「何が何でも母国ラリーの表彰台を掴み取る」その執念が実ったポディウムフィニッシュだった。
8月4~7日に開催されたWRC世界ラリー選手権第8戦『ラリー・フィンランド』の最終パワーステージ、SS22に登場したエサペッカ・ラッピ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)のトヨタGRヤリス・ラリー1は、本来あるはずのフロントウインドウがなく、フロントフェンダーやAピラー周りの外装、ルーフは歪み、リヤウイングも損傷していた。
その理由は、ラッピのマシンが直前に行われたSS21でコースを外れ、3回転するクラッシュを喫したためだ。幸いラッピと彼のコドライバー、ヤンネ・フェルムに怪我はなくマシンも走行が可能な状態であったことから、彼らはラリーを続行。SS21開始前と同じポジション、総合3番手をキープしたまま同ステージを走破した。
しかし、激しくロールしたマシンはフロントガラスが割れ、リヤウイングも一部が壊れた状態に。また、ラジエーターからは冷却水が漏れ出ていた。
それでも、ラッピとフェルムは諦めることなく自力での応急処置に務める。ロードセクションで漏水箇所を塞ぎ、不足した冷却水には自分たちの飲料水と道路脇の湖から汲んできた水を利用した。また、割れたフロントガラスは視界不良の原因となるためクルマから外し、代わりに車載のゴーグルを着用して最終ステージに向かうこととなった。
この段階で3番手ラッピと、4番手につけるエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)のタイム差は26.9秒。全長11.12kmのグラベル(未舗装路)ステージで争われる最終SS“ルイヒマキ2”でチームメイトから27秒遅れれば、最後の最後で表彰台を失うことになる。
そんななかで迎えたSS22、ラッピがドライブするトヨタGRヤリス・ラリー1は少しずつタイムを失いながらも順調にフィニッシュ地点へと向かう。そして、最後は有名なジャンピングスポットで飛ぶことなくステージを走破。タイムは僚友の10秒落ちとなったが最後までリードを保ち見事、ポジションを守ることに成功する。この結果、彼は母国フィンランドで表彰台に立つという戦前に語っていた目標を達成してみせた。
競技3日目には、跳ね上げた石でフロントガラスが割れるアクシデントも経験したラッピは、ラリー後に「(SS22の)最初の加速で屋根の大部分が飛んでいってしまったため、車内は風と騒音で大変なことになっていた。1回のラリーであまりにも多くのことが起こったので少し複雑な気持ちだけど、表彰台に上れたので良かった」とコメントしている。
WRC公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/user/wrc)では、そんなラッピの執念の走りを紹介する動画が公開されている。