2022年08月07日
Suzuka 8 Hours
EWC 2022 Round 3
鈴鹿サーキット
#33 Team HRCが全車を周回遅れにする圧勝。ホンダとして8年ぶり28回目の優勝を飾る
■レース2時間レポート
『鈴鹿8時間耐久ロードレース』(以下、鈴鹿8耐)は、8時30分から9時25分までウォームアップランを行いました。雨の影響が残る路面コンディションでしたが、#33Team HRC(長島哲太/高橋巧/イケル・レクオーナ)は唯一の7秒台となる2分7秒957を記録しトップタイムで走行を終えました。
決勝スタート時には太陽が顔を出し、強い日差しが照りつけます。最終スターティンググリッド表には、#5F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/ジノ・リア/マイク・ディ・メリオ)のリアの名前がなく、フックとディ・メリオのふたりで挑むことになりました。
気温27度、路面温度は44度、湿度は82%のコンディションのなか、45台がグリッドに並び、11時30分にスタートが切られました。ホールショットはフックが奪い、高橋、レオン・ハスラム(カワサキ)が続き、トップ3の後ろに#73SDG Honda Racing(名越哲平/浦本修充/榎戸育寛)の浦本がつけます。
オープニングラップをフック、ハスラム、高橋、浦本、#17Astemo Honda Dream SI Racing(作本輝介/渡辺一馬/羽田太河)の作本の順で通過。高橋はポジションを挽回して2番手で1コーナーをクリアしました。フック、高橋、ハスラムに浦本、作本が追い付いてトップグループを形成しましたが、スプーンカーブ手前で転倒した作本が浦本に接触し、浦本も転倒。130Rで高橋が首位に立ったところでセーフティカーが入ります。
セーフティカーが11時52分、8周目に解除されると、一気にグレッグ・ブラッグ(スズキ)が首位に立ちます。ハスラム、高橋、フックと続き、ハスラムが首位に出て、それをグレッグが追いますが、高橋がグレッグをパスして2番手に浮上。さらに10周目突入のストレートで高橋がトップへ躍り出ます。シケインで#104TOHO Racing(清成龍一/國峰啄磨/國川浩道)の國峰が5番手へと浮上します。13周目に入ると高橋は逃げ始め、ハスラムに2秒384とリードを築きます。
26周を過ぎ、ライダー交代が始まるなか、#5F.C.C. TSR Honda Franceはフックからディ・メリオへと交代。27周目も高橋は首位を走り、2番手ハスラムに9秒358と差をつけます。29周目に高橋がピットイン、41秒の素早いピット作業で長島へと変わります。31周目、長島はトップでクリア、2番手のジョナサン・レイ(カワサキ)に13秒694の差をつけます。
長島は2分7秒台で走行を続け、40周目には2番手のレイとの差は16秒089に拡大。清成は渥美心(スズキ)を捉え、6番手に浮上します。50周目、長島は2番手のレイに20秒722と、その差を大きく広げました。スタートから2時間が過ぎ、2度目のライダー交代のため、ピットが騒がしくなります。
■レース4時間レポート
13時35分、スタートから2時間が過ぎたところで、2周目のアクシデントで大破したマシンを修復していた#17Astemo Honda Dream SI Racingが作業を終え、渡辺がコースへ復帰しました。59周目、Team HRCは長島からレクオーナへとライダーを交代。続いて、2番手の#10 カワサキがレイからローズへとライダーを交代。路面温度は53度まで上昇し、酷暑での戦いとなりました。
2時間18分過ぎ、デグナーで転倒したマシンが炎上したことで、再びセーフティカーが入ります。ここでレクオーナとローズは別々のセーフティカーに先導されることになり、レクオーナはこれで半周のアドバンテージを築くことになります。2時間30分過ぎにセーフティカーが解除され、レクオーナと2番手ローズとの差は1分40秒129まで広がりました。
3番手にハニカ(ヤマハ)、4番手にブラッグ(スズキ)、5番手に國川(TOHO Racing)、6番手に生形(スズキ)、7番手に日浦(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)となります。#88 Honda Asia-Dream Racing with SHOWA (モハメド・ザクワン・ビン・ザイディ/ゲリー・サリム/ヘルミ・アズマン)のザクワンは、12番手までポジションを上げてきました。ジョシュ・フック(F.C.C. TSR Honda France)はブレーキトラブルのためイレギュラーのピットインがあり、16番手からの追い上げを図ります。
スタートから2時間51分過ぎ、#73SDG Honda Racingの本田重樹監督は「フレームとエンジン以外のすべてを交換し修復した。しっかり治して最後まで走り切る」と話し、榎戸育寛をコースに復帰させました。
