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クルマが動かなくなるのが嬉しい!! もはや手遅れ 「輸入中古車の沼」上級編 世界各国のディープすぎる7台

 輸入中古車沼での溺れ方も板についてきたことだろう。こうなればさらにディープな各国中古車と暮らし、パンピーから心配されるほどのカーライフを構築すべし!

 今回はすべての困難が快楽に思えてしまう道、輸入中古車沼の上級編をお届け。はたしてそこにはどんな苦難と快楽が待つのか???(※ほんとにハマっちゃってもどうか事故だけは起こされませんよう! ご安全に!!!)

※本稿は2022年5月のものです。中古車相場は執筆当時のものです
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年6月10日号

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■このレベルまで溺れきればすべての困難は快楽に変わる!

 初級、中級の段階をひとつずつクリアしていった頃には、貴殿も輸入中古車沼における立派な先人というか“達人”の域に達しているはず。

 そうなったならば、さらにディープでハードコアな輸入中古車を人生の相棒として選び、さらに沼の奥底へと向かっていこう。

 あくまで例えばだが、車種的には「ややこしいハイドロニューマチックシステムを採用した往年のシトロエン」や、「ちゃんとメンテしないとすぐぶっ壊れるが、フィーリング的には珠玉すぎるV12エンジンを搭載したデイムラー ダブルシックス」などが、沼の上級者にふさわしい一台と言えるはずだ。

 しかし、ここで沼の住人ではない国産車愛好家は言うかもしれない。「そ、そんなクルマを買ってしまって大丈夫なのか? いくら上級レベルに達したとはいえ、自分で全部のメンテナンスができるわけでもなかろうに……」と。

 ご心配いただけるのはありがたいが、これが意外と大丈夫だったりするのだ。

 輸入中古車沼を泳ぎきるうえでの(あるいは溺れきるうえでの)上級者になった頃には、まずは自然と“目利き”ができるようになっている。

 ヤバい中古車販売店はその半径50m以内に入っただけで、なぜか判別できるようになる。そして中古車のコンディションも、試乗せずともなぜかわかるようになるのだ。

 それと同時に「沼の内部の人的ネットワーク」も構築されているだろう。

マニアック車の極致といえるシトロエンDS。だがこれで通勤してる猛者を筆者は知ってるぞ!

 あの車種を買うのであれば、Aというショップに話をすればナイスな個体を探してくれて、この箇所の修理を行いたいなら、Bという専門工場に頼めば必ずなんとかしてくれる。

 そして海外から部品を個人輸入したいなら、Cさんに相談すればいろいろ教えてくれる─といったネットワークが、あなたのまわりにほぼ完成されているのだ。

 経験によって培った“目利き力”と、歳月と己の努力によって構築された“ネットワーク力”のWパワーにより、上級レベルの輸入中古車沼ライフというのは「意外とラクで快適」だったりもする。

 それゆえさほど心配する必要はないというか、何事も「案ずるより産むが易し」の精神であたれば、道は自ずと開けるものなのだ。

 とはいえ上級レベルの沼落ちを果たすまでにはそれなりの時間はかかり、そしてもちろん、途中で「ハイドロのLMHが下血した」「空冷911のオイル漏れでマンション住民から苦情が出た」「ランチア デルタインテグラーレがいつまでたっても工場から退院しない」などの艱難辛苦は、いろいろと経験することになるだろう。

 しかし沼に溺れきった人間は、それさえも快楽の一種と感じられるほどの“悟り”を得ているはず。それゆえ、何の心配もいらないのだ。

■MGB/MGミジェット

MGB/MGミジェット…中古車相場:150万〜380万円/ドロ沼度:★★★

 1989年にユーノス ロードスターが登場する以前の世界で、一世を風靡した英国製ライトウェイト2シーター。格安車にそのままの状態で乗ることはほぼ不可能だが、しっかりとした納車整備を施せば、わりと普通に乗れるはず。屋根を颯爽と開け放ち、沼の底でも呼吸したい。

