<p>「小沢王国」事実上の崩壊 自民、岩手で30年ぶり議席獲得</p><p>「小沢王国」事実上の崩壊 自民、岩手で30年ぶり議席獲得 「小沢先生をピラミッドの頂点とする政治体制は完全に崩れた」。こう断言したのは、かつての小沢門下生で旧民主党政権下で復興相も務めた自民党の平野達男氏だ。</p><p>10日に投開票された参院選。岩手県政界に長く君臨してきた衆院議員の小沢一郎氏を盟主とする「小沢王国」が事実上崩壊した。「小沢先生をピラミッドの頂点とする政治体…</p><p>初当選し、贈られた花束を手に笑顔を見せる広瀬めぐみ氏(右から3人目)=10日夜、盛岡市のホテル 10日に投開票された参院選。岩手県政界に長く君臨してきた衆院議員の小沢一郎氏を盟主とする「小沢王国」が事実上崩壊した。「小沢先生をピラミッドの頂点とする政治体制は完全に崩れた」。こう断言したのは、かつての小沢門下生で旧民主党政権下で復興相も務めた自民党の平野達男氏だ。 岩手選挙区では、自民新人の広瀬めぐみ氏(56)が、再選を目指した立憲民主党現職の木戸口英司氏(58)との事実上の一騎打ちを制して初当選。自民は30年ぶりに議席を獲得した。 当確の報を受けた10日夜、広瀬氏は支持者らが待ち受ける盛岡市のホテルに姿を現した。盛大な拍手に迎えられ、平野選対本部長ら関係者らとがっちり握手。安倍晋三元首相の死去に伴い、一時は自粛も検討された万歳三唱が会場に響き渡った。 平野氏は、昨年10月の衆院選岩手3区で小沢氏を破った藤原崇氏に続き、今回の参院選でも広瀬氏の選対本部長を務めた。選挙区で初めて小沢氏を破った歴史的勝利を「山が動いたどころではない」と評した選挙のプロだ。 小沢王国の退潮は、開票結果が如実に物語っている。達増拓也知事のおひざ元の盛岡市で、木戸口氏は初当選した平成28年の参院選で約7万5千票を獲得。自民候補に2万3千票以上の大差をつけた。だが、今回は達増知事と二人三脚の選挙を展開しながらも5万8千票を割り込み、広瀬氏に逆に1500票の差をつけられた。 小沢氏の地盤である衆院岩手3区の一関市でも3万2千票を超えた得票が、今回は2万3千票を割り込んで、2万3583票を集めた広瀬氏に逆転を許した。木戸口氏が広瀬氏を上回ったのは出身地の花巻市と隣接する北上市、小沢氏の地盤の奥州市、平泉町だけ。市町村別では4勝29敗で求心力の低下は明らかだ。 「医療過疎、格差に悩む岩手を変えてほしい、それが県民の声だ」と高らかに宣言したのは自民県連会長を務める藤原氏だ。返す刀で「その声に一番に耳を傾けなければならないのは県政のトップ」と、来年の知事選に向け達増知事を牽制(けんせい)した。 広瀬氏を全面支援した県議会のいわて県民クラブ代表の飯沢匡氏は、来年の知事選をこう解説する。 「昨年の衆院選は藤原さんが風穴を開けてホップ、次は広瀬さんが参院選に勝利しステップ、来年(の知事選)は三段跳びの最終地点だ」 早くも水面下では知事選の候補者に女性や若手の名が取り沙汰されている。今回の参院選は衆院岩手3区の歴史的勝利の勢いに乗り、その1カ月後の昨年11月初め、自民がいち早く広瀬氏を擁立。常に先手を取り、有権者に分かりやすいよう木戸口氏とは対照的な女性候補を擁立したことが勝利に大きく貢献したとされる。 参院選の結果が来年の知事選に与える影響について、木戸口氏の新型コロナウイルス感染の疑いで在宅勤務となった達増知事は11日、文書で報道陣の質問にこう回答した。「来年の知事選までは1年以上あり、今現在、予想はできない」。自民が次にどんな手を打ってくるのか。県政界は知事選という次なる政治決戦に向け早くも動き出している。(石田征広) 特集・連載:</p>