2022年F1第10戦イギリスGPの決勝レース。リスタートで首位を守ったカルロス・サインツだったが、徐々にチームメイトのシャルル・ルクレールが迫ってきた。ターゲットタイムを出せなかったサインツに対し、チームは順位の入れ替えを要求。ルクレールが首位に立ったが、セーフティカー導入時にピットストップを行ったサインツは終盤にトップの座を奪い返し、キャリア初優勝を飾った。イギリスGPのレース後半を無線とともに振り返る。
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レース中盤。マシンにダメージを受け、6番手まで順位を落としたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、その後もまったくペースが上がらない。
(25周目)フェルスタッペン:全然グリップがない……
フェルスタッペン:どうしてこのクルマに、このタイヤ(ハードタイヤ)を履かせたのか全然わからない。氷の上を走ってるみたいだ
(29周目)ペレス:マックスはどこにダメージを受けたの? どのコーナーで?
ヒュー・バード:デブリを踏んだようだ
30周目前後、2番手カルロス・サインツ(フェラーリ)に再びシャルル・ルクレール(フェラーリ)が迫っていた。
(30周目)パドロス(→ルクレール):自由に競争していい。フリーファイトだ
リカルド・アダミ:ターゲットタイムは32秒2だ。それが無理なら、順位を入れ替える
サインツ:わかった。もう1周待ってくれ
パドロス:サインツに32秒2で走れ、無理なら順位を入れ替えると伝えてる
ルクレール:32秒2は、ハミルトンに対しては十分じゃない。あくまで僕の意見だけど、でも決めるのはきみたちだ
(31周目)アダミ:十分じゃない。順位交換だ
サインツ:了解した
これでルクレールが2番手に上がった。そして33周目にルイス・ハミルトン(メルセデス)がピットインし、ルクレールはついにトップに立った。
しかし39周目、エステバン・オコン(アルピーヌ)が、コプス手前でストップ。セーフティカーが導入される。サインツ、ハミルトン、ペレスはピットに向かい、ソフト新品に履き替えた。ところがなぜかルクレールだけは、ステイアウトを指示された。
(40周目)ハミルトン:う〜ん、これはほんとに正しいタイヤなの?
ピーター・ボニントン:順位ロスはしてないよ
好調時のハミルトンのぼやきが出てきた。
パドロス:サインツとハミルトンは、ともにソフトだ
ルクレール:これは厳しいね
ルクレールは首位からの陥落を、すでに覚悟しているようだった。
(42周目)サインツ:僕の方がシャルルより速く行けるよね
ソフト新品を履いたサインツが、ステイアウトしたルクレールにさっさと順位を譲ってほしいというアピールだった。
43周目、レース再開。残り10周だ。再開直前、サインツにアダミが指示を出す。
アダミ:(ルクレールから)10車身の間隔にいないといけないからね。10だ
サインツ:わかった、わかった。でも間隔を開けすぎたら、後ろのハミルトンにやられてしまう。これ以上、話しかけないでくれ
サインツ:僕を信じてくれ。それをやってたら、もっと失ってしまう
アダミ:了解だ
そしてサインツはルクレールを抜き、首位に立った。3番手に上がったペレスも、ルクレールに迫る。4番手ハミルトンも負けずに、最速タイムを連発する。
(45周目)サインツ:あと何周?
アダミ:8周だ
バード(→ペレス):DRSを使えるぞ。ルクレールをやっつけよう
45周目から46周目にかけて、ルクレールとペレス、ハミルトンが三つ巴の2番手争いを繰り広げる。いったんはハミルトンが2番手に上がったが、ペレスが抜き返した。その間に首位サインツは、どんどん2番手以下を引き離していった。
アダミ(→サインツ):最速タイムは30秒8だ。あと2周ある。回生エネルギーは大丈夫だ
しかし最終周に最速タイムを叩き出したのは、ハミルトンだった。サインツは151戦目にして、初ポール、初優勝を果たした。
アダミ:バモス!(行け!)
サインツ:やったね、やったぞ!
マッティア・ビノット代表:ブラボー、カルロス!
ボニントン:P3、そして最速タイムだ。素晴らしいドライブだった
ハミルトン:ハードワーク、本当にありがとう。嬉しいポイントだよ
アダミ:ハミルトンが30秒5で最速だった
サインツ:わお。でも、どうでもいいよ(笑)
アダミ:こんなレースをしてくれて、本当にありがとう
サインツ:感謝は、僕の方だ。フェラーリで、そしてシルバーストンでF1初優勝ができるなんて、なんて言ったらいいのかわからない
歓喜に沸くサインツ陣営。対照的にルクレールは、不可解な戦略を指示したチームへの不満を、必死に押し殺しているようだった。
ルクレール:僕らはレースを失った。ああ、なんてことだ。唯一ポジティブな点は、カルロスが勝ったことだ。この勝利を、祝おうじゃないか
パドロス:グッジョブだった