中古車相場:150万〜380万円
●ドロ沼度:★★★
☆☆

■往年のハイドロシトロエン

 窒素ガスとオイルでサスペンションを構成し、その油圧をブレーキにも使うハイドロニューマチック。構造が複雑なため故障が頻発したが、ハイドロニューマチックについての正しい知識を持っている専門店がビシッと直せば、そうそう壊れない。輸入中古車沼の中心付近にあるクルマだ。

●中古車相場:100万〜1300万円
●ドロ沼度:★★★★☆

■ランチア デルタ インテグラーレ

 普通の実用ハッチバックだったデルタを4WDターボ化し、さらに“エボルツィオーネ(進化)”を重ねていった大人気モデル。「宇宙一壊れる」とも言われるが、元オーナーである筆者に言わせれば、そうでもない。定期的なメンテは必須だが、「1年中工場に入ってる」ということもないクルマだ。

●中古車相場:370万〜1000万円
●ドロ沼度:★★★★☆

■デイムラー ダブルシックス

 ジャガーXJの上級版だったデイムラーに、5.3LのV型12気筒SOHCエンジンを搭載したスーパーエレガントサルーン。エンジン本体に加えて電装系の故障も多いが、往年の英国車を触れる“主治医”を見つけられたなら、なんとかなる。世界遺産として美しいまま維持したい一台だ。

●中古車相場:220万〜640万円
ドロ沼度:★★★★

■フォルクスワーゲン タイプ2

フォルクスワーゲン タイプ2…中古車相場:300万〜800万円/ドロ沼度:★★★★

「ワーゲンバス」との愛称で知られるトランスポルター(商用車)の第1世代。

 現在の相場はかなり高騰しており、レストアずみの個体は500万円以上。故障でドロ沼にハマるというよりは、「カスタム沼」という深い沼にどんどんハマるタイプのクルマだ。

●中古車相場:300万〜800万円
●ドロ沼度:★★★★☆

■ポルシェ 911(初代)

 言わずと知れた初代ポルシェ 911。現代の911とはまったく異なる「小ぶりで軽量でダイレクトで!」という乗り味は大いに魅力的だが、そもそも相場が高騰しすぎており、「沼うんぬんの前に、そもそも買えないよ!」という状況。買えば、専門店も多いので維持はラク(たぶん)。

●中古車相場:1600万〜3000万円
●ドロ沼度:★★★☆☆

■フィアット 500

 現在販売されているフィアット500のご先祖様にあたるイタリアの小型車。搭載エンジンは最高出力15〜23psの空冷2気筒OHVであるため「これ1台ですべてをまかなう」というのは難しいが、「趣味のセカンドカー」としてはごく普通に使っている人も多い。

●中古車相場:200万〜500万円
●ドロ沼度:★★★★☆

■溺れるが、死ぬことはない。それが輸入中古車沼だ!

 古めの輸入中古車は「とにかく金がかかる」「すぐ壊れる」などとネットでは言われがちだが、実際に沼で溺れていた立場からすると「そうでもない」というのが正直なところ。

 まぁ故障というものに対する基準の違いゆえかもしれないが、「確かに溺れるけど、溺れ死ぬことはない」というのが輸入中古車沼。気になる人はぜひ一度、足をちょっとだけ沼に入れてみて!


【番外コラム】絶版輸入中古車の正しい取り扱い方

異音や異臭には常に敏感であるべし。早めに対処すれば、結果として安上がりになる

 まず何よりも大切なことは「信頼できる“主治医”を探し、その人に定期的に状態を見てもらう」ということ。輸入中古車というのは、人間にたとえると「軽い持病持ちの中高年または老人」みたいなもの。それゆえ健康診断すらも受けないままでいると、そのうち必ずぶっ倒れることになる。

 だが特定の主治医に愛車の状態の変化を観察してもらい、必要なタイミングで必要な手を打ってもらえば、クルマというのはそう簡単にぶっ壊れるものでもない。

 そして同様に大切なのは「メンテ代はケチらない」ということと、異音や異臭を感知したら、なる早でプロに見てもらうことだ。早い段階で対処することが、それなりのお金がかかったとしても、「結局は一番安上がりだった」という結果につながるのだ。

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