東ソーは10日、2024年度(25年3月期)を最終年度とする中期経営計画を発表した。3カ年累計の投資額は前中計比25%増の2000億円で、このうち4割の800億円を高付加価値型のスペシャリティ事業に重点投資する。医薬品向け分離精製剤や歯科材料用ジルコニア粉末、半導体製造向けスパッタリングターゲット、樹脂難燃剤の能力増強などに資金を投じる。脱炭素投資も300億円を計画。中長期的な最重要課題とする脱炭素と成長の両立に向けて積極姿勢を強める。
同日都内で開いた中計説明会で、桒田守社長は「コモディティ事業・製品の展望が不透明ななか、スペシャリティ事業の強化が不可欠」と語り、同事業の能力増強と収益力拡大に取り組む姿勢を強調した。
24年度の売上高は21年度比26・2%増の1兆1600億円、営業利益は4・1%増の1440億円を目指す。海外市況変動の影響を大きく受ける石油化学、クロル・アルカリの両事業は原燃料価格が高騰、高止まりし、脱炭素対応への注力も迫られる。その中で、営業最高益更新の牽引役となるのが、スペシャリティ事業だ。
機能商品、機能性ウレタン、クロロプレンゴム(CR)などの機能性ポリマーで構成するスペシャリティ事業の24年度の営業利益を21年度比約30%増の750億円に引き上げ、全社の半分をスペシャリティ事業で稼ぐ収益構造を目指す。30年度にはスペシャリティ事業の営業利益を1000億円超に乗せる計画で、「全社の営業利益に占める比率を60%程度にまで高めたい」(桒田社長)
スペシャリティ事業で投じる800億円の設備投資として、バイオ医薬品のなどの精製に使う分精製剤設備(約160億円)、半導体薄膜成形材料用スパッタリングターゲット材設備(約100億円)は生産能力の増強をすでに決定している。
これに加え、歯科材料用途で世界トップシェアを握るジルコニア粉末、機能性ポリマーで東ソーが世界で唯一生産する特殊ゴムのクロロスルフォン化ポリエチレン、CRの新系列増設も最終年度もしくは次期中計の早期に稼働するかたちで増強を検討している。樹脂難燃剤も23年初めに稼働を予定する難燃剤原料の臭素の増強に併せた増強が検討課題とし、さらに半導体産業向け石英素材・製品も順次、増強していく考え。
22~24年度の3カ年で、同社の製造から排出される二酸化炭素(CO2)の削減投資に300億円を振り向ける。循環流動層ボイラの更新、ガスタービンの追加設置を計画する。「化学メーカーの使命」(桒田社長)とするCO2の化学品原料利用については、一酸化炭素(CO)プラントでのCO2原料化設備の導入に取り組む。
カ性ソーダ、塩化ビニル樹脂といったクロアリ製品の海外生産化についても改めて意欲をみせる。脱炭素対応が進むなかでのサプライチェーン安定化には、東南アジアやインドなど需要地への供給が日本からの輸出ではなく地産地消型に移行するとみる。
桒田社長は「クロアリ事業の収益基盤拡充、リスクヘッジには海外に市場立脚型の製造拠点を保有することも選択肢の一つ」として、海外直接投資の方向性を「年内にある程度決めたい」と、検討が大詰めであることを明かした。第1期分として26年度をめどに塩ビなど川下製品の生産設備、30年度には第2期分の電解、モノマーなど上流工程の生産設備という2段階での拠点整備になる見込みだ。
2030年度にスペシャリティ事業の営業利益を1000億円超に高める
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