スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」や日産「サクラ」/三菱「eKクロスEV」など、国内外から続々と量産BEVが登場している。しかし、政府や自治体からの補助金が出るとはいえ、(サクラとeKクロスEVはさておき)どれも500万円を超える高額車ばかり。
もちろんこれは、駆動用バッテリーが高額だから、ということなのだが、ガソリン車はもとより、ハイブリッド車とも価格帯が全く異なることから、「このクルマでこの金額は妥当なのか」ということが判断しにくくなっていると思う。BEVの価格が妥当かどうかを判断する、ひとつの方法をご紹介しよう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、HONDA、MAZDA、MITSUBISHI、SUBARU、HYUNDAI、BMW、BENZ、Audi、STELLANTIS、JAGUAR
駆動用バッテリーは10kWhあたりおよそ26万円
まずは、日本で購入できる主要メーカーの代表的なBEVの価格をざっと調べてみた。日本市場で、税込500万円以下で販売されているBEVは、最も安いのが日産サクラ/三菱eKクロスEV、続いて日産リーフ、プジョーe-208、フィアット500e、ホンダホンダe、マツダMX-30 EV model、ヒョンデIONIQ5、といった具合だ。メルセデスやBMWは安くとも700万円以上、高額モデルだと1000万円オーバーもある。だいたい500万円~600万円あたりが平均といったところだろう。価格が安ければ航続距離も短い。そうなる理由はもちろん、駆動用バッテリーの容量が原因だ。
テスラ「モデル3」 (596万円~、75kWh、565km)
メルセデスベンツ「EQA」(733万円~、66.5kWh、423km)
メルセデスベンツ「EQC」(960万円~、80kWh、400km)
BMW「iX」(1075万円~、76.6kWh、450km)
BMW「i4」(750万円~、83.9kWh、604km)
アウディ 「e-tron」 (935万円~、71kWh、335km)
アウディ 「e-tron GT quattro」 (1399万円~、93.4kWh、534km)
ヒョンデ「IONIQ5」 (479万円~、58kWh、498km)
フィアット「500e」(450万円~、42kWh、335km)
プジョー「e-208」(425万円~、50kWh、395km)
日産「アリア」(539万円~、66kWh、470km)
日産「リーフ」(370万円~、40kWh、322km)
日産「サクラ」(239~294万円、20kWh、180km)
三菱「eKクロスEV」(239~293万円、20kWh、180km)
トヨタ「bZ4X」(600万円~、71.4kWh、559km)
ホンダ「ホンダe」(451万円~、35.5kWh、259km)
スバル「ソルテラ」(594万円~、71.4kWh、559km)
マツダ「MX-30 EV model」(451万円~、35.5kWh、256km)
ジャガー「I-PACE」 (1050万円~、90kWh、438km)
そもそも、駆動用バッテリーは、いったいどの程度の価格なのだろうか。日産リーフの場合、40kWhの「X」(370万円)と、同一装備で62kWhの「X e+」(422万円)との価格差は52万円、62kWh用に変更されるパーツも含むが、「10kWhあたり26万円」というのがおおよその価格と考えてよいだろう。つまり62kWhだと156万円分、70kWhだと182万円分ものバッテリーを積んでいる、ということだ。
ということは、リーフ40kWh車からバッテリー分の価格を引く(純車両価格と呼ぶことにする)と、370万円-26×4=256万円。インバーター+モーター+配線などのBEV用装備と、ガソリンエンジン+ミッション+排気系といったICE用装備が同価格だと仮定すれば、バッテリー価格を引いたリーフの256万円という「純車両価格」は、おおよそ1.5リッタークラスのCセグハッチバックのミドルグレード程の価格となる。実際、リーフの内外装クオリティはCセグの平均点であり、結構「いい読み」だといえないだろうか。
サクラやアリアは妥当、ホンダeやモデル3は割高な印象
純車両価格を並べてみると、日産アリアは539-26×6.6=367万円、bZ4Xは600-26×7.14=414万円、日産サクラは239-26×2=187万円、ホンダホンダeは451-26×3.55=358万円、マツダMX-30 EV MODELは451-26×3.55=358万円、テスラモデル3は596-26×7.5=401万円、ヒョンデIONIQ5は479-26×5.8=328万円といった様子だ。こうしてみると、純車両価格のわりには出来が良いか、逆に純車両価格のわりにはチープか、考察できるようになる。
純車両価格が187万円のサクラは、価格の割にはダッシュボード周りやメーターなど、インテリアのクオリティが高い。また、350万円付近のアリアやIONIQ5は、インテリアのクオリティが高く価格相応の質感を持つCセグメント車として、十分にバランスが取れているように思う。対して358万円のホンダeやMX-30などは、Bセグメント車という車格に対しては割高に感じる。また401万円のテスラ モデル3は、価格の割には簡素なインテリアにも見える。
このように、バッテリー価格を引いた形で見ると、価格に見合うクルマになっているか、比べることができる。そのうえで、自身の予算や感性に合うクルマを選ぶ、というのがひとつの方法だ。
補助金がなければ買ってもらえないようでは、BEVの普及は難しい
価格に見合うクルマか、という視点も大切だが、バッテリーEVの加速パフォーマンスの高さや、OTAによるプログラムのアップデート、といった付加価値に惚れてBEVを選択するのも、ひとつの買い方だ。しかも、今ならば政府補助金や、地方自治体からの支援金が潤沢に出ているタイミングなので、絶好のチャンスともいえる。
だが、そもそも補助金がなければ買ってもらえない、というのでは、商品として妥当ではない価格設定になっている、ということでもある。しかも、一定期間(3~4年)は車両を保有し続けることが条件の補助金制度もあることから、気に入らなかったからといって即売却することはできない(期限前に売却する場合には一部補助金を返還する義務がある)。
今後のBEVには、コストパフォーマンスも含めて、既存のハイブリッドやプラグインハイブリッドなどと戦える価格水準になっていくことを期待したい。
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