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 いよいよ深刻化しているトラックドライバー不足に対して、官民挙げての取り組みが本格化しています。

 でも、いくら敷居を低くして仕事に就いてもらっても、トラックドライバーという職業が魅力的でなかったら、売り手市場の今の世の中、即「転職」も充分考えられます。

 どうしたら魅力的な職業になるのか、それは当の本人に聞くのが一番。さまざまなトラックを乗り継ぎ、現在は塵芥車のドライバーに就いているぱんだパパに聞きました。

文/塵芥車ドライバーぱんだパパ 写真/フルロード編集部
*2014年9月発行トラックマガジン「フルロード」第14号より


かつては景気のいい話も……

 私がこの業界に入った頃、バブル経済は終焉に近づいていましたが、その数年前には証券会社の新入社員の初ボーナスが100万円だとか、高級外車が飛ぶように売れるといった景気のいい話ばかりが飛び交っていました。

 学歴の無い私は、バブリーな彼女とつきあっていくにはこの先どうすればいいのか、どうやって収入を上げればいいのか、周りに感化されながら、もがいていました。そんな折、「10tウイングを償却でやってみないか」との話に飛びつき、独立。将来の社長を夢見て走り出しました(笑)。

 大阪~関東で荷物を積み合わせ、高速に乗れば重量オーバーで「次の出口で下りて下さい」とお声掛けいただき、坂道発進すれば、あまりの遅さに後ろからまくられ、いろいろな障害をかいくぐりながらも、当時は水揚げ(売り上げ)180万円、固定費・燃料費・高速代を差し引いて80万円強を持ち帰ったこともありました。

 しかし、あとはバブルがはじけ、お約束どおりドツボへまっしぐら……。トラックを降りて、水屋、運送会社での営業・配車と運送畑を歩んできて、今は関西で塵芥車のドライバーをやっています。

ぱんだパパはさまざまな運送関連の仕事を経て、現在は塵芥車のドライバーに就く

 さて、前置きが長くなりましたが、なぜトラックドライバーという職業が魅力を失ったでしょう?

 1989年の「物流二法」を端緒とする規制緩和で、この業界にトラック運送事業者がどっと増えたのはご存知の通り。もちろん成功した方もおられるのでしょうが、いっぽうで同業者同士でのパイの取り合い、運賃のダンピング、過当競争の挙句、悲惨な事故も後を絶ちません。

 規制緩和に「夢」を描いた人も多かったと思いますが、今は「こんなはずじゃなかった……」と嘆き悲しんでいるのじゃないでしょうか?

 この「悪しき規制緩和」が元凶であるため、トラックドライバーをもっと魅力的な職業・職場にするためには病弊を取り除いて体質改善しないと、なかなか進捗しないかもしれませんが、それでも、もう一度考えてみて欲しいことが多々あります。

運転手不足に「処遇改善手当」を!

 たとえばドライバー不足に関してですが、他業種の話になりますが、介護職の人手不足のカンフル剤に「処遇改善手当」なるものがあります。現場の声によれば雀の涙程度で、とうてい改善されるほどのものではないようですが、こういった手法を積極的に取り入れるのも一つではないでしょうか。

 たとえば、地方議員のカラ出張がよくニュースになったりしていますが、こんなのは税金の無駄づかいの最たるものでしょう。もっと国民一人一人の身になって、意味のあるお金の使い方をしてほしい。トラックドライバーは、どこぞの議員より、よっぽど社会のお役に立っていると思います。

 ただ、トラックドライバーも自らの責務を自覚してほしいですね。どうしたら会社が潤い、給料が上がるのか? ハンドルを握る我々も、ただ単に嘆くばかりでなく、もっと真剣に考える必要があると思います。

 高速を全開で走行すれば通常にくらべ燃料費が3~4割増え、会社の経済状況がひっ迫すれば当然給与に影響します。事故が増えれば保険料が上がり、負のスパイラルに陥ります。

 リミッターを外してかっ飛ばしている限り、しんどさは増すばかり。4t車にもリミッターが必要かもしれません。また、ブラックな会社だと、運転手に団体保険を掛け事故太りしてみたり、それでなくても駒扱いでフラストレーションが溜まるばかり。

トラックドライバー自身の自覚も大切 

 実際、辞めた運転手のクルマを片付けていたら、私を含む事務方の悪口を書いたノートが出てきたことがありました。やはり労使が同じ方向を向いていないと改善はないかな、と改めて思います。

 若い頃、社長から「自分が経営している気持ちになれ」と聞かされました。今になってですが、その言葉が理解できます。

 以前テレビで紹介されていた大手運送会社は、点呼の際、家族の写真と免許証を見せるそうです。とてもいいことだと思いました。

 我々ドライバーは、荷物以外にも家族や恋人など、たくさんの人の思いを背負っているのを忘れないでほしい。職場を良くするも悪くするも、ハンドルを握るドライバー自身にかかっていると思います。

 そして、トラックドライバーが自らの仕事に自信と誇りを持ち、職務をきっちり全うすれば、その姿に触発されて、若い世代にトラックドライバーという職業の「カッコよさ」が伝わるはず。こんなことからドライバーを目指す若い人たちが増えるかもしれません。

職場を良くするも悪くするも、ハンドルを握るドライバー自身にかかっているとぱんだパパ

 トラック業界には、さまざまな問題が山積しているけれど、要は、一人ひとりが出来ること・やるべきことをきっちり果たしていくしかないと思います。

 「日本の道路は血管で、ハンドルを握る我々は血液」と誰かが言っていました。血圧正常・ストレスためず、サラサラ血液で健康第一。健康を取り戻すべく前向きに前進あるのみだと思います。

投稿 トラックドライバー人口の減少に歯止めを! 現役ドライバーに聞く魅力的な職業の在り方自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。