安倍晋三元首相の死去を受け、アメリカのブリンケン国務長官が11日朝、来日。岸田首相を表敬訪問し、安倍氏への弔意を示した。ブリンケン国務長官は10日までアジア各国を歴訪中で、急遽予定を変更し、日本に立ち寄った。
アメリカ、ドイツ、カナダ…各国が半旗掲揚
安倍氏の非業の死は、各国でも衝撃を持って伝えられ、各国政府はさまざまな方法で哀悼の意を示している。
アメリカは、バイデン大統領が10日の日没までの間、ホワイトハウスなどの連邦政府庁舎や在外公館、アメリカ国内外の米軍施設で、安倍氏への弔意を示すため半旗を掲揚するよう指示した。もちろん、在日アメリカ大使館も半旗を掲揚していた。さらに、ラーム・エマニュエル大使は、各国大使としていち早く遺体が安置されている安倍氏の私邸を弔問。自身のツイッターには、次のような哀悼の言葉を寄せていた。
本日家族とともに、安倍元首相の昭恵夫人と御母堂様に心からのお悔やみを申し上げました。この困難な時に、私たち家族と米国民はご遺族と共にあることもお伝えしました。元首相は、時代に先駆けた政治家でした。私たちに残された課題は、彼のビジョンを受け継ぎ実行していくことです。
I am stunned, outraged, and deeply saddened by the news that my friend Abe Shinzo, former Prime Minister of Japan, was shot and killed. He was a champion of the friendship between our people.
The United States stands with Japan in this moment of grief.
— President Biden (@POTUS) July 8, 2022
半旗を掲揚した国はアメリカだけではない。ドイツ、カナダ、メキシコといった国々の在日大使館で半旗が掲揚された。さらに、ゴルフの全英オープン(14日開幕)を前にした10日、試合が行われる“ゴルフの聖地” スコットランド・セントアンドリュースに設置された世界の国旗のうち、日本国旗が半旗になった。
ブラジルとインドは「喪に服す」
「喪に服す」と発表した国もある。ブラジルとインドだ。安倍氏の死去を受けて、ブラジルのボルソナロ大統領は8日、国として3日間の喪に服すことを発表した。発表にあたって、ボルソナロ大統領は、自身のツイッターに次のように綴っていた。
訃報に接し、憤りと悲しみを禁じ得ません。安倍晋三元首相は、ブラジルの偉大な友人であり、優れた指導者でありました。安倍元首相のご遺族と日本の同胞に連帯の意を表するとともに、この痛みに耐えている人々の魂を神が見守っていてくれることを祈ります。
– Como sinal de nosso respeito ao povo japonês, de reconhecimento pela amizade de Shinzo Abe com Brasil e de solidariedade diante de uma crueldade injustificável, decretei luto oficial em todo o país durante 3 dias. Que seu assassinato seja punido com rigor. Estamos com o Japão. pic.twitter.com/Daeu4Qn629
— Jair M. Bolsonaro (@jairbolsonaro) July 8, 2022
安倍氏と親しかったことでも知られるインドのモディ首相は、9日は全土で喪に服す日とすると表明。モディ首相は日本語でツイッターに連続投稿し、安倍氏の死を悼んでいた。
安倍元総理の死去により、日本と世界は偉大な先見者を失いました。そして、私は親愛なる友人を失った。私の友人である安倍さんへの賛辞を込めて…。
私は安倍氏と2007年に初めてお会いし、以来、たくさんの思い出深い交流がありました。その一つーつを大切にしていきたいと思っています。安倍氏は、印日関係に活力を与えてくれました。安倍元総理は新生インドが成長を加速させるとき、日本が手を携えていることを保証してくれました。
安倍元総理の死去により、日本と世界は偉大な先見者を失いました。そして、私は親愛なる友人を失った。
私の友人である安倍さんへの賛辞を込めて…。https://t.co/aNsJagLd6w
— Narendra Modi (@narendramodi) July 9, 2022
日の丸ライトアップにメッセージボード
安倍氏の衝撃的な死にショックを受けた大多数の日本人の心を、慰めてくれるような温かい対応をしてくれた国もある。
オーストラリアは、在日大使館の半旗掲揚とともに、安倍氏への弔意を示すために、オーストラリア各地で日の丸をあしらったライトアップを実施。国会議事堂やクリケット場「アデレード・オーバル」、観光名所のアデレード・タウンホール、世界的に有名なコンサートホール「シドニー・オペラハウス」などが赤と白でライトアップされた。
台湾の蔡英文総裁は9日、ツイッターに日本語で投稿し、、「7月11日は半旗を掲げるよう全ての政府機関に指示しました」と発表。それに先立つ9日、大使館に相当する日本台湾交流協会台北事務所に、有志によって「追悼 永遠の台湾の良き友人」と題された安倍氏へのメッセージボードが設置された。設置からわずか数日で書き込むスペースがなくなってしまったという。台湾の通信社・フォーカス台湾によると、「台湾のためにしてくれたことに感謝します」、「あなたの偉大で素晴らしい一生は、人々の記憶に残され続けるでしょう」といった言葉が書き込まれた。
安倍元首相を悼み、台湾に示してくださった友情に感謝するため、7月11日は半旗を掲げるよう全ての政府機関に指示しました。私たちは、安倍元首相が世界の自由と民主主義に果たされた偉大な功績を決して忘れません。
— 蔡英文 Tsai Ing-wen (@iingwen) July 9, 2022
そうした中、ネット上で疑問を呈されているのが、日本政府の対応だ。静岡大学教授で、内モンゴル出身の文化人類学者、歴史人類学者の楊海英氏はツイッターで次のように述べていた。
安倍晋三元首相という世界的なリーダーが暗殺された。官邸は速やかに国民に追悼などを指示し、半旗を掲げるべきではないか?外務省は在外公館に世界各国要人の弔問と追悼に対応するよう指示したか?こんな冷淡な扱い方でいいのか?
なお、日本政府は11日から半旗を掲揚している。定例記者会見で、記者から各国と比べ半旗掲揚が遅れた理由を聞かれた松野官房長官は「亡くなられたのが8日金曜日の夕刻であったことから、翌営業日である本日より掲揚した」と、回答した。ネット上では「さすがお役所仕事」「金融機関の口座振替と一緒ですか」「あまりにも酷い言い訳…」「営業日⁉」「土曜日に侵略されたら月曜まで何もしないのか」といった反発の声が多数寄せられていた。