党に入れました」と言っていたのだそうだ。しかし、男性は「〇〇党」の支持者ではなかったので、実際には違う政党に投票していたという。男性は、「これは秘密投票が守られていたから出来たことです」と当時を振り返る。
男性は、その当時にカメラ付き携帯電話があり、投票用紙の写真を撮るようにその上司に言われたら、上司と自身の関係性から「〇〇党」に入れるしかなかったと綴っていた。
東京都選管「自発的に行うのはOKだが……」
元衆議院議員の宮崎岳志氏も同様の意見のようで、投票先を撮影することについて、ツイッターで「組織票の締め付けに使われるようになる」と警鐘を鳴らしていた。
最近はN国ガーシー陣営から始まって、他党候補の支持者の間でも記入済み投票用紙の写真をSNSにアップするケースが相次いでいるが、これ必ず組織票の締め付けに使われるようになる。秘密投票という選挙制度の根幹が崩れるから、来年の統一地方選の前に公選法を改正して、違法化した方がいいよ!
最近はN国ガーシー陣営から始まって、他党候補の支持者の間でも記入済み投票用紙の写真をSNSにアップするケースが相次いでいるが、これ必ず組織票の締め付けに使われるようになる。秘密投票という選挙制度の根幹が崩れるから、来年の統一地方選の前に公選法を改正して、違法化した方がいいよ!
— 宮崎タケシ元衆議院議員@維新 (@MIYAZAKI_Takesh) June 30, 2022
投票用紙に候補者の氏名を記載した投票用紙を撮影し、ツイッターなどのSNSにアップすることについて、公職選挙法上は問題ないのだろうか。東京都選挙管理員会に問い合わせたところ、次のような回答を得た。
「(投票用紙の撮影や、写真のSNSへのアップを)自発的に行うのであれば、法的に問題ありません。ただ、特定政党の支持者が候補者への投票を第三者に依頼する際に、写真を撮ることや、投票後に証拠としてそれを見せろと強要することはNGです」
確かに、公職選挙法には、「何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名又は政党その他の政治団体の名称若しくは略称を陳述する義務はない」と記載されている。投票した人の氏名や政党名を「陳述してはならない」とは書かれていない。あくまで、「陳述する義務」がないのだ。
とはいえ、宮崎氏が指摘するように、今後、組織票の締め付けにこの手法が使われないとも限らない。北海道や神奈川県、大阪府などの知事選挙、札幌市、大阪市、広島市などの市長選挙が行われる予定の来年の統一地方選までに、何らかの対応をするべきではないだろうか。