バス運転手さんの仕事は安全な輸送がもっとも大きな責務。たったひとりで大きなバスを動かし、乗客の安全を確保する重責は相当なもの。けれど人間だから時には眠くなる時もあるはずだ。特に高速バスの場合は単調な高速道路での運転、深夜帯という本来人間が寝ている時間帯の運行などより一層運転手さんへの負荷は高くなる。
そこでバス運転手さんはラジオを聞いているのも見たことないし、ガムやコーヒーといった眠気覚ましグッズも見たことがない。最新のバス運転手さんの眠気対策に迫ります。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)(写真はすべてイメージです)
現役の高速バス運転士に聞いてみた
夜行高速バスと言っても運行形態はさまざまである。距離がそれほどなくワンマンで休息を複数回重ねながら時間をかけて走るケース。ワンマンで運転し、途中の拠点で運転士が交代して継走するケース。始発地から二名乗務で交代しながら運転し、終点まで走らせるケース等だ。
運転士が乗務中にやっていいことといけないことは事業者により異なるので一概には言えないが、今回は現役の高速バス運転士に聞いてみたのであくまでも一例としてご覧いただきたい。
コーヒーだめですか!
記者:--眠くならないですか?
運転士:「なりますよー。夜ですから。道路事情や交通量にもよりますけど、昼間より単調ですからね。もちろん乗務前はちゃんと管理していますから、居眠りや眠りこけることはないですけど、やはり単調な運転は眠くなる傾向にありますよね」
--そんな時はどうするのですか?まさかカーラジオとか?
「さすがにそれはできないですね。発車直後や到着前は交代運転士がいればまだ横にいますので左側を確認してもらったり、道路状況の確認をお互いにしたりしながら走れますけど、高速道路に入って一人になると自分との闘いですね」
--ではブラックコーヒーなんかを飲みながらですか?
「それはできる会社とできない会社がありますかね。基本的に運転操作以外の片手運転を厳重に禁止している会社では、ボトルのキャップを開けられませんから高速に入ればなにも飲めません」
--飲めないんですか?
「会社によってはだめですね。もちろん乗務員はマイタンブラーやペットボトルを持ち込んではいますけど、それは下道を走っている時の信号停車中とか高速上での休憩時間用だと聞いたことがあります。もっともドリンクホルダーがちゃんと付いている会社ならOKなんでしょうけど」
--では何かを食べるとか?
「そうですね。それも形状が限られますが、せいぜいあめ玉とかガムとかそれくらいでしょうか。以前にせんべいを食べてお客様から苦情が来たという話は聞いたことがありますが、さすがにそれはダメですよね、ボリボリうるさいですからお客様は寝れません(笑)」
--ちなみにワンマンとツーマンはどちらがいいのですか?
「それは人によると思います。私は二名乗務の方がいいです。何かがあったときに交代運転士がいると心理的にも安心ですから。あらかじめ分かっている時には計画を立てて運行しますからいいですけど、突然の気象状況悪化や事故渋滞、通行止めで迂回になるとワンマンでは大変です」
意外と多い制約
我々が普段乗用車を運転していて眠気覚ましにコーヒーを飲んだりパーキングエリアで仮眠を取ったりと、当たり前のようにしている行為が高速バスでは全部ではないにしろ、できないことも多く制約があることが分かった。
ダイヤ通りに運行してる有償便である限りは仕方のない面もあるのかもしれないが、運転士はそれら制約の中で乗客を運んでいることが分かっていただければ幸いである。
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