ラインメタル(Rheinmetall)/メルセデスGクラス カラカル(Caracal)。これが、特殊部隊のための新しいメルセデスGクラスだ。メルセデスGクラスは、大きく、角張った、重い車だが悪路を走る姿は実にたくましい。でも、こんなオフローダーは見たことないだろう!?
パリで開催された世界最大の軍事見本市「ユーロサトリ(Eurosatory)」で、防衛企業ラインメタルは、戦闘服を着た「Gクラス」、「カラカル」を出展した。アフロ・アジアの中型ヤマネコの名前である「ユーロサトリ」がすべてを物語っている!高速で機動性があり、もちろん全輪駆動のため、どんな地形でも展開できる。
その応用分野として、空挺部隊や特殊作戦部隊の輸送がある。ラインメタル社、メルセデス・ベンツ社、ACS(Armoured Car Systems)社の協力のもと共同開発された特殊部隊のための軍用モデルだ。Gクラスは長年、特殊部隊の改造車として人気を博してきた。
武器とディーゼル6気筒で武装
ミッションのシナリオに応じて、「カラカル」は様々な装備を搭載することができるようになっている。例えば、軽量な上部構造には、オプションで弾道や地雷の脅威に対する保護部材を装備することができる。もちろん、「カラカル」は武器も備え持っている。リングマウントには、標準的な歩兵および対戦車兵器を搭載することができるようになっている。
6気筒のディーゼルエンジンは249馬力を発揮し、4,900kgの車重の車両に140km/hの最高速度をもたらす。非公式だが、こういう軍用車両には必ず予備の1台が用意されているという。
カラカル、2023年に大量生産へ
「Gクラス カラカル」は、モジュール設計と2種類のホイールベースにより、様々な役割の空中作戦を可能にする。単なる兵員輸送車から医療用車両、あるいは物流用車両として。コンパクトな車体設計により、「CH-53K King Stallion」または「CH-47F Chinook」輸送ヘリコプターのホールドに、最大2台の車両を空輸することができる。同様に、「カラカル」を外付けの荷物としても持ち運ぶことができる。
そして、それは手袋のようにフィットしている。というのも、6月初旬にドイツ連邦軍に約60機のチヌーク型重輸送ヘリコプターが新たに導入されることが明らかになったからである。「カラカル」と組み合わせることで、作戦区域内の機動性を大幅に向上させることができるという。
「カラカル」は2023年から大量生産が可能になる予定だ。ラインメタルは20年以上のフルライフサイクルサポートを提供する。
2014年の「ユーロサトリ」で、メルセデスは「6×6」の「Gクラス」をベースにした、「ロングレンジパトロールビークル(略称LRPV)」を公開した。当時は、北欧の特殊部隊向けだった。また、2016年には、「Gクラス」をベースとしたマルチロールビークルが続々と登場した。バケットシートでも当時はモジュール式。「カラカル」の前身モデルだ。
【ABJのコメント】
もともと、昔からゲレンデヴァーゲンはNATOの車両として採用されていた、というのは有名な話である。そんなゲレンデヴァーゲンがフルモデルチェンジを受けた(メーカー自身はフルモデルチェンジという言葉は一回も使っていないし、形式番号さえあえて変更していないが、内容やその成り立ちを見る限り、フルモデルチェンジと言ってよいと個人的には思う)ために、新しいゲレンデヴァーゲンは「こういう用途に」使用されるのかどうか、という疑問が関係者の中に生まれた・・・。その答えが今回レポートされたモデルである。
最初の「ハマー」がそうであったように、飾り気も何もなく、生き抜くための装備と攻撃するための武器が満載された姿は正直恐ろしい。武器は無駄がなく美しいという人もいるかもしれないが、個人的にはそんな感情を抱けない現状があるし、こんな車両が「大量生産可能」という今回の内容には、正直背筋が寒くなった。
本当はこんな車紹介したくもないし、絶対に街などでファッションの一部として乗る人が出てこないことを祈りたい。こんな車も装備も必要としない平和な世の中に、少しでも速やかになりますように。(KO)
Text: Robin Horning
加筆: 大林晃平
Photo: Rheinmetall