夏休みは家族旅行や友人たちとの旅行など、同乗者を乗せる機会が増える時期。そんな時に気になるのが「クルマ酔い」。ひとりでもクルマ酔いで体調不良になったりすればクルマ酔いをした本人はもちろんのこと、参加者全員の旅を楽しもうという気持ちもダウンしてしまう……。
そんなさみしい事態に陥らないために、クルマ酔いの防止策、酔ってしまった時の対処法を紹介する。ドライブや旅に出かける前にチェックしておけば安心な情報満載だ。
文/室井 圭、写真/写真AC
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クルマ酔いの原因は「耳と目からの情報のズレ
まずはクルマ酔いのメカニズムを簡単に解説しよう。
クルマに乗っている時に感じる加速感、揺れ、コーナリングなどにともなう体の動きは内耳にある三半規管や耳石器が感知し、その情報が脳に伝えられる。これと同時に脳には目からの視覚情報も伝えられる。しかし、急加減速などで体が予想外の動きをすると目はその激しい動きについていけず、視覚情報は体の動きとは大きく乖離したものとなってしまう。
例えば、耳からは体が激しく動いている情報が送られてきているのに、目からの情報は静止画だったりするということだ。
このように脳は耳と目から送られてくる「情報のズレ」が大きいとそれを不快と感じ、内臓の動きを調整する働きを持つ自律神経を刺激する。すると自律神経の働きが低下してしまい、その結果として現れるのが、吐き気、ふらつき、頭痛などの症状だ。こういったしくみから、「動揺病」や「加速病」と呼ばれることもある。
運転している人でもクルマ酔いをする
運転している人はクルマ酔いしないと思っている人は多いだろう。しかし、意外にもプロドライバーのなかにはクルマ酔いに悩まされるドライバーも多く、なかには、業務継続が難しくなるような症状に悩まされる人もいるという。
ただし、同乗者よりは運転者は圧倒的にクルマ酔いしにくいというのは事実。その理由は、運転手は自分でハンドルを切ったり、ブレーキやアクセルを踏んでいるため、よほどの緊急事態ではない限り体が想定外の動きをしたりすることがなく、耳と目から入ってくる情報とのズレが生じにくいためだ。
では、運転者がクルマ酔いしてしまう原因はどこにあるのか?
最大の原因は疲れ。特に、クルマ酔いの原因となる自律神経の乱れをもたらす睡眠不足は大敵だ。睡眠不足による体調不良は自覚できない場合も多いので、長距離を運転する予定があるという場合には、前日には十分な睡眠時間を確保しよう。睡眠時間の目安は7時間前後と言われている。
また、過度の空腹状態もクルマ酔いのきっかけになる。空腹になると血液中の糖の量が減り、血糖値が低下してしまう。すると、脳の働きが低下して、ちょっとしたズレにも対応できなくなってしまうのだ。長時間食事ができない、お腹が鳴るくらい空腹になった場合は、飴やチョコレートを口に含むと血糖値の低下を防げる。
同乗者をクルマ酔いさせないコツ
上記の対策は同乗者にも有効だが、ここからは同乗者を酔わせないためのさらなる予防策を紹介しよう。クルマ酔いしやすい人を同乗させる場合には、以下のようなことに気を遣ったり、アドバイスしてあげよう。
●急のつく運転をしない
クルマ酔いの最大の対策法は、急ブレーキや急ハンドル、急加速、あおりハンドルなど、クルマの揺れが大きくなる運転をしないこと。簡単に言うと、同乗者の頭が「カックン、カックン」するような運転をしないことだ。
●クルマの動きに合わせて体を動かしてもらう
運転者は無意識のうちに曲がる方向に体を傾けたりして情報のズレを最小限にしているが、運転をしていない同乗者は、曲がる方向と反対側の方向に体を傾けたりしてしまうことで情報のズレが大きくなってしまう。そのため、運転者に近い視点で前方を見るようにして、カーブにさしかかったら運転者と同じ方向に体を傾けるなど、クルマの動きに合わせて体を動かしてもらうようにしよう。
●スマホや本などを見させない
スマホを見たり、本を読んだりすると視線は固定されているため、目からの情報は静止画であるのに対し、耳からの情報は体が動いているという情報になってしまう。その結果、情報のズレが大きくなり、よりいっそうクルマ酔いしやすくなってしまうのだ。
●助手席に座らせ、横に流れる景色ではなく、進行方向を見るよう促す
ドライバーと離れた座席ほど視覚情報のズレが生じやすい。そのため、クルマ酔いしやすい人は助手席に座り、さらに、動きの速い風景を見るのではなく、前方の遠くの景色を見るようにしてもらおう。
●会話をする
今回もクルマ酔いを起こしてしまうのではないかといった不安感も原因のひとつなので、気を紛らわせて不安感を取り去ることは有効な防止策となる。そのため、黙って運転をするのではなく、できるだけ同乗者と会話をしよう。
●車内の換気をこまめにする
タバコ、排気ガス、ガソリンの臭いなど、不快と感じる臭いはクルマ酔いを引き起こす。そのため、芳香剤・消臭剤を使用する、定期的に窓を開けて換気するなどの工夫を。また、外気温が高い時や低い時は内気循環にしがちなので、定期的に外気循環に切り替えるようにしよう。
それでも酔ってしまったら……
どんなに対策をしても酔ってしまうことはある。そんな時には、まずは換気をして車内の空気の入れ換えを行おう。症状がひどい場合は、クルマを停めて外に出て、伸びをしながら深呼吸をしよう。呼吸がハアハアと浅くなると、自律神経がいっそう興奮して、症状が治まらなくなってしまうからだ。
また、ベルトなどの体を圧迫するようなものは緩めて、なるべく体を圧迫しない状態をつくろう。
氷を口に含んだり、食欲がある場合はアイスクリームなどの冷たいものを食べると自律神経の乱れを整えることができ、症状をやわらげることができる。アイスクリームは血糖値も上げることができるので空腹の時にはより効果的だ。
飲み物でお薦めなのは、炭酸系の飲料。ただし、カフェインは自律神経を興奮させる作用があるのと胃に負担をかけるため、嘔吐などがひどい場合は、コーラやコーヒーは控えたほうが無難だ。
気持ちが悪い時は酸味があるものを口に入れたくなるが、梅干しや柑橘類などの酸味が強いものを食べると胃を刺激して酔いを悪化させてしまう。柑橘系の飲み物も避けよう。
運転者は酔い止め薬を飲んでも大丈夫か?
クルマに乗るたびに酔ってしまうという人は、酔い止め薬を服用するのも手だ。ただし、酔い止めには脳の活動を停滞されたり、眠気をもよおす成分が配合されているものが多いので、運転をする場合には酔い止め選びには細心の注意が必要だ。
特に注意したいのが多くの酔い止め薬に配合されている「抗ヒスタミン剤」。脳の働きを低下させて吐き気などの症状を抑える効果を持つため、眠気をもよおしたり、集中力が低下しやすくなる。
抗ヒスタミン剤を配合していない酔い止め薬が販売されているので、運転する時に酔い止めを飲む場合は、自己判断で購入せず、調剤薬局または、薬剤師のいるドラッグストアで薬剤師に相談してから購入しよう。
また、酔い止め薬はクルマに乗る直前ではなく、1時間~30分くらい前に飲んでおくのが効果的だ。
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