レクオーナはトップを快走、2番手のローズを周回遅れとします。86周目には高橋へと交代し、ローズはレイに交代。トップ2台は2分7秒台へとタイムを上げます。高橋、レイ、カネパ(ヤマハ)、渡辺(スズキ)、津田(スズキ)、國峰(TOHO Racing)、濱原(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)が続きます。アズマンは11番手へと浮上します。
レイは90周目には2分7秒177とベストタイムを更新して高橋を追いますが、レイが7秒台に入れると高橋も7秒台にアップして、その差は変わりません。100周をクリアしても、高橋はトップを安定したペースで周回を重ねていきます。レイはシケインで転倒を喫しましたが、マシンを起こしてコース復帰すると、ピットインせずに周回を重ねていき、2番手のポジションをキープ。#40 Team ATJ with JAPAN POST(高橋裕紀/小山知良/伊藤和輝)の高橋が9番手まで浮上してきます。10番手にアズマン、ディ・メリオは11番手までポジションを戻しました。
■レース6時間レポート
スタートから4時間が経過し、高橋(Team HRC)の快走は変わらず、1分42秒後方からレイ(カワサキ)が追います。6番手に清成(TOHO Racing)、國井(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)、高橋裕紀(Team ATJ with JAPAN POST)、サリム(Honda Asia-Dream Racing with SHOWA)と続きます。
112周目、Team HRCは41秒240のピットタイムで高橋から長島へと交代します。ここまで、EWCレギュラー参戦組の42秒から43秒台のタイムよりも早くライダーをコースへと送り出し続けており、ライダーの快走をサポートするチーム力を発揮しています。
113周目に#10 カワサキはレイからハスラムへ交代。マシン修復は行われず、通常のルーティンとしてコース復帰しました。2番手には#7 ヤマハのフリッツが浮上し、3番手にハスラム。トップの長島は2分7秒台をアベレージタイムとして、2番手フリッツを突き放していきます。
128周目には、長島はハスラムの背後に迫りパスしてカワサキを周回遅れにしました。大量の周回遅れを縫うようにパスして独走します。
ライダー交代でピットインしたヤマハを抜いてカワサキは2番手へ。清成(TOHO Racing)は5番手に浮上。7番手に日浦(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)、8番手に小山(Team ATJ with JAPAN POST)、9番手にサリム(Honda Asia-Dream Racing with SHOWA)、11番手にフック(F.C.C. TSR Honda France)が追い上げます。F.C.C. TSR Honda Franceはピットでマフラー交換を実施、1分38秒398のピットストップでディ・メリオがコースへと出て行きました。
Team HRCは138周目に長島からレクオーナに交代、レクオーナはトップでコース復帰します。カワサキは140周目にローズへと交代。レクオーナも2分7秒台にタイムを入れます。
150周目をレクオーナがトップでクリア、2番手ハニカ(ヤマハ)、3番手ローズ(カワサキ)とトップ3は変わらず。6番手に國川(TOHO Racing)、7番手に濱原(Honda Dream RT SAKURAI HONDA)、9番手にザイディ(Honda Asia-Dream Racing with SHOWA)、10番手伊藤(Team ATJ with JAPAN POST)、11番手ディ・メリオでコントロールタワー前を通過します。
スタートから6時間目を迎え、トップはレクオーナ、2番手ローズ、3番手カネパ(ヤマハ)と2位、3位がピットインのタイミングで入れ替わります。5番手には國川、7番手日浦、9番手ザイディ、10番手伊藤、11番手ディ・メリオ、12番手には#54GOSHI Racing(黒木玲徳/田尻悠人/安田毅史)。Team HRCの快走が続きます。
■レース8時間レポート
Team HRCは165周目にレクオーナから高橋へとライダー交代、#10カワサキもレイに交代します。170周をクリアして高橋がトップ、2番手カネパ(ヤマハ)、3番手レイのトップ3。
ホンダ勢は6番手に濱原(Honda Dream RT SAKURAI HONDA) 、7番手に國峰(TOHO Racing)、9番手にアズマン(Honda Asia-Dream Racing with SHOWA)、10番手高橋裕紀(Team ATJ with JAPAN POST)、11番手フック(F.C.C. TSR Honda France)、12番手に田尻(GOSHI Racing)と、トップ12に7チームが入り周回を重ねます。
