2022年7月12日、新型シビックタイプRがホームページで先行公開され、7月21日にワールドプレミア。そして今年9月頃に販売開始とアナウンスされた。
シビックタイプRに搭載されるエンジンは、2015年に登場したFK2型シビックタイプRからは、2L、直列4気筒VTECターボとなっている。しかし、筆者にとってホンダエンジンと言えば、どこまでも回っていくような自然吸気エンジンに惹かれた。
実際、3代目のワンダーシビック(残念ながらSiではない)そしてH22A型2.2L、直列4気筒VTECエンジンを搭載した4代目プレリュードを所有した。もちろん速さには違いはあったが、アクセルを踏んだ時のタコメーターの動きと加速フィールはそれぞれ絶品だった。
そこで、ここでは新型シビックタイプR登場前夜に、乗っておきたいホンダが造った最強のエンジンを搭載した3モデルを紹介。同時に最新の中古車相場も紹介する。
文/萩原文博
写真/ホンダ
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■F20C型エンジン(S2000前期型搭載)
気持ちの良い伸びのある加速する超高回転型エンジンはショートストローク型という特徴がある。ショートストロークというのは、シリンダーの内径(ボア)よりピストンの往復運動する工程(ストローク)が短いものを指す。
ボアよりストロークが長いエンジンをロングストロークと呼び、一般的にトルクを出しやすいと言われている。一方、ショートストロークは、ストロークが短いほど回転数を高めやすくなるので、高回転型のスポーティなエンジンとなりやすい。
ただしボアの数字が大きくなることは、エンジンの全長が長くなることにつながり、エンジンのコンパクト化を考えるとショートストローク型が必ずしもよいとはいえない面もある。また、ボアとストロークの数字がまったく同じものは、スクエア型と呼ばれ、出力とトルクのバランスがよいエンジンとされている。
実際、2017年に登場した旧型のFK8型シビックタイプRに搭載されている K20型2L、直列4気筒VTECターボエンジンのボア×ストロークは86.0mm×85.9mmのスクエア型となっている。それでは、ホンダが生み出した超高回転型エンジンを3種類紹介しよう。
まず紹介するのは、最大許容回転数が9000回転という超高回転型のF20C型2L、直列4気筒DOHC VTECエンジン。搭載しているのは、1999年~2009年まで販売されたS2000。ただし、このF20C型エンジンを搭載しているのは、2005年10月までの前期型となる。
最高出力250ps/8300rpm、最大トルク22.2kgm/7500rpmを発生するF20C型2L、直列4気筒DOHC VTECエンジンは、ボア87mm×ストローク84mmのショートストローク型でリッター当たり125馬力を発生し、当時2L、直列4気筒自然吸気エンジンでは世界トップレベルのパフォーマンスだった。
このハイパフォーマンスを実現するため、フリクションを低減する進化したVTEC構造をはじめ、ショートストローク化、主運動系往復部重量の低減、低フリクションロス化、高剛性化などによる高回転対応と、充填効率の向上などにより達成。
レスポンスは、インテークマニホールド、吸気ポートのストレート化、容量の最適化などにより達成している。
また、触媒の急速な温度上昇を実現する新技術であるマルチポート排気2次エアシステムとメタルハニカム触媒を中心に、コールドスタート時からの効率的な排出ガス浄化技術を構築し達成。燃費性能は10・15モードで、12.0km/Lを実現していた。
現在、F20C型エンジンを搭載しているS2000の中古車は約194台流通していて、価格帯は約165万~約792万円と非常に幅広くなっている。修復歴ナシ、走行距離10万km以下で検索すると約300万円からとなっている。
■B16B型エンジン(初代シビックタイプR搭載)
続いて紹介するのは、最大許容回転数が8400回転、ボア81mm×ストローク77.4mmというショートストローク型のB16B型1.6L、直列4気筒DOHC VTECエンジンだ。搭載しているのは、初代シビックタイプRだ。
最高出力185ps/8200rpm、最大トルク16.3kgm/7500rpmを発生するB16B型1.6L、直列4気筒DOHC VTECエンジンは、当時リッター当たり116馬力という自然吸気エンジン世界最高峰のパワーを獲得している。
シビックSiRに搭載されているB16Aエンジンをベースに、吸排気系を徹底してチューニングすることで圧縮比を10.4から10.8にアップ。最大許容回転数を8200から8400回転へと高めている。
高回転化への技術としてバルブ系を強化。インテーク側のバルブスプリングを楕円断面の2重スプリングとし、バルブ軸径を一部細軸化し傘部をスリム化。軽量化しながら広開角・高リフトに対応する高強度を実現するとともに、高回転域でのバルブ追随性を高めている。
また、コンロッドを軽量化し、回転バランスに優れたフルバランサー8ウエイト仕様のクランクシャフトを採用することで高回転化に対応させている。
同時に、主に高回転域のトルクを厚くすることで、アクセル操作に追従した爽快な伸びを実現している。また、ピストン摺動部などのフリクションを低減させることで、全域にわたりレスポンスに優れた小気味良い加速フィールを獲得している。
1997年~2001年まで販売された初代シビックタイプRの中古車は約73台流通していて、平均価格は約265.2万円。中古車の価格帯は約169万~約498万円と新車時価格を超える中古車が数多く流通している。
■K20A型エンジン(3代目シビックタイプR搭載)
そして最後に取り上げるのは、2007年~2010年に販売された3代目のシビックタイプRだ。3代目シビックタイプRに搭載されているK20A型2L、直列4気筒DOHC i-VTECエンジンは、インテグラタイプRやアコードユーロRなどにも搭載されている。
しかし、3代目シビックタイプRに搭載されているK20A型エンジンは、FFタイプR史上最速を目指し、更なるパワーアップを追求したチューニングが施されている。
3代目シビックタイプRに搭載されているK20A型エンジンは、最大許容回転数が8400回転。最高出力225ps/8,000rpm、最大トルク215Nm/6,100rpmを発生。エンジンのボア86mm×ストローク86mmのスクエア型となっていて、リッター当たり112.5馬力を発生する。
ベースのK20A型エンジンに対して、スロットルボディの大型化をはじめ、インテークマニホールドの単管ショート化。さらにNSX同様にヘッドポートの表面を滑らかに仕上げる製法を採用し、あわせて吸排気効率を向上させた。
その結果、圧縮比は従来11.5だったが11.7までアップさせ燃焼効率を高めた。さらにエキゾーストマニホールドの集合部鋭角化、パワーステアリングを油圧式に変更しデュアルエキゾーストパイプの曲りを減らし排気抵抗を低減させるなど、目標を達成するために、様々な工夫が施された。
加えて、スロットルをDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)化し、アクセルペダルの踏み込み量に対するスロットル開度をきめ細かくセッティングし、優れたコントロール性を実現している。
現在、3代目シビックタイプRの中古車は約130台流通していて、歴代シビックタイプRの中で最も豊富だ。中古車の平均価格は約300万円。価格帯は約176万~1358万円となっている。
1000万円を超える中古車は300台限定で販売された無限のコンプリートカー、無限RRだ。また、流通台数は限られるがホンダの認定中古車があり、新車時価格を上回っているが、コンディション的にもオススメのモデルだ。
このほかにも、初代インテグラタイプRに搭載されていたB18C型やプレリュードなどに搭載されていたH22A型など魅力的なエンジンがある。これらのエンジンを味わうなら早めにアクションしたい。
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