「残念ながらQ2での最後のアタックで、タイヤが冷えたままタイムアタックに入り、1コーナーで大きくスナップ(オーバーステア)が出てしまい、アタックが台無しになってしまいました」
これは、アルファタウリが予選後に出したチームリリースでの角田裕毅のコメントだ。しかし、そこにはなぜタイヤが冷えたのかという理由は書かれていない。
じつは角田はそのことを日本のメディアだけに匂わせていた。
「理由は言えませんが、(1コーナーで)スナップ(オーバーステア)が出て……。フラストレーションがたまる予選でした」
そこで、筆者が「最後のアタックの状況を整理したいのですが、角田選手の方が(ピエール・)ガスリーより先にコースインしていたのに、アタックはガスリーのほうが先でしたよね」と問いかけると、角田はその途中で「それが、スナップが出た原因です」と語った。
つまり、こういうことだ。Q2の最後のアタックは角田のほうがチームメイトのガスリーよりも先にピットアウトした。ところが、アウトラップで最終コーナーのひとつ手前の9コーナーに差し掛かるところで、前方でアタックに入ろうとしていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)に引っかかってスローダウン。すると次の瞬間、後方にいるはずのガスリーが角田をオーバーテイクしていったのだ。
ガスリーにオーバーテイクされた角田はさらにガスリーとの間隔も空けなければならず、予定よりも長くスローダウンを強いられたため、タイヤが冷えてしまい、1コーナーでオーバーステアが出て、コースオフしてしまったというわけだ。
自分を抜いてアタックに入ったチームメートのガスリーは自己ベストを更新したが、11番手に終わった。
いかに角田がガスリーの行為に怒っていたかは、Q2を終えてミックスゾーンに来たとき、メディアと目を合わさずに通り過ぎようとしていたことでもわかる。
なんとか、怒りを抑えてメディアの質問に答えていた角田。普通にタイムアタックしていれば、ガスリーのタイムを上回ることができたと思うかと質問すると「全然、できたと思います」と言い切った。
筆者が角田に「この後のミーティングで、アウトラップでガスリーに抜かれたことについて話し合いたいですか」と尋ねると、「そうですね、もちろん」と語って去っていった。
その後、ミックスゾーンにやってきたガスリーに、「ユウキはアウトラップであなたに抜かれてアタックが台無しになったと言っていますが」と問うと、「でも、僕だってタイヤを温めていて、あれ以上スロー走行していたら、タイヤが冷えるから」と、角田の主張を意に介さなかった。
イギリスGPから5日後、アルファタウリは再びチームメイト同士による戦いが勃発してしまったようだ。