最後のライダー交代が始まります。TOHO Racingは國峰から清成へ、Honda Asia-Dream Racing with SHOWAはアズマンからザイディへ、ホンダ勢は次々とピットに入ります。7時間が経過したところでフリッツ(ヤマハ)がスプーンで接触転倒、多重クラッシュのためセーフティカーが入ります。リーダーボードの順位は高橋、レイ、渡辺(スズキ)と変わります。7時間19分、セーフティカーが解除。Team HRCの高橋は196周でピットインし長島に交代、ピットストップは41秒776で最後のピット作業を終えます。
2番手のハスラム(カワサキ)が2分12秒台、3番手渡辺(スズキ)が2分13秒台で周回する中、長島は2分8秒台で夕闇のサーキットを走り、際立つ速さを見せます。
長島は独走したまま8時間を迎え、大歓声を浴びながら優勝のチェッカーを受けました。ホンダにとっては2014年以来の優勝、ワークスチームとしては2008年以来の勝利となります。計時予選、最終予選とレコードを更新しポールポジションを獲得。決勝では高橋、長島、レクオーナの全員が速さを示し、全車をラップする圧倒的強さを見せ、強いホンダ復活を成し遂げました。
2位はKawasaki Racing Team Suzuka 8H、3位にYOSHIMURA SERT MOTUL(スズキ)が入り表彰台を獲得しました。Honda勢は5位にTOHO Racing、6位にHonda Dream RT SAKURAI HONDA、8位にTeam ATJ with JAPAN POST、10位にF.C.C. TSR Honda France、11位にHonda Asia-Dream Racing with SHOWA、そして12位にGOSHI Racingと次々にチェッカーを受けました。
35位以下は、完走扱いとはなりませんでしたが、#17Astemo Honda Dream SI Racingは37位、#73SDG Honda Racingは43位でレースを終えました。
長島哲太(Team HRC)
「うれしい以外の言葉が思いつかない。2021~2022年とCBR1000RR-RSPの開発にかかわらせてもらい、そのポテンシャルを引き出し、見せられたことがうれしい。ホンダのスタッフは、ここまでやるのかとテストを重ねてきました。その努力に鈴鹿8耐の優勝で報いることができた。自分を開発にかかわられてくれたことに感謝しています。このことを通して成長させてもらいました。3年ぶりの鈴鹿8耐で勝ち、強いホンダを見せることができたと思います」
高橋巧(Team HRC)
「2019年の8耐は悔しさがずっとありました。勝つことができてうれしいです。長島選手が開発したマシンなので、それに慣れ、力を引き出すことができなければ、長島選手の足を引っ張ってしまうと思っていたので、そうならなかったことにホッとしています。イケル(レクオーナ)も初めての鈴鹿8耐なのに、しっかりと走ってくれました。HRCのスタッフは、ピット作業を含め、僕たちをしっかりと支えてくれ、送り出してくれました。かかわってくれた人、すべてに感謝しています。鈴鹿8耐で4度の優勝をすることができ、また、挑戦させてもらえるなら、尊敬する先輩である宇川さんの鈴鹿8耐最多勝の5勝に挑戦したいです」
イケル・レクオーナ(Team HRC)
「初めての鈴鹿8耐で勝てたことが本当に、本当に、本当に最高にうれしいです。長島選手がチェッカーを受けた瞬間が最高の気分でした。鈴鹿テストから、とても調子がよく、ホンダと長島選手が開発したマシンはすばらしくて、その力を自分が出せるようにと思っていました。セーフティカーが入ったときは、ふたりが築いた差が削られてしまうのかと心配になりましたが、問題なくクリアできました。最高のチームとチームメイトに感謝しています。来年もチャンスをもらえたら、また、鈴鹿に戻ってきたいです」
名越哲平(SDG Honda Racing)
「僕らをサーキット場に戻してくれたチームに本当に感謝しています。いろんな感情が入り交じりますが、8耐を通じて、改めてモータースポーツのすばらしさと表彰台に上がることの難しさを実感しました。今回の経験を活かして、来年はもっと成長してチームを引っ張っていけるライダーになりたいと思いました。応援してくださったファンの方々、本当にありがとうございました」
浦本修充(SDG Honda Racing)
「トップについていけると思っていた矢先のアクシデントだったので、本当に悔しい気持ちでいっぱいです。3人の状態もよく本番を迎えることができていました。何があるか分からないのが鈴鹿8耐だと痛感しました。それでも、鈴鹿8耐に参戦する機会をもらえたことをうれしく思っています。名越選手、榎戸選手を始め、支えてくださったチームや応援してくださったすべての方に感謝しています」
榎戸育寛(SDG Honda Racing)
「練習中チームに迷惑をかけてしまっていたので、この8耐はチームを始めとしたふたりに本当に感謝しています。結果を見ると、悔しい思いが大きいですが、初体験の8耐でライダーとして本当にいい経験をさせていただきました。この悔しさをバネに成長し、来年はうれし涙を流せるよう気持ちを切り替えて次のレースに挑みたいです」