旅行大手JTBの調査によると、夏休み期間(7月15日~8月31日)に国内旅行を予定している人は推計で7000万人。前年比175%、コロナ前の2019年比で見ると96.7%だという。コロナ前への回復軌道に着実に乗っているようだ。
ANAホールディングス芝田浩二社長が7日に行われた記者会見で発言した内容も、JTBの調査結果を裏づけている。芝田社長は夏休みを迎える今月と来月の2カ月間の予約について、新型コロナの感染拡大前の3年前と比べて9割程度まで回復したと明らかにした。さらに来週末の海の日の3連休は、国内線の予約がコロナ前と同水準まで回復しているという。
観光地に客足が戻りつつある中、夏休みを前に観光への期待も高まるが、ここにきて新型コロナの感染者が再び急拡大している。8日の感染者は、全国で新たに5万107人が確認された。5万人を超えるのは4月14日以来2カ月半ぶりで、前週の金曜日からだと2倍以上だ。死者は29人、重症者は71人だった。また、東京都では新規感染者が8777人。前週の金曜日(3546人)の2.47倍に増加し、3日連続で8000人を超えた。こうした状況に、小池百合子知事も「第7波に入ったとも考えられる」と危機感を強めている。
専門家「第7波の影響は限定的」
こうした感染者の再々拡大は、旅行者の動向にどのような影響を及ぼすのか。「すでに予約済みの分に関しては、キャンセルが相次ぐようなことはないと思います」と話すのは、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏だ。
以前なら感染が拡大したら旅行を取り止める人が大多数でしたが、今回の第7波ではそうしたことはあまり起きないでしょう。なぜなら、これまでと違ってワクチン接種も進んでおり、重症化リスクは以前ほど高くないですから。旅行者の直近の動向にそれほど変化はないし、航空会社や旅行会社もそこまで悲観的ではありませんね。ただし、東京都の感染者が1万人を超えて、病床が逼迫するようなことがあれば、話は別ですが ……。いずれにせよ、第7波が旅行業界や観光客に及ぼす影響は限定的だと思います。
政府内では感染状況の悪化を踏まえ、7月前半の開始を目指してきた新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」の延期論が高まっている。岸田首相はそれまで参院選の街頭演説でほぼ毎回、近々展開すると全国旅行支援をアピールしてきたが、7日の演説では一切触れなかった。政府としては10日の参院選投開票後に開始の可否の判断する考えで、結論を先延ばしした格好だ。鳥海氏も今後の展望を次のように語る。
延期は確定的のようだと聞いています。開始時期はすぐには明確にしないと思いますが、9月を念頭に置いているようです。7~8月はすでに予約が埋まっているわけですから、9月開始であれば旅行業界にとっても許容範囲でしょう。ただ全国旅行支援よりも、私としては外国人の新規入国制限を早急にG7の国並みに見直すべきだと思います。何といっても今は円安なのだから、観光業界にとっては絶好の稼ぎ時です。このチャンスをみすみす逃す手はありません。
この2年間、人々はコロナ禍のせいで夏のバカンスを棒に振ってきた、もう我慢の限界だろう。政府や小池都知事が大騒ぎするほど、もはやコロナは恐れられていないのかもしれない。